◆SECIモデル(セキモデル)
PMBOK(R)第6版では、統合知識エリア、実行プロセス群に
「プロジェクト・ナレッジ・マネジメント(プロジェクト知識マネジメント)」
プロセスが追加されました。
第5版までは、統合知識エリアの終結プロセス群に
「プロジェクトやフェーズの終結」
プロセスがあり、そのプロセスでは、プロジェクトやフェーズを公式に終了し、教訓の組織への提供し、組織資源を解放します。
つまり、第5版までは、プロジェクトの最後に、振り返りを行い、教訓を組織として残す、としていました。
ところが、第6版では、終結プロセスのみで振り返りをするのではなく、プロジェクト実行中、常に振り返りを行い、自身のプロジェクトにおいて、有効な知見はすぐに採用し、またその知見は他プロジェクトでも活かせるように、組織のナレッジとして蓄積するというプロセスが追加されています。
これは、既存の知識を使用し新しい知識を創出することで、プロジェクト目標の達成と組織としての学習に貢献するナレッジ(知識)マネジメントのプロセスが追加されたということになります。
アジャイルプロジェクトマネジメントを実践されている方であれば、すでに、当たり前のことかもしれませんね。何を、今さら、かもしれません。
さて、組織学習の有名なフレームワークとして、SECIモデル(野中郁次郎氏、紺野登氏)がありますので、ご紹介します。
これは、個人の暗黙知を形式知化し、組織としてナレッジを蓄積するサイクルをモデル化したものです。
暗黙知とは、信条、経験、洞察など、明示または共有が困難な個人の知識のことであり、形式知とは、文字、数字、図版のような記号でコード化できる知識のことです。つまり、個人の暗黙知を組織で利用できる形式知化し、その形式知を使って、新たな経験をし、新たな暗黙知を得るサイクルであり、次のステップを踏みます。
(1)共同化(Socialization):直接経験を通じて暗黙知を共有する
・熟練的技能、ノウハウ、顧客に関する直感的洞察、勘などを維持活用する
・相手の立場になりきる
・頭で考えるのでなく、現実感を体感・同期する
(2)表出化(Externalization):対話や思考を通じて、暗黙知を形式化する
・個別の経験から得た本質直感を概念化し、他人に伝える
・事実は目に見えるが、本質は目に見えない
・コンセプトにはその背後に真の根拠やメカニズムがある
(3)結合化(Combination):形式知の組み合わせにより知識を創造する
・アイデアやコンセプトを分類、加工、組み合わせ、編集する実験、シミュレーション、検証、淘汰する
・合理的知識の統合による理論構築
・関係性と全体最適を考える
(4)内面化(Internalization):形式知の行動・実践レベルでの伝達、新たな暗黙知ができる
・論理的に理解していた知を、行動を通じて具体化し深く考えることで、暗黙知として身につける
・理想と現実のギャップを考える
・次に何をすべきかを考える
・内省し、新しい知を継続的に作り出す習慣をつける
そして、ここで重要なことは、個人の知識をどのように形式知化し、また、その形式知化されたものをどのように実践(行動)するかということです。
例えば、失敗があり、ある解決策を実行することで、その失敗を取り戻した場合、常にその解決策が最適であるとは限りません。失敗の状況や解決策を実行する人の能力により、最も適している解決策は異なるからです。
では、最適な場合とはどんな場合かを示すために、失敗事例の状況や解決策をこと細かく示せば、ほとんどの場合、使うことのできない知識となってしまいます。また、解決策のステップのみを示すことで、誰でも使える形式知を残そうとすれば、どんな状況でも使えるような原理・原則しか示すことができません。
つまり、形式知化は、どの概念化のレベルで知識を残すのか、また、その形式知を使う場合は、どの様に具体化(行動化)するのかが、重要なポイントとなります。
組織学習のためには、形式知化する、また、それを利用するという点において、コンセプチュアルスキルの向上が必須ということになります。
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鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
本連載は、PM養成マガジン購読にて、最新記事を読むことができます。