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第44話:非常識な本質(2018.04.12)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆「非常識な本質」とは

お気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の記事のタイトルは以前、日産で名車GT−Rを開発された水野和敏さんが2013年にフォレスト出版から出版された書籍のタイトルと同じです。実は、この本に書かれているレースへの取り組みを、「コンセプチュアルスキル入門」講座で使わせていただいています。

まず簡単にどのような話なのか紹介しておきます。

水野さんはキャリアの初期にプリメーラの開発で実績を上げ、これからエンジニアとしてバリバリにやって行けると意気込んでいたときに、成績の振るわなかったカーレースの監督を命じられます。

カーレースの世界は、それまでは大きな出力のエンジンを積み、車体を軽くし、抵抗をなくすことによって如何に最高スピードを上げるという勝負でした。ところが、よく観察してみると、当時の代表的なサーキットコースだった富士スピードウエイでは、最高スピードで走れる直線は全体の18%に過ぎないことが分かりました。残りの82%はカーブになっており、直線でスピードを出すよりは、カーブを速く走る方が勝利に近づくのではないかと考えました。また、それ以外でもピットの時間をできるだけ短縮するなど、当時ではあまり注目されなかった点に着目し、工夫をしていきました。

そのような戦術は周囲から否定されましたが、もともと成績が悪かったチームを引き受けたこともあり、最終的には周囲を説得し、加減速が素早くできる車の設計、ピット作業の短縮に取り組み、見事にその年の年間チャンピオンとなったというストーリーです。

このように、これまでの常識を覆するところに見出した本質を水野さんは「非常識な本質」と呼んでいます。

一般に本質を見極めるのが難しい理由は、(抽象的で)「見えない」ところにあることだと考えられていますが、もう一つの難しい理由は「非常識である」ことではないかと思います。今回はこの問題について考えてみたいと思います。


◆本質と「正解」は違う

本題に入る前に、カーレースの話の補足をしておきたいと思います。水野さんは上に述べたように本質を考えたわけですが、これ以来、水野さんの考えた一般的になったかといいますと、必ずしもそうではありません。ピット作業の効率化などはその後、どんどん取り組みが盛んになっていますが、車の仕様に関してはやはり、直線を速く走ることを重視した仕様で実績を上げているチームも多くあります。

つまり、本質と「正解」は違います。この点はよく理解しておく必要があります。

本質が重要だとする理由は「正解」が存在しないからです。簡単にいえば、正解のない問題解決でもっとも重視するのが本質だと考えれば分かりやすいと思います。言い換えると、そのためにはほかのことを犠牲にしてでもそこに拘るのが本質だといえます。


◆本質は主観的なもの

このように考えると、本質には多分に主観的な要素が入ってきます。ある人にとっての本質は、その人が決めることです。

もちろん、主観だけで本質を決めてもうまく行かないので、客観との行き来をしながら調整していくわけですが、誰がみても客観的に正しい正解ではないということを忘れないでください。

もう一つ言えるのは、そうは言いながら、主要な関係者を納得させないと、現実的な本質だとは言えません。水野さんの例でも、関係者を納得させたから本質を行動に移すことができたわけです。


◆非常識な本質を探すには

このような前提の上で、非常識な本質を探すにはどうすればよいかを考えてみます。

非常識な意思決定というとよくやるのが、これまでの流れ(トレンド)とは逆の発想、つまり逆張りで決めるというやり方です。水野さんの事例でも、それまで直線のスピードを追求していたのを、カーブやコース走行以外のスピードを追求するという逆張りになっています。

しかし、水野さんは逆張りをやっているわけでありません。勝つためには何が必要かを論理的に考えて、

・平均速度を上げること

という解決方法に行き着いています。そして、その具体的な方法として、加減速の速い車やピットのスピードアップという答えを見つけて、実現しています

もう少し、詳しく言えば、最高速度を上げることは何のためにやるのかということを考えるとレースに勝つためだという考えに至ります。勝つための方法はいろいろありますが、その中で本質は何かと考えたときに平均速度を上げる、つまり82%を速く走ることだと考え、それを具体化していったわけです。


◆抽象レベルをうまく設定する

この点をもう少し、詳細に考えてみましょう。最高速度を上げることを課題だと考えると

・出力の大きいエンジンに設計方法
・重量を軽くする車体のデザイン
・空気抵抗を小さくする車体のデザイン

の3つくらいの解決方法になります。いずれも車の仕様に関する問題解決法です。

これに対して、もう少し、概念度(抽象度)を上げて「勝つこと」を課題だと考えると、

・最高速度を上げる
・平均速度を上げる

といった解決方法が考えられます。そして、問題解決の本質、つまり、レースに勝つための本質を「平均速度を上げる」ことだと考えると、本質の具体的な実現方法として

・車の性能をアップする(最高速度を上げる)
・車の操作性を機敏にする
・車体の調整時間を短くする
・腕のよいドライバーを雇う

など、車の設計以外の要素で具体的な答えを見つけることもできるわけです。つまり、これまでの常識では考えられなかった問題解決の方法を生み出すことができます。

このように、抽象化レベルを上げて問題解決を行い、本質的な問題の解決を行うことにより、これまでにはなかった発想のアイデアを生み出す、これこそ、イノベーションへの近道だといえます。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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