第1回 コンセプチュアル・マネジメントとは(2018.04.19)
◆はじめに〜本連載のコンセプト
キャッチアップの時代が終わって行き詰っている日本の企業は大きく変わりたいと思っていますが、なかなか変われていないのが現状です。企業によっては、どのような方向に変わればよいかすら明確ではなく、「生産性を上げる」とか、「イノベーションを起こす」といった言葉だけが、飛び交っている企業も少なくありません。
本連載は、これから企業が持続的に成長するために不可欠なマネジメントについて考えることを目的としています。
多くの企業が行き詰っている大きな原因は、目に見える問題に対して、その問題の解決だけを目的にした対応を続けていることだと思われます。今の状況を抜け出すには
・目に見えないものも考える
・価値を判断し、創造する
・全体的的な視野を持ち、常に全体と部分を併せて考える
というマネジメント、つまり、
見えないものを把握し、価値を判断し、全体を描き、思考や行動するマネジメント
が必要です。もう少し、違う視点でいえば、
周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めたマネジメント
が不可欠です。
この連載では、このようなマネジメントを
「コンセプチュアル・マネジメント」
と呼び、コンセプチュアル・マネジメントの進め方を具体的な課題を設定して考えていきたいと思います。
◆今、解決したい課題とコンセプチュアル・マネジメント
今、企業の前に立ちはだかる課題はさまざまですが、特に多くの企業が取り組んでいるのは以下の4つだと考えられます。
(1)イノベーションを起こす
(2)ダイバーシティを高める
(3)生産性を向上させる
(4)プロジェクトを動かす
の4つです。
この4つの課題について、コンセプチュアル・マネジメントをどのように行っていくかが本連載のメインのテーマになります。初回は、それぞれのテーマについて過去に書いた記事も参照しながら、説明していきたいと思います。
◆イノベーションを起こす
まず、イノベーションについてですが、過去にこのような記事を書いています。
【PMスタイル考】第130話:
イノベーションにおけるコンセプチュアルスキルの役割
【コンセプチュアルスタイル考】第35話:
コンセプチュアル思考による意味のイノベーション
また、本メルマガでも
「
コンセプチュアル思考によるイノベーション」
という事例記事を継続して書いていく予定です。
イノベーションを起こすためのマネジメントのポイントを一言でいえば、ニーズや顧客要求の本質をコンセプチュアル思考で見極めることです。特に、「コンセプチュアル思考による意味のイノベーション」という記事で述べたように、イノベーションのためには従来とは違った常識で物事を捉えることが重要です。
たとえば、日産がカーレースで、従来はエンジンの出力を大きくし、空気抵抗を小さくするような車の形状を如何に考えるかで競争していたところに、ピットの時間を短くするといった発想をするのはまさに常識を覆しているといえます。また、アップルがスマートフォンを開発したときには、ユーザは常に新しいものを求めるという常識を打ち破り、タイムレスを実現しました。そのために、拘ったのがシンプルでした。
◆ダイバーシティーを高める
2番目のダイバーシティーについては過去に例えばこんな記事を書いています。
【PMスタイル考】第131話
コンセプチュアルスキルでダイバーシティーを高める
ポイントは、コミュニケーションにおいて相手の考えの本質はどこにあるのかを見極めた上で、それをどのように具体化すれば相手の考えになるのかという視点から相互理解を行うことです。表面的な発言や行動にとらわれていると、本来の意味での相互理解はできませんので、相互理解のためにコンセプチュアル思考は大きな役割を果たしています。
◆生産性を向上させる
3番目の生産性については過去に例えばこんな記事を書いています。
【PMスタイル考】第132話:
生産性と効率性
【PMスタイル考】第101話:
創造性と生産性の不思議な関係
ポイントは、まず、生産性という概念を正しく理解すること、特に効率性と生産性の違いを明確にすること。その上で、提供したいサービス、製品、あるいは業務の本質はどこになるのかを考え、現在の具体的なものに拘ることなく、本質を具体化する方法を考えることです。
◆プロジェクトを動かす
さらに、4番目のプロジェクトを動かすことに関しては、過去に一度、「プロジェクト&イノベーション」に連載を書いていますし、現在も「PM養成マガジン」にもう少し詳しくした
「コンセプチュアル思考」でプロジェクトを動かす」
連載しています。
コンセプチュアルにプロジェクトを動かすポイントは、プロジェクトでやりたいことの本質を考え、その本質をプロジェクトの制約条件の中で行うことができる方法を探すことです。
◆おわりに
以上のように、コンセプチュアル思考をベースにして、事業や業務、人や組織のマネジメントをしていこうというのが「コンセプチュアル・マネジメント」です。本連載では、この具体的な方法をお伝えできればと考えています。
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※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる」
「イノベーションを生み出す力」
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【カリキュラム】
1.コンセプチュアルではない組織の問題点
・個人レベルの問題点
・チームレベルの問題点
・組織レベルの問題点
2.コンセプチュアルなマネジメントのポイント
2.1 質問型の組織を創る
2.2 コンセプチュアルな組織活動のプラニング
2.3 ステークホルダーへのコンセプチュアルな対応
2.4 コンセプチュアルな人材育成
2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
4.コンセプチュアルマネジメントでコンセプチュアルな組織を創る仕組みワークショップ
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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