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日本企業は業務のスピードが遅いとよく言われるが、その原因は意思決定の遅さであり、それは、はっきりするまで決めないからである。不確実性があるという前提でプロジェクトマネジメントを行う必要がある

第5回 コンセプチュアル思考で目的と目標、計画を行き来する(2018.10.24)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆PMBOK(R)はコンセプチュアルだが、、、


本メルマガでは別途、「コンセプチュアル思考でプロジェクトを動かす」という連載をやっていますので、プロジェクトマネジメントの話題はできるだけそちらで書こうと思っていますが、構成上、概論的なことだけは書いておこうと思います。

というわけで、第2回の生産性向上第3回のイノベーションマネジメント第4回のダイバーシティマネジメントに続いて、コンセプチュアルプロジェクトマネジメントの概論です。

プロジェクトマネジメントについてはPMBOK(R)が十分にコンセプチュアルですので、忠実にやれば、コンセプチュアル・マネジメントの一環といえるプロジェクトマネジメントになります。

というのが正直なところですが、現実には、PMBOK(R)に準拠したプロジェクトマネジメントはしていても、あまり、忠実に行われていないというところがあります。特に、立上げのフェースで行う活動です。そのあたりをコンセプチュアル思考の視点から述べたいと思います。


◆プロジェクトデザイン


もう少し絞り込むと、目的の「決定」と「目標」の設定の部分、言い換えるとプロジェクトデザインの部分です。

通常、プロジェクトマネジメントでは、まず目的を決定し、それを目標に落とし込みます。そして目標を達成する方法を考え、それに基づいて計画を作っていきます。目標を変えたいときには計画を変え、目的を変えるときにはプロジェクトをやり直すことになっています。ただし、計画変更には目標の変更を伴わない計画変更もあることに注意しておいてください。

例えば、目的が顧客の満足を得ることであれば、獲得したい顧客満足のレベル、顧客が満足できるQCDなどを目標をして設定するわけです。


◆抽象的な目的と具体的な目標


これはコンセプチュアル思考で考えれば、目的という抽象的な概念から、目標という具体的な事象に展開していくことを意味しています。つまり、プロジェクトとして重要なことは目標を達成することではなく、目的を実現することなのです。

しかし、現実にはプロジェクトにおいては、決めた目標を変えるべきではないと考えられているケースが少なくありませんし、場合によっては計画を変えるべきではないと考えている組織もあります。

ちなみに計画の精度というのは、目標を正確に達成できる計画であり、変えなくて済む計画ではありません。つまり、プロジェクトスポンサーの許可が必要な計画の変更は目標が変わる計画変更です。

プロジェクトでは目標を達成するために計画を自由に変えていくことが望まれます。これは、プロジェクトの不確実性の高いことを考えたら、当然のことです。


◆プロジェクトスポンサーの役割


しかし現実にはそうなっていないケースが多いのです。そういう提案をすると、それは計画の精度が悪いからだと言って反対されることが多いです。つまり、プロジェクトといいながら、不確実性があってはならない、事前に何をどうやって作っていくかを明確にしてから着手するのがプロジェクトだと考えています。

ちょっと脱線しますが、計画の精度というのは、目標を正確に達成できる計画かであり、計画を変えなくて済むかではありません。

日本企業は業務のスピードが遅いとよく言われます。その原因として意思決定の遅さがよく指摘されますが、その一因にこのような考え方をしていることがあります。はっきりするまで決めないのです。

この原因は明らかです。本来、目標を変更することはプロジェクトスポンサーの役割ですが、プロジェクトマネジャーにプロジェクトを任せて、プロジェクトマネジメントに関与していないからです。


◆不確実性があるという前提でプロジェクトマネジメントを行う


このようなやり方もPMBOK(R)の実現の一つには違いありませんが、まったくコンセプチュアルではありません。

コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントにしていくには、まず、スタンスを変える必要があります。つまり、プロジェクトには不確実性があることを前提として考えることです。

その上で目的に実現を重視し、目標を現実に併せてどんどん変えていきますが、これをプロジェクトマネジャーに任せるのは相当大きな権限委譲になり、難しいでしょう。そこでプロジェクトスポンサーがもう少し、積極的にプロジェクトマネジメントに参加し、行うべきです。

突き詰めていえば、プロジェクトマネジメントがコンセプチュアルになっていない理由は、PMBOK(R)でいえば、プロジェクトスポンサーが機能していないことにあるのです。逆にいえば、プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにするには、プロジェクトスポンサーシップを十分に機能させればよいということになります。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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