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ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルは別ものだが、コンセプチュアルスキルをうまく活用することによって、コミュニケーションの質をワンランク上げることができる。コミュニケーションの質が上がればプロジェクトの成功率は上がる

第7話:コンセプチュアルスキルでコミュニケーションの質を上げる(2014.09.05)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆コミュニケーションの質が上がればプロジェクトの成功率は上がる


今回は6番目のテーマである

(6)コミュニケーションを向上させる

について考えてみたい。コミュニケーションはいうまでもなくプロジェクトマネジメントの生命線であり、コミュニケーションが機能しなくなればプロジェクトは間違いなく崩壊する。

逆にプロジェクトマネジャーの仕事の80%以上はコミュニケーションだといわれているように、コミュニケーションの質が上がればプロジェクトの成功の確率は高まる。コミュニケーションの質を上げるために、コンセプチュアルスキルを役立てることが今回のテーマである。

◆コンセプチュアルスキルとコミュニケーション


第1回で紹介したロバーツ・カッツのスキルモデルでは、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルは別ものであるが、明らかに相関はある。たとえば、メンバーに対して自分の考えを伝えたいときに、

・どれだけ具体的な説明をするか
・どれだけ相手の立場にたってコミュニケーションを取っていくか
・どれだけ多様な選択肢を示すことができるか
・どれだけメンバー間のコミュニケーションを円滑にできるか

といった問題はすべてコンセプチュアルスキルによって大きくパフォーマンスが変わる問題である。


◆説明が変わる


説明についていえば、説明とはもともと抽象的なものを具体的に表現することである。この際に問題になるのが、メンバーのレベルである。たとえば、顧客への対応を改善する必要が生じたとしよう。出来のいいメンバーであれば「顧客への対応を改善しよう」という指示で十分だ。ところが出来が悪いメンバーになると、「顧客が問合せ事項に対する回答が遅いと言っているので半日以内に必ず、何らかの回答をしよう」、・・・などと具体的に起こっている問題に対して、どうするかを指示しなくてはならない。

難しいのは普通、いろいろなレベルのメンバーが混ざっていることだ。混ざっていると、抽象的な指示ではできない人がいる一方で、具体的に指示すると煩わしいと思う人がいる。もっと困る問題は、あまり具体的なことばかり言っていると指示待ちになるという弊害も生まれる。そこで、どのレベルに照準を当てて説明し、それ以下の人とどういうコミュニケーションを取るかを考える必要がある。これは5つの軸でいえば、抽象と具象の行き来を繰り返すことになる。

コミュニケーションを取る際に重要なことは相手がどう感じているかを見極めることである。自分の説明をきちんと理解できているか、意見があればきちんと言えているかなどを相手の立場にたって考える必要がある。そして、相手が理解でき、それの対する自分の意見もいえるようにコミュニケーションをとっていく。これは、5つの軸でいえば、客観と主観の行き来を繰り返すことになる。


◆交渉が変わる


コミュニケーションの中には交渉をするような場面もある。このような場合にもコンセプチュアルスキルは重要な役割を果たす。プロジェクトマネジャーとして交渉するときにコンフリクトに行きあたることが少なくない。たとえば、顧客が仕様変更を要求しているが、時間も予算もないといったケースだ。

このような場合には仕様変更の目的をはっきりし、その目的に対して、仕様変更以外の方法を提案する必要がある。たとえば、システム更新のときに従来の操作方法も準備してほしいという要望があったとしよう。そこで、その目的について考える(あるいは聞き出す)。

仮にそれが、更新することによるパフォーマンスの低下を危惧するものだったとすると、パフォーマンスの低下を起こさないために、たとえば、操作をシンプルするとか、更新前にトレーニングを工夫するといったことを考える。これは5つの軸でいえば、抽象と具象の行き来を繰り返すことになる。

いわゆるWinWinの関係を見つけることはコンセプチュアルスキルの中でも基本中の基本である。


◆メンバー間のコミュニケーションを円滑にする


コミュニケーションの円滑化についても基本的には交渉と同じような感じになる。たとえば、仕様でもめていたら、お互いにその仕様にしたい理由を明確にし、そのレベルで調整できるようにファシリテートする。

たとえば、Xという機能をつけるかどうかでAさんとBさんが揉めていたとしよう。Aさんがつけないといっているのは複雑にしたくないからで、Bさんがつけるといっているのはあった方が便利だと思っているからだ。この結論はでないので、たいてい、市場とか、顧客の要求がどうだということで決着しようとする。

このようなときにプロジェクトマネジャーは複雑にしないで、Xという機能によって実現される効果と同等な効果を実現する方法はないかを議論させるように仕向けていく。このようなイメージだ。これは5つの軸でいえば、やはり、抽象と具体の行き来をしていると同時に、長期と短期の軸の行き来を交えたり、あるいは、大局と分析の軸を交えた思考をしてメンバー間のコミュニケーションを支援していることになる。

以上のように、コンセプチュアルスキルをうまく活用することによって、コミュニケーションの質をワンランク上げることができる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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