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第43回 トレードオフマトリクス(2013/06/11)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木 道代


◆トレードオフマトリクス

プロジェクト品質の家について、これまで、1)〜6)の部分に記入すべき項目を解説してきました。

プロジェクト品質の家
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)

プロジェクト品質の家は、立上げ時に顧客の期待を把握し、その期待を実現するためのプロジェクトの方針や品質基準を決めるツールです。

と、同様に、プロジェクトの立上げ時に顧客の期待を把握するもう1つ(他にもツールはありますが)のツールであるトレードオフマトリクスをご紹介します。

ウィキペディアでは、
「トレードオフ(英: Trade-off)とは、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことである。トレードオフのある状況では具体的な選択肢の長所と短所をすべて考慮したうえで決定を行うことが求められる。」
とあります。

また、プロジェクトマネジメントは、QCDS、品質(Q:Quality)、コスト(C:Cost)、スケジュール(D:Delivery、納期という意味です)、スコープ(S:Scope)のバランスをとる、とも良く言われています。

品質を重視すれば、コストが高くなる。納期を短縮するためには、特急料金を積むとコストオーバーになると一般的には考えられています。

それでは、全部ほどほどにして、全部がうまく収まるようにすることがマネジメントなのでしょうか。それとも、全部最大、が求められているのでしょうか?

それらのトレードオフを立上げ時に、一度ちゃんとしておきましょうというのがトレードオフマトリクスです。

そもそも、プロジェクトの立上げのアウトプットは、プロジェクト憲章です。
立上げでは、プロジェクトを実行するのか、中止にするのか、実行するのであれば、どのような方針でプロジェクトを実行するのかを決めます。

誰が決めるのか、それは、プロジェクト憲章を発行するプロジェクトスポンサーなのですが、それらの内容を決めるためには、顧客の期待を把握し、そしてその期待を実現するためのプロジェクトの方針なわけです。

そして、決める手順は、プロジェクト品質の家を使いますが、トレードオフマトリクスもステークホルダー(顧客)の意向をチームメンバーで確認し、共有するためのツールです。

マトリクスですので、縦軸には、顧客が重視する観点、例えば、QCDSや顧客の会社の利益、社会還元、エコなどが縦に並び、その中で、顧客はどれを重視するのか、維持するのか、犠牲でも大丈夫なのかを予測し、記入していきます。

通常、QCDSすべて重要だ!と顧客はよく言いますが、

「今は、カットオーバーし、そのプロジェクトで授受できる価値を実現することが最優先なので、スケジュールが最も重視であり、そのためなら、プロジェクトコストが増えても良いが、会社の利益は犠牲にすることはできない」

など、と考えているはずです。

それらを分析し、トレードオフマトリクスに記入し、チームメンバーで共有し、プロジェクト計画の作成やプロジェクト実行時の問題解決・意思決定の判断材料とすることができるツールであり、ぜひ作成していただきたいフォーマットです。


例             I 重要 I 維持 I 犠牲 
−−−−−−−−−−−−−−I−−−−I−−−−I−−−−
品質(Q:Quality)      I    I ○  I
コスト(C:Cost)     I    I    I ○
スケジュール(D:Delivery)I ○  I    I
スコープ(S:Scope)   I    I ○  I
会社の利益         I    I ○  I
社会への還元        I ○  I    I
エコ            I    I    I ○
・・・

他に顧客が判断材料とする観点があれば、縦軸に追加します。

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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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