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第149話:プロジェクトにおける主観や直観の活かし方(2019/04/10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトコンセプト=目的+目標

前回のPMスタイル考では、客観/論理では新しいものは生まれない、直観や主観が必要であるということを述べた。今回はもう少しこの議論を深めて、どういう目標設定をすれば直観や主観を活かしたプロジェクト活動に展開していけるのかを考えてみたい。

プロジェクトには目的と目標がある。コンセプチュアルプロジェクトマネジメントの考え方では、その上位に戦略があり、戦略実行に貢献するためにプロジェクトを実施する。その際に、どのようなプロジェクトとして実施していくかをコンセプトとして考えていく。言い換えると、戦略実行にどのように貢献していくかがプロジェクトコンセプトになる。

プロジェクトコンセプトを決めた上で、プロジェクトの目的や目標に落とし込んでいくという流れが基本であるが、実際には目的や目標と行き来しながらコンセプトを固めていくことが多い。つまり、

プロジェクトコンセプト=目的(意義)+目標

と考えてコンセプトを決めていくことが多い。プロジェクトの役割分担で考えると

コンセプト:プロジェクトスポンサー
目的:プロジェクトマネジャー
目標:チームリーダー

という分担が基本になる。


◆コンセプトの役割

詳しく議論する前に、コンセプトの役割をもう一度考えておきたい。

プロジェクトが戦略実行のために行うというところは議論しないとして、貢献の仕方はピンからキリまである。この状態でプロジェクトに権限移譲すると、ボトムアップで考えられていることが多い。つまり、

「目標を確実に達成するにはどうすればよいか」

を考えてプロジェクトの目的を決め、目標を達成するプロジェクトの計画を作る。その典型が予算や納期である。

そこで(一般的な)プロジェクトマネジメントでは、目的をプロジェクトスポンサーが定義し、プロジェクトマネジャーやリーダーがその目的を実現するための目標を設定することになる。しかし、現実にはプロジェクトの評価は目標を達成できたかどうかで行われるので、目標にあわせて目的を定義していることが少なくない。

このような状況を避けるために、目的や目標を決める前にプロジェクトスポンサー、プロジェクトマネジャー、チームリーダーなどの関係者が一堂に会してプロジェクトの方向性を決め、戦略実行への貢献度について合意するためにコンセプトとして全体の方向性を決める。これがコンセプトの役割である。


◆よいプロジェクトとは

このようにしてコンセプトを決め、コンセプトを実現する目的や目標を決めていくことにより、プロジェクトをデザインしていく。この場合、エクセレントなプロジェクトとは

「目標を適切に設定する」

プロジェクトである。もう少し、丁寧にいえば、

目標を確実に達成するにはどうすればよいかを考えるのではなく、戦略実行に最大の貢献をする目標の設定をする

プロジェクトである。そして、設定した目標をいかに実現するかがプロジェクトに課せられる任務になる。


◆確実に目標を達成できることの前提

これを非現実的だと感じる人が多いと思う。そう感じているから、確実に達成できる目標を置くわけだ。ただし、この議論には前提がある。つまり、

「これまでと同じやり方でやるとすれば」

という前提だ。

新しいことをするということはこれまでとは違うことをするということだ。上のように考えてコンセプトを創り、目標設定をすればこれまでできなかったことが目標になる。そこで、プロジェクトではその目標を達成する方法を考える。これこそがプロジェクトの醍醐味であり、それを実現するのがプロジェクトマネジメントの面白さである。

このようなプロジェクトデザインはロジカルシンキングではできない。ロジカルシンキングでプロジェクトをデザインすると、確実に達成できる方法がある目標しか設定できない。言い換えると新しいことはできない。


◆目標の種類

この議論を目標の設定方法に焦点を当てて考えてみよう。

まず、目標の種類を抑えておく必要がある。よく使われるプロジェクト目標の区分に成果目標、行動目標という区分がある。いずれも設定した目標が達成できれば、プロジェクトの目的を実現し、プロジェクトを実施する意義を果たせる。

成果目標はプロジェクトとして達成すべき具体的な成果、行動目標はプロジェクトが具体的に取り組むべき行動の方向性を示している。

たとえば、商品開発のプロジェクトで考えてみよう。

目的:企業のブランド力向上

という目的に対して、例えば

成果目標:1万個売れる商品を開発する
行動目標:顧客の要望や問題を聞き出し、使いやすい商品をつくる

という設定をすることになる。


◆プロジェクトの性格と目標の種類

このように区分してみると、行動目標は論理的に妥当でなくてはならない。例えば、既存商品に顧客が満足しているなら、上のような行動目標を設定してもプロジェクトは成功しない(プロジェクト目的が果たせない)。むしろ、成果目標を設定することが望まれる。

逆に、既存商品の使い勝手の改善が目的だとすれば、上のような成果目標を設定しても何もできないだろう。行動目標を適切に設定すればプロジェクトはスムーズに進んでいくだろう。

このようにこれらの目標は一長一短で、成果目標ではブレークスルーが期待できる一方で、プロジェクトがとるべき行動がはっきりしないというデメリットがある。行動目標はプロジェクトのすべき行動を明確にできる一方で、イノベーションになるような新しいアイデアは生まれにくいというデメリットがある。


◆直観や主観による思考を活用する

このように、コンセプトから目的、目標を考える際には、そもそも、どのような性格の目標を設定すれば目的実現に貢献できるかをよく考える必要がある。

単純に考えれば、行動目標を考える際には論理性や客観性が重要である。しかし、成果目標の設定はロジックでは難しい。成果というのは、本質的にこういう成果をあげたいと考える主観的なものであり、過去にない成果を生み出せばどのように目的実現に貢献できるかは直観的なものである。ここに直観や主観による思考を活用したい。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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