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第27話:ドラッカースタイル・プロジェクト品質編(2010/11/15)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ドラッカーの思考体系

今回は、ドラッカー思考の体系をプロジェクトマネジメントに適用する際の7つの視点

1.成果を上げる(成果を大きくするドラッカー思考)
2.価値をもたらす計画をたてる(戦略と計画に関するドラッカー思考)
3.顧客を中心に考える(顧客に関するドラッカー思考)
4.チームを動かす(チームのパフォーマンスを高めるドラッカー思考)
5.マネジメントを極める(プロジェクト品質を向上させるドラッカー思考)
6.イノベーションを実現する(技術を有効に活用するためのドラッカー思考)
7.プロフェッショナルになる(自己成長のためのドラッカー思考)

のうち、これまで1番目から4番目について説明してきた。今回5番目のプロジェクト品質についてである。


◆ドラッカーのマネジメント思考

品質管理も難しいが、プロジェクト品質を実現するのはもっと難しい。マネジメントの結果がプロジェクト品質だからだ。

ドラッカーの思考は、すべてマネジメントに通じるものである。その意味で、マネジメントについて何を中心に考えていくかは難しく、実際にドラッカーの信奉者においても意見の分かれるところだと思う。よく知られている思考だけをピックアップしてみても、

・強みを発揮させ、弱みを無意味にする
・目的を問うことが生産性を高める
・考える組織を作る
・成果に焦点を合わせる
・・・

といった考え方が並ぶ。まさに、「マネジメントに正解はない」というのを実感されるだけ、いろいろな切り口があることが分かる。


◆現場ありきのマネジメント思考

その中から、現場主義を取るわれわれとしては、

実行する人に責任をもたせているか

という思考を中心においている。ドラッカーのもっとも重要な主張が知識労働への変化である限り、ここが中心であるのが自然だと思える。

ドラッカーは以下のように語っている。

実際に仕事をしている人間こそが、何が生産性を高める役に立ち、何が邪魔になるのかを知っている。従って、知識をもち、技能を持つ者本人に責任をもたせることである(乱気流自体の経営)

プロジェクト品質マネジメントのスタートはここにある。プロジェクトマネジメントは、これを如何に実現していくかであり、その手段が品質マネジメントであると言ってもよいだろう。


◆実行する人に責任を持たせるために何が必要か

では、ドラッカーはこの実現のために何が必要だと言っているのか。そこに、上に述べたいくつかの思考が位置づけられる。まず、

目的を問うことが生産性を高める

という考え方だ。つまり、責任を持たせる人にとって、目的が明確になるようにすることである。これについては、未来企業で

知識労働者の生産性を向上させるためにまず問うべきは、何が目的か、何を実現しようとしているか、なぜそれを行うかである(未来企業)

という指摘をしている。目的が分からないままで責任をもたせることを俗に「丸投げ」という。目的が分からないと責任の果たしようがない。

逆にいえば、目的は貢献動機につながる。つまり、目的が明確にであることによって成果が明確になり、成果に焦点を合わせて仕事をすることができる。ツールに焦点を合わせても責任は果たせない。


◆マネジメントは人にかかわるもの

プロジェクトマネジメントはツールであるが、ツールについてドラッカーは極めて興味深い指摘をしている。

学んだり教えたりするうえでは、道具に焦点を合わせなければならない。だが道具を使う上では、成果、任務、仕事に焦点を合わせなくてはならない(ポスト資本主義)

このような態度によって始めて明確にされた目的を実現できるようになる。と同時に、目的を実現するために重要なことはある。それは、メンバーのマネジメントであり、そこには、

マネジメントとは、人にかかわるものである。その機能は人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである(新しい現実)

という著名な指摘がある。よく強みや弱みが絶対的なものだと考える人がいるが、決して絶対的なものではない。一人の人間の性質は目的によって強みになったり、弱みになったりする。例えば、非常に緻密に仕事をするという性質は、品質を重視する仕事では強みになるが、スピードを重視する仕事では弱みになる。

強みを活かして、弱みを意味のないものにするというマネジメントの仕事は適材適所という意味もあろうが、プロジェクトのような人材不足の状況ではあまり現実的ではない。むしろ、人材に合わせて、「強みを発揮させ、弱みを無意味なものにする」プロジェクト定義を行うことの方が重要である。

結局のところ、実行する人に責任をもたせるには、その人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることが必要なのだ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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