第10話:プロジェクトマネジャーとしてのコンセプチュアルスキルを高めるには(2014.10.21)
◆連載の振返り
今回で最終回なので、これまでの振返りをしておく。第1回でコンセプチュアルスキルとは何かという説明をし、第2回以降、プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにする7つのポイントを述べた。以下の7つである。
(1)PMBOK(R)を実行するにはコンセプチュアルスキルが不可欠
(2)プロジェクトで起こりそうな問題を予測する
(3)実行できる計画を作る
(4)プロマネやエンジニアとしての過去の経験を活かす
(5)トラブル発生時の厳しい制約の中で、創造性に富んだリカバリーのアイデアを出す
(6)コミュニケーションを向上させる
(7)プロジェクトのインパクトを大きくする
そして、前回はプロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにするにはプロジェクトの本質を見抜き、本質を実現する方法を考え、プロジェクトマネジメントの方針を決めることが重要であることを述べた。プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにするにはプロジェクトの本質を見極めることに尽きるといってもよい。
こちらでもバックナンバーが読めるので、忘れている人はぜひ、もう一度、お読みいただきたい。
「プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにしよう!」バックナンバー
◆コンセプチュアルスキルは精神論ではない
さて、このような流れを踏まえ、最終回にお話ししたいのは、コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントを身に着けるにはどのようなスキルを身につけるかということだ。第1回にコンセプチュアルスキルの説明をしたが、もちろん、広くいえば、コンセプチュアルスキルを身につければいいわけだが、今のところ、この議論は精神論に近い。
第1回で触れたが、コンセプチュアルスキル(概念化スキル)は50年以上前から必要だといわれているにも関わらず、未だに、スキルレベルが上がっているとは言い難い状況にある。リーダーシップが20年前くらいから取り組まれて、大きくレベルが上がっているとの対照的である。
もちろん、何もしていないわけではない。階層別研修を行っている多くの企業ではたいてい監督職の研修にコンセプチュアルスキルの研修は何か入っている。しかし、成果が出ているとはいいがたい。コンセプチュアルスキルの低いプロジェクトマネジャーやマネジャーがたくさんいるのが現状である。
そこで、PMstyleではこのスキルをもう少し具体化した。これからのお話をするのはその大枠である。
◆コンセプチュアルスキルとスキルによる行動変容
まず、コンセプチュアルスキルの肝とは何だろうか。前回、説明した「本質」を見極めることはカッツの定義から明らかだが、これも含めて以下の3つだと考えている。
(1)本質を見極める力
(2)洞察力
(3)応用力
の3つである。洞察の入り口は観察であり、出口は行動である。この3つにより
観察から本質を洞察により本質を見極め、本質を応用して、行動する
という一連の行動をすることができる。リーダーやプロジェクトマネジャーの行動でいえば、
構想 → 創造的になる、想いが反映される
計画 → 実行しやすくなる、生産性が高くなる
問題解決 → 創造的になる、
意思決定 → 速くなる、適切になる
対人行動 → 共感を得る
といった変化が起こることが期待できる。
◆コンセプチュアルシンキングが基本
このような行動をすることを可能にするのが、第1回で少し触れたコンセプチュアルな思考である。PMstyleではコンセプチュアルシンキングと呼び、以下の5つの軸を中心にした思考である。
(1)抽象的/具象的
(2)主観的/客観的
(3)直観的/論理的
(4)大局的/分析的
(5)長期的/短期的
イメージは大体お分かりいただけると思うが、詳しく知りたい方はこちらのページを見てほしい。コンセプチュアルシンキングの診断ページになるので、実際にやってみてほしい。
PMstyleコンセプチュアルスキル診断
これらの思考法が身につけば、本質を見極めることができ、プロジェクトマネジメントを構成する行動(構想、計画、問題解決、意思決定、対人行動)がコンセプチュアルに変わり、プロジェクトマネジメントそのものが変わる。
◆仕事の質はコンセプチュアルスキルで変わる
最後に一つ強調しておきたいのは、プロジェクトマネジメント自体がそうだが、マネジメントというのはそれなりにできるということだ。たとえば、プロジェクト計画にしろ、コミュニケーションにしろ、0か1ではない。問題は質である。
業務の質は製品の品質に現れてくる。しかし、マネジメントの質は表に出にくい。にもかかわらず、製品やサービスの品質に大きな影響を与えるし、また、企業の成長や人材の成長にも大きな影響がある。
この質を決めるのがコンセプチュアルスキルだということを認識しておく必要がある。
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2.プロジェクトへの要求の本質を反映したコンセプトを創る
3.コンセプトを実現する目的と目標の決定
4.本質的な目標を優先する計画
5.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
6.トラブルの本質を見極め、対応する
7.経験を活かしてプロジェクトを成功させる
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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