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プロジェクトの目的は、なぜそのプロジェクトを実施するかであり、課題解決コンセプトによって実現できる目的である必要がある

第14回 コンセプトを考えながら、目的から目標を設定する(2018.04.06)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


☆これまでの記事

第1回 なぜ、ITプロジェクトは混乱するのか
第2回 プロジェクトにおけるコンセプトの位置づけ
第3回 なぜ、コンセプト力が必要なのか
第4回 プロジェクト課題の本質を見抜く
第5回 本質を見極める3つの方法
第6回 コンセプトを作る
第7回 概念の世界と形象の世界でコンセプトの作成を考える
第8回 概念の世界と形象の世界(1)
第9回 概念の世界と形象の世界(2)
第10回 概念の世界と形象の世界(3)
第11回 概念の世界と形象の世界(4)
第12回 概念の世界と形象の世界(5)
第13回 コンセプト作成を前提としたプロジェクトデザイン

第13回から続く)

◆プロジェクト憲章で目的を決める

さて、前回述べたようにプロジェクトリクエストからプロジェクト憲章に展開します。プロジェクト憲章に何を記載するかは、一般的にはあいまいです。

たとえば、以下の項目を記載します。
・プロジェクトの背景
・プロジェクトの目的
・予算
・マイルストーン
・主要な目標
・リスク
・プロジェクトマネジャー

必ず記載する内容はプロジェクトの目的とプロジェクトマネジャーの2つですので、プロジェクト課題解決のコンセプトから、目的に展開することがプロジェクト憲章を作ることだと考えてもよいでしょう。

プロジェクトの目的は、なぜ、そのプロジェクトを実施するかですが、課題解決コンセプトによって実現できる目的である必要があります。
たとえば、事例プロジェクトでは、

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ある通販会社で経営層から「ロイヤルカスタマー戦略のテコ入れによる収益向上┃
┃」という戦略が打ち出された。                      ┃
┃その実行の一環としてロイヤルカスタマーへの新たな働きかけをする、これまで┃
┃にはない仕組みの構築を課題としたプロジェクトを実施することになった。  ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

プロジェクト課題:ロイヤルカスタマー戦略のテコ入れによる収益向上
課題解決コンセプト:ロイヤルカスタマーへの新たな働きかけ

に対して、目的を

「ビジネスの仕組みへの参加によるロイヤルカスタマーのコミットメントの向上」

としています。これは、「ロイヤルカスタマーへの新しい働きかけ」をすれば、実現が期待できることですので、目的として適切であると考えることができます。

目的とコンセプトとの整合性はいわば、コンセプトに経営的な要求が入っていることから、経営的な視点からのプロジェクト目的の妥当性だといえますが、プロジェクト目的にはもう一つ考えるべき点があります。
それは、プロジェクトの作業を実施するチーム、それからプロジェクト作業を支援するステークホルダーに対する納得性です。

目的の納得性は、目的の抽象度を上げると容易に高めることができます。たとえば、改革するとか、誰もやっていないことをやるとか、勝つとかいった目的は納得をしてもらえますが、このような目的の設定は好ましくありません。何を目的としているのか、本当のところが分からないからです。

つまり、抽象度を上げ過ぎると曖昧になり、抽象度の選び方が問題になってきます。そこで、考えるべきなのが、コンセプトと同じく、具体概念であることです。たとえば、「変革する」と目的としたいと考えたら、「カスタマーの行動を参加型に変革する」といった具体的概念といえる抽象度であることが望ましいわけです。

事例プロジェクトでは、「ビジネスの仕組みへの参加によるロイヤルカスタマーのコミットメントの向上」としています。概念ですが、具体的な概念だとお分かりいただけると思います。


◆コンセプトを考えながら、目的から目標を設定する

このようにまず、目的を決定したら、次に目的を実現するためには何ができればよいかを設定します。いわゆる目標の設定です。事例プロジェクトでは、以下のように、

┌─────────┬──────────────────────────┐
│プロジェクト課題 │ロイヤルカスタマー戦略のテコ入れによる収益向上   │
├─────────┼──────────────────────────┤
│課題解決コンセプト│ロイヤルカスタマーへの新たな働きかけ        │
├─────────┼──────────────────────────┤
│目的       │ビジネスの仕組みへの参加による           │
│         │      ロイヤルカスタマーのコミットメントの向上│
├─────────┼──────────────────────────┤
│目標1      │アフェリエイトへの参加率10%のシステム化     │
│目標2      │配送への参加率1%のシステム化           │
├─────────┼──────────────────────────┤
│計画       │上記目標の達成計画(プロジェクト計画)       │
└─────────┴──────────────────────────┘

2つの目標を設定しています。

目的と目標の関係は基本的に1:Nです。一つの目的を100%実現する目標というのはなかなか存在しないものです。したがって、一つの目的をいくつかの目標を達成することによって実現するというように考え、そのような発想で何を目標にすればよいかを考えるわけです。

ここでもやはり、決定にはコンセプトが影響します。「ビジネスの仕組みへの参加によるロイヤルカスタマーのコミットメントの向上」という目的に対して、目的との整合性でいえば、例えば「購入の際の割引5%」という目標も考えられるわけですが、これは入れていません。それはコンセプトの中に「ロイヤルカスタマーへの」、「新しい」という言葉があるからです。つまり、このコンセプトからすれば、購入の際というのはあまり適切ではない目標と考えたわけです。

(続く)

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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