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第28話:ドラッカースタイル・イノベーション編(2010/11/26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ドラッカーの思考体系

今回は、ドラッカー思考の体系をプロジェクトマネジメントに適用する際の7つの視点

1.成果を上げる(成果を大きくするドラッカー思考)
2.価値をもたらす計画をたてる(戦略と計画に関するドラッカー思考)
3.顧客を中心に考える(顧客に関するドラッカー思考)
4.チームを動かす(チームのパフォーマンスを高めるドラッカー思考)
5.マネジメントを極める(プロジェクト品質を向上させるドラッカー思考)
6.イノベーションを実現する(技術を有効に活用するためのドラッカー思考)
7.プロフェッショナルになる(自己成長のためのドラッカー思考)

のうち、これまで1番目から5番目について説明してきた。今回6番目のイノベーションについてである。

◆イノベーションはあらゆる局面で行われる

長い間、日本企業はイノベーションに対して崇高なイメージを持っていたが、この2〜3年、急速に認識が変わってきた。そのきっかけになったのがドラッカーの「現代の経営」にある

イノベーションは事業のあらゆる局面で行われる。設計、製品、マーケティングのイノベーションがある。価格や顧客サービスのイノベーションがある。マネジメントの組織や手法のイノベーションがある(現代の経営)

という指摘である。

日本人がイノベーションという言葉に対して特別なイメージを持っていたのは、おそらく改善との対比である。多くの人がイノベーションと改善は違うと主張してきた。日本語でいえば、イノベーションは「革新」、つまり、新しくすることであり、改善は善くすることである。

この背景にあるのが、連続性である。イノベーションとは不連続な変化であり、改善は連続な変化であるという思い込みがあった。


◆イノベーションとは知覚的な認識でもある

イノベーションの一般的な定義は、不連続な変化である。確かに技術的な改善であればその変化は一歩一歩、積み上げていくものであるが、逆に技術以外の変化はそもそも不連続なものであることが多い。ちょっとした変化でがらりと変わる。敢えて思い込みと書いたのは、そのような意味である。

例えば、今までどこの企業も100円以上で販売していた商品カテゴリーに、ある会社が99円の新商品を投入した。客観的には1円の差であっても、価格のイノベーションと捉えられることが少なくない。スポーツの世界に「○○の壁」という表現がある。100m10秒の壁とかだ(著者が小学校のときの話だが)。壁を破ることはイノベーションである。

つまり、技術は客観性があるのでそうはなりにくいが、技術以外の客観性は市場や顧客の心理的な印象による部分が大きい。だから、99円と100円では全然違うのだ。それゆえに、ドラッカーは

イノベーションとは論理的な分析であるとともに、知覚的な認識である。イノベーションを行うにあたっては、外に出、見、問い、聞かなければならない(イノベーションと起業家精神)

と言っている。


◆イノベーションのスタートは市場の認識を知ること

つまり、机上で論理的に考えていただけでは、顧客がどのように感じるのかを捉えきれない可能性が高いのだ。これは、技術を扱うものにとって極めて示唆的である。価格の例に示したように、ちょっとした技術の工夫が実は顧客においては極めて大きな価値を生み出すことがある。情報システムで画面の構成方法を変えることによって、13秒かかっていた操作を12秒にした。技術的には大した工夫ではない。その効果も10%にも満たないものである。ところが、これが実用化の壁を破ることになったり、競争に極めて有利になったりする。

つまり、「イノベーションは市場に焦点を合わせろ」だ。

イノベーションは市場に焦点を合わせなくてはならない。製品に焦点を合わせたイノベーションは奇抜な技術を生むかもしれないが、成果は失望すべきものとなる(マネジメント)
ということなのだ。今、多くの企業でプロダクトマネジャーが頭を悩ませている商品の複雑さというのは単純にこれだけの問題である。市場や顧客が技術や機能を評価するという錯覚をしているだけの問題である。


◆イノベーションはシンプルに!

しかしながらこの問題はプロダクトマネジャーが思っている以上に重要な問題である。このように、市場に焦点を合わせ、顧客の知覚に訴えることは、シンプルでなければ実現しないからだ。ドラッカーは次のように指摘している。

イノベーションは焦点を絞り、シンプルに行わなくてはならない(イノベーションと企業家精神)

結局、これに尽きるのだろう。ここに、改善とイノベーションの本質的な違いがあるのかもしれない。改善は何事もシステムであることを直感的に理解している日本人の知恵だ。見ている問題は些細な問題でも、その問題を解決することがシステムに漸進的に変わってくることを知っている。そう考えると、レバレッジを考えた改善こそが、イノベーションであると言えるのだろう。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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