さて、今回のテーマは3番目のポイントで
(3)実行できる計画を作る
をコンセプチュアルな計画という視点から考えてみる。
そもそも、コンセプチュアルな計画とは何かというと、
目的の本質を見極めた計画
である。
ITプロジェクトや製品開発プロジェクトのように、日常的な業務をプロジェクト行っている場合には、そのプロジェクトで対象となる業務の標準が決まっている場合が多い。さらに、ITの場合には見積もりについても標準を決めている場合がある。この2つを組み合わせると、業務標準で段取りを決め、見積もり標準で所要工数やコストを決めるというのが計画の方法になる。
これでうまく行くのであれば問題ないが、一般的にいえば、同じようなプロジェクトは回数を重ねるほど高い生産性が期待されるため、いずれ標準的なやり方では制約の枠内に入らなくなってくる。
そこで標準には個々のプロジェクトの事情に合せてテーラリングをしてもよいといった注意書きがついていることが多いのだが、どうテーラリングをすればよいかが問題になってくる。
その議論の前に、そもそも、計画とは何かということを考えてみよう。上に述べているとおり、計画には手順を決める手順化と、手順を数量化する部分がある。
プロジェクト計画を考えてみると、手順化だけの計画というが統合マネジメント計画、コミュニケーション計画、スコープ計画で、手順と数量を決める計画が、タイム、コスト、品質、要員の計画、そして、手順だけの場合も数量が含まれる場合もあるのがリスク計画である。
そして、手順化にしろ、数量化にしろ、ある範囲内で主観的に行うものである。そして、その範囲は手順化であればルール、数量化であれば見積もりによって決める。
たとえば、コミュニケーションの手順はどう決めても構わない。しかし、組織の中で決まっているルールを無視して決めることは許されない。工数を決めるときには見積もりをする。その値にはばらつき(楽観値、悲観値)があり、それが計画値を決める範囲ということになる。
この範囲にあればどこに決めても構わない。たとえば、丁寧なコミュニケーションが必要だと思えば、ミーティングを増やせばいい。仕事を早く上げようと思えば、工数を少なめにとって、生産性を上げればよい。
重要なことは計画というのは分析的にのみ作られているわけではないということだ。
この点についてさらに難しい問題は、計画は分析的にできるとは限らないということだ。計画する対象が明確ではないことがある。
たとえば、初期計画の時点でプロジェクトの成果物の詳細が決まらないケースは少なくない。このような場合には、仮説に基づいて計画をしなくてはならない。つまり、成果物をどうするかということを意思として決めなくてはならない。
このように、事の大小は問わず、計画には必ずといっていいほど、意思決定の要素が入ってくる。見積もりやプロセスシミュレーションのような分析的な作業も大事なのだが、計画の良し悪しはむしろこの意思決定をいかにうまくやれるかにかかっているかだといってもよい。
そして、この意思決定を行う際に重要なのは、プロジェクトの(目的の)本質である。プロジェクトにはいろいろな人が参加するので、それぞれの目的がある。そこで重要になるのは、立場を超えた本質的な目的を見極め、その本質を中心にして計画を行うことだ。
たとえば、ある製品開発に当たって、現場は技術力の高い製品を作りたい、経営は収益力の高い商品を作りたい、販売は顧客に訴求力のある製品を作りたいと考えていたとする。この3つの目的を統合して、
顧客が想像しなかった製品を提供する
ことを目的としたとしよう。すると、顧客の行動調査など、顧客の情報収集を重点的に行う必要がある。
つまり、意思としてその部分の時間を十分にとるような計画をする必要がある。トータルの時間(デッドライン)は決まっているのでそれはほかの部分を手抜きすることを意味する。それが標準として定まっていてもだ。
そこで、最終的に分析的な時間と主観的に決める時間の本質を踏まえたバランスを取る必要がある。このバランスを取ることがコンセプチュアルスキルだのだ。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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