クリティカルシンキングについて、これまで、4回、記事を書いてきました。
PMの道具箱(90) クリティカルシンキング(1)〜7つの心構え
PMの道具箱(91) クリティカルシンキング(2)〜合理性を疑う
PMの道具箱(92) クリティカルシンキング(3)〜思考を疑う
PMの道具箱(110) クリティカルシンキング(4)〜ロジカルシンキングとその落とし穴
本号はクリティカルシンキングの第5回目です。クリティカルシンキングの4ステップをご紹介します。
ロバート・エニスのクリティカルシンキングの定義は、
「何を信じ、何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で内省的な思考」
であり、クリティカルシンキングの目的は、「思考において、最適の結論(最適解)を導き、行動すること」です。
そのためには、次のの4ステップにて、まず、何に取り組むのかを決め、それについてじっくり考え、仮説(最適解)を検証し、最適解を実行することです。
1.課題
2.熟考
3.検証
4.実行
もう少し、詳しくご紹介します。
1.課題
課題づくりとは、これから取り組む事項の「目的」を明確にすることです。ブレーンストーミングなどで関連事項のキーワードを列挙し、KJ法などでキーワードを整理し、短文化(コンセプト化)します。そして、短文化されたキーワードから課題を抽出し、テーマを設定します。
次に、思考手順の設計(フレーミング)を行い、取り組みの全体像を明確にします。具体的には、熟考、検証、実行ステップのそれぞれのステップでどのような思考を行うかを明確にします。
2.熟考
次に、1.課題で決めた思考手順に則り、黙考、資料調査、データや情報の整理、人脈の利用などを行います。推奨ツールは、ブレーンストーミング、KJ法、ロジックツリー、SWOTなどです。
熟考では、現状把握として、課題の現状に関して、じっくりと考え、問題の本質を明確にし、自分の考えを他のメンバーと比較し、相手の意見に耳を傾け、対等の立場で意見をぶつけ合います。
そして、テーマの関連分野について資料調査を行い、内容をまとめ、共通する構造(パターン)を見つけます。
また、ロジカルシンキングツールを活用してデータや情報を整理し、人脈を利用することで、テーマに詳しい人の話を聞き、資料調査で見つけたパターンを確認します。
3.検証
次に、仮説(アプローチ:複数)を立案します。この仮説が課題の方向性を左右しますので、仮説が妥当かどうかの検証が必要です。検証は、観察による方法が一般的であり、予め、仮説検証のチェックリストを作っておくとベターです。また、実際にアプローチを実行してみることで、検証する場合もあります。
4.実行
検証を踏まえて、課題解決の方向性(アプローチ)を決めます。そして、課題の方向性に対して具体的なアクションプラン(5W2Hの決定)を作成します。そして、アクションプランの実行状況をスケジュール、成果、成果の質、効果などにて進捗管理し、確認しますが、自己管理が重要です。
さて、クリティカルシンキングができる人のことをクリティカルシンカーと呼ぶそうです。
これまで、5回の連載にて、クリティカルシンキングについてご紹介してきました。
下表は、クリティカルシンカーのイメージとクリティカルに考えていない場合との比較と、クリティカルシンカーになるためのポイントが5回の連載のどの部分に該当するのかをまとめた表です。ご参考にしてください。
┌──────────┬──────────┬──────────┐
│クリティカルではない│クリティカルシンカー│ポイント │
├──────────┼──────────┼──────────┤
│非論理的 │論理的 │合理性を疑う │
│非計画的 │計画的 │クリシンの4ステップ│
│非体系的 │体系的 │合理性を疑う │
│データを活用しない │データを整理、分析し│クリシンの4ステップ│
│ │ 、活用する │ │
│過去の延長線上の発想│新規性、創造性に富む│ロジカルシンキング │
│ │ 発想 │ の落とし穴 │
│思考手順がない │システマティックな │クリシンの4ステップ│
│ │ 思考をする │合理性を疑う │
│思考方針がない │思考方針がある │7つの心構え │
│ │ │クリシンの4ステップ│
│情報を逃がすので、 │情報を活かす │クリシンの4ステップ│
│ 機会損失が多い │ │ │
│情報を鵜呑みにする │情報の裏付けをとり、│合理性を疑う │
│ │ 情報の精度が高い│思考を疑う │
│判断に誤りが多い │情報を活用し、 │クリシンの4ステップ│
│ │ 正確な判断をする│思考を疑う │
└──────────┴──────────┴──────────┘
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※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります。
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1.クリティカルシンキングトレーニング
【講義】仕事の本質を考え、関係者として、評価する
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2.クリティカルシンキング応用(1)〜要求分析
【講義】本質要求を探す
【エクスサイズ】顧客の現状認識を疑う
【エクスサイズ】顧客の要求を疑う
【エクスサイズ】顧客の要求の本質を追求する
3.クリティカルシンキング応用(2)〜リスクマネジメント
【講義】クリティカルシンキングとリスクマネジメント
【エクスサイズ】プロジェクト計画を疑う
【エクスサイズ】プロジェクト目標を疑う
【プロジェクト】クリティカルシンキングでプロジェクト計画を見直す
4.クリティカルシンキング応用(3)〜ステークホルダーマネジメント
【講義】ステークホルダーを多面的に分析する
【エクスサイズ】リスクからステークホルダーを特定する
【エクスサイズ】ステークホルダーの影響力を疑う
【エクスサイズ】視点を変え、ステークホルダーの意識を変える
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鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
本連載は、PM養成マガジン購読にて、最新記事を読むことができます。