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マネジャーにとってもっとも重要なスキルがコンセプチュアルスキルであり、コンセプチュアル思考である

第43話:コンセプチュアルマネジメントという提案〜コンセプチュアルマネジメント宣言(2018.03.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆マネジャーにとってもっとも重要なスキル

ロバート・カッツがコンセプチュアルスキルを提起したときから、コンセプチュアルスキルはマネジャーにとって身につけなくてはならない課題でした。私たちは、その後のドラッカーのマネジメントとナレッジワークの提唱によって、コンセプチュアルスキルの必要範囲は企業で働くすべての人に拡張されたと考えていますが、それでもマネジャーにとってもっとも重要なスキルがコンセプチュアルスキルであり、コンセプチュアル思考であるという状況は変わっていません。

理由は大局的な視点が必要だからです。部長職以上になるというまでもありませんが、たとえば、課長職で、総務課長や企画課長をワンランク上に位置づけている組織は少なくありません。これは総務や企画という仕事は他の課長よりも大局的な視野でものごとを見る必要がある。言い換えると経営職に近いと考えられているからです。

つまり、コンセプチュアルな思考ができないと務まらない仕事だといえます。

このような傾向は年々強くなってきています。従来、特定業務を遂行するための組織を統制することがメインの仕事だった開発や営業などの各業務の課長でも、業務を外部に委託し、ネットワークで仕事をするようになってきており、組織の内部に目配りしているだけではうまくできなくなってきています。


◆コンセプチュアル・マネジメントの4つの課題

このような状況の中で、マネジメントをコンセプチュアルに行うこと、言い換えると、

周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めたマネジメントを行うこと

が不可欠になってきています。マネジメントは本質的にそういうものですが、あえて従来のマネジメントと区別するために、PMstyleではこういうマネにメントを「コンセプチュアル・マネジメント」と呼んでいます。

では、マネジメントにコンセプチュアルな視点が必要なところはどこでしょうか。これはマネジメント活動の見方によってさまざまだと思いますが、コンセプチュアルマネジメントでは、マネジメントの本質的な課題として以下の4つを考えています。

(1)イノベーションを起こす
(2)ダイバーシティを高める
(3)生産性を向上させる
(4)プロジェクトを動かす

これらの活動を適切にできれば、戦略策定、事業計画、組織マネジメント、イノベーションマネジメント、組織コミュニケーション、リーダーシップ、統制などさまざまなマネジメントを、高い品質で実現できると考えているわけです。これは最近では一般的な認識になっています。

では、それぞれのテーマに対して、コンセプチュアルスキルやコンセプチュアル思考はどのような役割を果たすのでしょうか?それぞれのテーマについて過去に書いた記事も参照しながら、説明していきます。


◆イノベーションを起こす

まず、イノベーションについてですが、過去にこのような記事を書いています。

【PMスタイル考】第130話:イノベーションにおけるコンセプチュアルスキルの役割

【コンセプチュアルスタイル考】第35話:コンセプチュアル思考による意味のイノベーション

また、別のメルマガ「プロジェクト&イノベーション」では、

コンセプチュアル思考によるイノベーション

という事例記事を書いています。ポイントを一言でいえば、ニーズや顧客要求の本質をコンセプチュアルスキルで見極めることです。特に、「コンセプチュアル思考による意味のイノベーション」で述べたように、イノベーションのためには従来とは違った常識で物事を捉えることが重要です。

たとえば、日産がカーレースで、従来はエンジンの出力を大きくし、空気抵抗を小さくするような車の形状を如何に考えるかで競争していたところに、ピットの時間を短くするといった発想をするのはまさに常識を覆しているといえます。また、アップルがスマートフォンを開発したときには、ユーザは常に新しいものを求めるという常識を打ち破り、タイムレスを実現しました。そのために、拘ったのがシンプルでした。


◆ダイバーシティーを高める

2番目のダイバーシティーについては過去に例えばこんな記事を書いています。

【PMスタイル考】第131話 コンセプチュアルスキルでダイバーシティーを高める

ポイントは、コミュニケーションにおいて相手の考えの本質はどこにあるのかを見極めた上で、それをどのように具体化すれば相手の考えになるのかという視点から相互理解を行うことです。表面的な発言や行動にとらわれていると、本来の意味での相互理解はできませんので、相互理解のためにコンセプチュアル思考は大きな役割を果たしています。


◆生産性を向上させる

3番目の生産性については過去に例えばこんな記事を書いています。

【PMスタイル考】第132話:生産性と効率性l

【PMスタイル考】第101話:創造性と生産性の不思議な関係l

ポイントは、まず、生産性という概念を正しく理解すること、特に効率性と生産性の違いを明確にすること。その上で、提供したいサービス、製品、あるいは業務の本質はどこになるのかを考え、現在の具体的なものに拘ることなく、本質を具体化する方法を考えることです。


◆プロジェクトを動かす

さらに、4番目のプロジェクトを動かすことに関しては、過去に一度、「プロジェクト&イノベーション」に連載を書いていますし、現在も「PM養成マガジン」にもう少し詳しく説明した

「コンセプチュアル思考」でプロジェクトを動かす」

連載しています。

コンセプチュアルにプロジェクトを動かすポイントは、プロジェクトでやりたいことの本質を考え、その本質をプロジェクトの制約条件の中で行うことができる方法を探すことです。


◆コンセプチュアル・マネジメント宣言

このような4つのコンセプチュアルな活動をベースにして、事業や業務、人や組織のマネジメントをしていこうというのが「コンセプチュアル・マネジメント」です。

繰り返しになりますが、本来マネジメントはこのようにあるべきですが、現実にはそうなっていないので、これまでのやり方と区別し、新しい形のマネジメントを目指すという意味で、「コンセプチュアル・マネジメント」と呼んでいるのです。


◆新規ワークショップのご案内

来年度から「コンセプチュアル・マネジメント」講座を始めます。今、準備中ですが、まずは、概論と、生産性の向上の講座を行います。

【概論】

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアルな組織を創るマネジメント          ◆(7PDU's)
日時・場所:【Zoom】2024年 07月 23日(火)9:30-17:30(9:20入室可)
      【Zoomハーフ】2023年 03月 15日(水)13:00-17:00+3時間
        ※Zoomによるオンライン開催です
        ※ハーフセミナーは、事前学習3時間あります
        ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
  講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス、PMP、PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_management.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
 ※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる
          「イノベーションを生み出す力
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  【カリキュラム】                     
 1.コンセプチュアルではない組織の問題点
  ・個人レベルの問題点
  ・チームレベルの問題点
  ・組織レベルの問題点
 2.コンセプチュアルなマネジメントのポイント
  2.1 質問型の組織を創る
  2.2 コンセプチュアルな組織活動のプラニング
  2.3 ステークホルダーへのコンセプチュアルな対応
  2.4 コンセプチュアルな人材育成
  2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
 3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
 4.コンセプチュアルマネジメントでコンセプチュアルな組織を創る仕組みワークショップ
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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