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第50話:コンセプチュアル思考で戦略と戦術を行き来する(2019.06.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆コンセプチュアルスキルの時代

コンセプチュアルスタイル考も今回で50回になります。第1回が2013年4月ですので、6年間続けていることになります。

【コンセプチュアルスタイル考】第1話:コンセプチュアルスキルの時代

PMstyeではコンセプチュアルスキル診断を提供していますが、診断実施者の数がこの半年くらい増えており、コンセプチュアルスキルの時代の到来を予感させます。

コンセプチュアルスキル診断

さて、この診断に対して、高いスコアがでないという声をよく聞きます。

診断ページに実施結果があるので見て頂くと分かりますが、この診断結果は2,300名以上の受診者に対してほぼ正規分布になっており、高いスコアがでないと感じるのはコンセプチュアルであることに誤解があるからだと思われます。もっとも多いのは、コンセプチュアル思考というのは概念の世界と形象の世界を行き来する思考だという点について正しく理解していないケースです。


◆コンセプチュアルスキル診断結果の評価ポイント

ちょっと復習しておきますと、コンセプチュアル思考はこの行き来を考える軸として

 [概念]   [形象]
・大局的 / 分析的
・抽象的 / 具象的
・主観的 / 客観的
・直観的 / 論理的
・長期的 / 短期的

の5つを考えています。この5軸のうち、直観的や主観的、抽象的の3つに関しては従来は、好ましくないと考えられていました。最近では

【PMスタイル考】第148話:直感や主観こそがイノベーションを生み出す
l
【PMスタイル考】第149話:プロジェクトにおける主観や直観の活かし方


で議論しましたようにやっと価値観が変わってきはじめているように感じていますが、従来の価値観が根強いことも事実です。

このような価値観でコンセプチュアル診断を行っても高いスコアは出ません。それは上に述べた通り、コンセプチュアル思考はこの行き来をする思考法であり、診断ではいかに適切に行き来していることを評価しているからです。

つまり、この3つについては

・抽象的な視点でも具象的な視点でも考えていること
・直観的な態度でも論理的な態度でも考えていること
・主観的な立場でも客観的な立場でも考えていること

といった点を評価しており、具体的に考えなくはダメだ、論理的に考えなくてはだめだというスタンスではスコアが出ない仕組みになっているのです。


◆戦略と戦術における概念と形象の行き来

気がついていない人も多いですが、概念の世界と形象の世界の行き来をすることが求められている分野は、意外と多いものです。コンセプチュアルスタイル考の連載も今回で50回目になり、少し後に残るような記事を書きたいと思っていろいろ考えて、行き来の実例を考えるシリーズを書いてみようと思い立ちました。その第1回は著者がその典型だと思っている、戦略と戦術の行き来です。

戦略とは何か、戦術とは何かということはいろいろな意見がありますが、企業でもっとも一般的なのは、

企業とてこうなりたいというビジョンがあり、そのビジョンを現実にするために戦略を策定する。そして、その戦略を実行するために戦術を考える

というものでしょう。ここではこれを定義として話を展開していきます。

まず、例として企業Aを考えてみましょう。

この企業は使い捨ての食器を製造販売しており、長年、ユーザーの要望するものを提供するというビジョンを掲げ、そのため多品種の商品を低価格で提供することを戦略として事業展開してきました。しかし、近年、環境問題への関心が高くなり、ビジョンを実現していくには戦略を変える必要があり、環境にやさしい商品を提供することに変えていきました。

この戦略を実行するために、A社は、ストローやスプーン、フォークなどいくつかのプラスティック商品についてはリサイクル可能なプラスティックを使った商品開発をしました。そして、リサイクル制度を立ち上げるという戦術を採ろうとしました。しかし、リサイクルは技術的には可能でいたが、システム化しようとすると産業界、流通業界、消費者などの協力が必要で、非常に時間がかかることが判明しました。

そこで、この戦術のプライオリティを下げ、新たにプラスティック原料の廃止を戦略実行のための戦術とし、紙の原料を活用した代替商品を開発し、展開していきました。


◆なぜ、戦略と戦術の行き来が必要か

この例のように、戦略は大きな方針(ビジョン)を実現するために方向性であり、概念の世界のものです。これを戦略という形で具体的なやり方に落としていくわけですが、重要なことは「行き来」なのです。

つまり、上の例でも見られるように戦術は必ずしも思ったようにいくとは限りません。そこで、もう一度戦略に立ち返り、その戦略の実行方法を考え直す必要があるのです。

いってしまえば、事業というのはこの繰り返しで、一度、戦略を策定すると、2〜3年という中機関では、いろいろと具体的な戦術を試しながら、戦略実行に有効なものを探し、事業として築いていくのです。

このとき重要なのは、うまくいかなかった戦術から何を学び、うまくいった戦術から何を学ぶかで、それらをいかに次の戦術立案に活かしていけるかです。もちろん、戦術は戦略実行のためのアイデアですので、どれだけ多様なアイデアが出てくるが重要ですが、そのアイデアの源泉としてこの学習が事業の成否を決めるといっても過言ではありません。


◆コンセプチュアル思考の役割と進め方

繰り返しになりますが、このような戦略と戦術の行き来は、コンセプチュアル思考でいう概念の世界と形象の世界の行き来になります。つまり、この行き来を効果的に行うためには、5つの軸を意識して行うとよいということになります。

戦略と戦術の基本的な関係は既に説明しましたように抽象と具象の軸です。つまり、抽象的な戦略を具象化したものが戦術という関係があるわけですが、戦略を戦術に落とし込むときには、コンセプチュアル思考の他の軸も意識する必要があります。たとえば、

・ビジョン実現の方法として戦略を大局的に捉えたときに、なぜその戦術なのかを分析的に説明できる
・主観的に妥当だと考えている戦略に対する戦術が客観的に妥当だと説明できる
・直観的に感じている戦術の戦略貢献が論理的に説明できる
・時間軸でみた場合、戦術は戦略実行の一部になっている

といった関係づけをしていけばよいわけです。

現実には、戦略は年度など、中期の途中で調整しますが、この調整を効果的に行うためにはコンセプチュアル思考で考え、調整していくとよいと考えられます。ただし、難しいのは、現実には戦略策定と戦術立案は行っている組織が違うケースが多いことですが、だからこと、コンセプチュアル思考という共通のフレームワークを使うことに意味があるもといえます。


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  【カリキュラム】                     
  1.戦略的に考えるとはどういうことか
  2.戦略マネジメントのクオリティはコンセプチュアル思考で決まる
  3.戦略マネジメントにおけるコンセプチュアルスキルの活用
  4.戦略マネジメントとプロジェクト
  5.戦略マネジメントワークショップ
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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