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イノベーションの本質は、「Want(欲する)」「Believe(確信する)」「Do(とにかくやる)」である

第3回 イノベーションはビジョンから(2018.08.22)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆イノベーションの3つの本質

今回は、イノベーションをテーマにしたお話です。コンセプチュアル思考とイノベーションというのは直感的には結びつきにくいかもしれませんが、実は非常に深い関係があります。

イノベーションの本質は、「Want(欲する)」「Believe(確信する)」「Do(とにかくやる)」という3つにあると言われます。

まずは「欲する」。代表的な例だとウォークマンがそうです。ウォークマンはソニーの創業者の一人である井深大さんが「小型のテープレコーダーに再生機能だけを入れたものが欲しい」と考えたことからすべてが始まったと言われています。そして、それを世の中が求めているという「確信」をしたため、井深自身が開発しました。「とにかくやる」の精神ですね。


◆ロジカルだけでは本質にたどり着けない

しかし、現実には多くの企業では、そのような流れにはなっていません。だからイノベーションが生まれないと言ってもよいかもしれません。

なぜか?アプローチがロジカルだからです。

たとえば、イノベーションを目指す開発を企画するに当たっては、

・過去の資産(特に技術)を活用する
・市場調査の結果で正当化される

の2つのロジカルな裏付けが求められます。ここがクリアできて初めて、投資対効果の検討に入り、儲かりそうなら実行するという流れが多いようです。

もちろん、これらがイノベーションに不必要な訳ではありませんし、テーマを決めるに当たってはむしろ重要なポイントになります。

一方で、イノベーションの本質、特に「欲する」が本質として挙げられるように、イノベーションは

・自社の既存技術を活用して何か新しいことができないか
・市場のニーズをかなえるにはどうすればよいか

といったことからロジカルに考え始めるような活動ではないとも言えます。

ロジカルに考えることはアイデアを最終的にモノやサービスに落とし込むには極めて重要です。しかし、最初にロジカルに考えると視野が狭くなります。


◆iPhoneが生み出されたのは欲しいものを実現したから

一つの例として、スティーブ・ジョブズが行ったiPhoneの開発を考えてみましょう。

彼は、徹底的に「ユーザ」として欲しいものを考え、実現していったというエピソードがあります。だから、10年以上、トップを走る商品ができたのでしょう。もし、ジョブズが、Lisa、Macintosh、PowerBook、Newton、iMac、PowerMac、iBook、iPodなどそれまでのアップルの技術やデザインの資産を活かして新しいコンセプトの電話を創ろうとしたら、こうはいかなかったように思われます。

つまり、ジョブズには「欲する」があったのです。そして、「欲する」を実現するために、アップルの膨大な過去の資産を活用しました。その結果がiPhoneです。

この順序こそがイノベーションを生み出すために重要なのです。大雑把にいえば、まずビジョン、そして、ビジョンを実現するためのロジックが必要だといえます。

ところが、この順序は一般的なマネジメントとしてはリスクがあります。ビジョンとして掲げたものを実現できない、つまり、開発に失敗することです。失敗を避けて通ろうとすれば、最初にロジックを使い、

・市場ニーズを満たすには何が必要か
・自社の資産を活用して何ができるか

を考え、範囲を決めてしまいたくなるわけです。

こうすることにより、かなり失敗する確率は減り、それなりに売れる新しい商品を創ることが期待できます。これが、今、現実に行われている大半のイノベーションですが、これではiPhoneはできないのです。


◆壁を乗り越えるマネジメント

では、この壁を乗り越えるにはどうすればよいのでしょうか。まず、この壁がどういう問題かを整理する必要があります。

何よりも大きな問題は、「欲する」かどうか、明確になっていないことです。ロジカルなアプローチの背景には、存在するニーズやシーズを明確にし、応えていくという考えがあります。しかし、一方で「欲したもの」をニーズとして浸透させていくという考え方もできます。そのためには、何を欲しているのかが極めて重要なのです。

言い換えると、客観ではなく、主観、場合によっては直観を重視し、その上である程度、ビジョンが固まってきたら、市場の意見を客観的に評価したり、実現方法を考えてみるというアプローチをとります。このようなアプローチがコンセプチュアル思考です。

コンセプチュアル思考をうまく活用するには、

・コンセプチュアルな組織を創る
・コンセプチュアル思考で、ビジョンとロジックの行き来をし、コンセプトを創る

の2つのマネジメントを行うことが不可欠です。このようなマネジメントがコンセプチュアル・マネジメントには求めらているわけです。


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  2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
 3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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