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第12回 概念の世界と形象の世界(5)(2018.03.05)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


☆これまでの記事

第1回 なぜ、ITプロジェクトは混乱するのか
第2回 プロジェクトにおけるコンセプトの位置づけ
第3回 なぜ、コンセプト力が必要なのか
第4回 プロジェクト課題の本質を見抜く
第5回 本質を見極める3つの方法
第6回 コンセプトを作る
第7回 概念の世界と形象の世界でコンセプトの作成を考える
第8回 概念の世界と形象の世界(1)
第9回 概念の世界と形象の世界(2)
第10回 概念の世界と形象の世界(3)
第11回 概念の世界と形象の世界(4)

第11回から続く)

◆主観と客観

さて、後半の「言語化」、「共感獲得」では、大局的/分析的、抽象的/具象的の2つの軸とともに、主観的/客観的が重要な役割を果たします。この軸は第3回に説明しましたように、

自身の価値感に基づき思考を行い、その結果について第三者的な視点から妥当性を検証・調整する。この繰り返しにより、誰もが共感できる結論を得ることができる

という軸です。

一般的にビジネスや仕事の中に主観を持ち込むことはよいことだとされません。この是非については後で議論しますが、その前に主観的である、客観的であるとはどういうことかを明確にしておきます。

大辞泉では、客観的であるとは

特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま

とあります。客観的の逆は主観的ですが、主観的であるとは

自分ひとりのものの見方・感じ方によっているさま

とあります。つまり、客観的であるというのは自分や他人の特定の立場や価値観にとらわれないで、物事を見たり、考えたりするということで、逆に主観的に考えるというのは自分の立場から物事を見たり考えたりするということになります。

もう少し、考えてみましょう。特定の立場にとらわれないというのはどういうことでしょうか?どんな立場から考えても、そのような立場の人はいるわけですので、これは非常に難しいことです。仮にいろいろな立場から考えても、最終的に結論を出すにはいずれかの立場を取る必要があります。その際に、誰もが納得する結論であれば、立場にとらわれていないと言えるかもしれませんが、そのようなことはなかなかありませんし、考えや見方が客観的かどうかをどのように判断すればいいのでしょうか。


◆間主観性という概念

ここで面白い概念があります。それは「間主観性」という概念です。大辞泉によると

「複数の主観の間で共通に成り立つこと。事物などの客観性を基礎づけるものとされる。」

と説明されています。

この説明では少し十分でないかもしれませんので、もう少し補足説明しておきます。

上に述べたように客観的であるというのは、当事者も非当事者も含めて共通の認識であることですが、実際には非当事者において共通認識かどうかというのは理論などでは分かりにくいものです。そこで、当事者の間だけでは共通認識であるという概念が生まれ、間主観性と呼ばれています。

主観性と客観性の議論に間主観性という概念を持ち込みますとと、まず考えられるのは、我々がビジネスの中で使う客観的であるべきだといっているのは、間主観的であるべきだということに他ならないというです。

たとえば、ロイヤルカスタマーが「もう少し、お得感のあるサービスをしてほしい」という要望をしていたとします。これは事実です。このときに、10人に1人のロイヤルカスタマーが同じ要望をしていたときに、これをどう解釈するのかは微妙なところがあります。問題があるとも言えますし、ないとも言えます。そこで、プロジェクトチームで議論をするわけですが、プロジェクトチームで問題があるという話になればそれは客観性があると言えます。これが間主観性です。

この場合、主観と客観の行き来は、たとえば、メンバーの誰かが「ロイヤルカスタマー向けのサービスレベルが不十分だ」と考えていることに対して、それが共通認識になることです。

このようにして、アイデアをコンセプトとして言語化するには、主観的から始めると言ってよいでしょう。たとえば、メンバーのアイデアから

「ロイヤルティ制度の導入」

というコンセプトが出てきたとします。これを言語化するには、チームとして客観化する(間主観化する)ことが必要になります。そのためには、抽象/具象の軸を使って具体的な内容を考えたりして、その内容を考えて言葉として、例えば、「あらゆるレベルのロイヤルカスタマーが満足するロイヤルティ制度の導入」といった具合に固めていくことが必要なのです。

また、コンセプト作成最後のプロセスで共感を得るためにも、間主観性は不可欠であることはいうまでもありません。


◆主観的/客観的の軸の特徴

このように主観的にものごとを考えようとすると主観と客観を自由に行き来しながら、考えて行く必要があります。ここで、それぞれの思考にどのような特徴があるかを整理してみましょう。

まずは価値観で、主観的であることは自分の価値観で考えること、客観的であることは常識のような共通的な価値観で考えることです。

考えるにあたっては、主観的であるとは自分自身の価値に基づく視点や前提が含まれてきます。これに対して、客観的である場合は第三者の視点・前提で考えます。具体的な方法としてはいろいろな人の意見を聞くといいでしょう。

主観的だからといってロジックがないわけではありません。主観にも客観にもロジックがあります。しかし、主観のロジックは自分だけの前提が入ったロジックになっています。客観のロジックは誰もが納得する(普遍性のある)前提で組み立てられます。
以上をまとめると以下のようになります。

┌─────────────┬──────────────┐
│主観的に考える      │客観的に考える       │
├─────────────┼──────────────┤
│自分の価値観で考える   │共通的な価値観で考える   │
│自分の視点(前提)で考える│第三者の視点(前提)で考える│
│誰もが納得するわけではない│誰もが納得する       │
│ロジックは存在するが、  │論理的である        │
│  自分の前提が含まれる │              │
│理論に矛盾しない     │理論そのものである     │
└─────────────┴──────────────┘

◆5軸を統合する

以上が5軸を使ったコンセプトの作り方の概要ですが、必ずしも、概念と形象の世界を軸ごとに行き来しているわけではなく、コンセプト作成全体としてみればどの軸についても行き来しているということです。

コンセプチュアル思考は、各軸の行き来で行うというよりも、5軸全体で行き来していると考える方が自然です。つまり、5軸の統合して行っていると考える方が自然なのです。

5軸をどのように使うか、つまり、コンセプトをどの軸上に持ってくるかはケースバイケースですが、多くの場合、抽象と具象に持ってくるとすんなりいくケースが多いようです。

◆おわりに

第10回〜第12回では、コンセプト作成のステップの中で、価値創造、言語化、共感において重要になるコンセプチュアル思考の思考軸である直観/論理、長期/短期、主観/客観の軸について説明し、最後に5軸の統合について簡単にふれました。

次回から、コンセプトの応用として、コンセプト作成をプロジェクトデザインに活かす方法について考えてみたいと思います。
(続く)

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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