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第51話:コンセプチュアルスキル診断からコンセプチュアルスキル向上を計画する(2019.08.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆コンセプチュアルスキル診断の概要とこれまでの結果

今回のコンセプチュアルスタイル考は、ちょっと趣向を変えてコンセプチュアルスキル診断という視点からコンセプチュアルスキルについて考えてみたいと思います。

PMstyleではコンセプチュアルスキルの診断のために、コンセプチュアルスキル診断を提供しています。

PMstyleコンセプチュアルスキル診断

昨年までで2300人くらいの方に実施して頂いています(今年の分をいれると3000人以上の方に実施していただいています)。

コンセプチュアルスキル診断は、PMstyleの「コンセプチュアル思考」に基づいてコンセプチュアルスキルを診断するシステムですが、結果は、

<軸による評価>コンセプチュアル思考の5軸のバランス
<行動に対する評価>5つのコンセプチュアルな行動の質

によって提示されます。


ちなみに、これまでの結果(平均点)は、それぞれに10点満点で

<軸による評価>
抽象的/具象的 のバランス 6.32
主観的/客観的 のバランス 6.38
直観的/論理的 のバランス 5.40
大局的/分析的 のバランス 6.90
長期的/短期的 のバランス 5.58

<行動に対する評価>
構想            5.50
計画            5.98
問題解決          5.72
意思決定          6.27
対人            7.12

となっています(現時点ではもう少し、平均点が下がっていると思われます)。


◆結果の振返り

このシステムを開発したときに、調整の目標として

全体の平均点  6.5
各項目の平均点 6.0以上

に設置して行い、最終的には50人のテストで達成できています。そこを比較すると、2,300人が実行した現状では、

全体の平均 6.12

で少し低くなっています。また、評価においては、軸による評価が

直観的/論理的 のバランス 5.40
長期的/短期的 のバランス 5.58

の2項目が低くなっています。さらに、行動に対する評価では

構想            5.50
計画            5.98
問題解決          5.72

の3項目が6.0のより低くなっています。

集合研修などの際にまとまった数の診断を同時に行うことがありますが、軸による評価はほぼ、この傾向が出てきます(高さは組織によって大きく違います)。

興味深いのは行動に対する評価は組織によって傾向が異なることです。全般では、対人が極端に高く、構想が低くなっています。これは、提供前の調整の時にすでに傾向としてはありましたので、ある程度予想できていましたが、1.5点以上の差が出てくることは予想しておりませんでした。

ところが、行動に対する評価の結果は組織によっては、構想が高く、対人が低いといったことが実際にあります。

さっと振り返ると以上のような感じになっていますが、今回の記事にしたいのは、コンセプチュアルスキル診断では何を見ているのかということです。軸による評価ですと5つありますが、平均点が高い軸と低い軸の間にある違いとして実施結果をみると
「低い軸では行き来がうまくできていない」

という違いがあります。


◆行き来するとはどういうことか

まず、行き来というのがどういうイメージなのか説明しておきたいと思います。よく言われるのは抽象と具象を行き来ですので、これを使って説明しましょう。この軸を使った思考活動は

「現実の現象を抽象化し、抽象的に思考(問題解決や意思決定)を行い、その結果を複数の具体的な事象や行動に落とし込む」

という活動で、これによって現象からは直接得にくい結論を得ることができます。例えば、ものごとの本質を考えるというのはまさにこういう思考をくり返し行うことになります。


◆抽象と具象の行き来の例

例えば、家を建てるにあたって仕事部屋を作りたいといっているAさん対して、デザイナーXさんが仕事部屋のデザインを図面にするためにAさんの要求を聞き出しています。

部屋に組み込みたい家具の場所やサイズ、置きたい家具の想定サイズと場所、必要なライトを聞き出しました。すると、壁一面ずつに備え付けの本棚、収納棚を作って欲しいことが分かりました。また、置きたい家具は自分のデスクと椅子、数名が打合せや作業できるテーブルと椅子、ホワイトボード、コピー、シュレッダーでした。また、照明は天井とデスク、テーブルの上に欲しいということになりました。

この例で、デザイナーのXさんはまず、抽象的な事象として組み込みたい家具、置きたい家具、必要なライトカテゴリーを考え、それをそれぞれ具体化する形でヒヤリングを進めていきます。つまり、抽象から具象に行っているわけです。

さて、ここでXさんはAさんの言っていることをすべて満たすには部屋の面積が足らないことに気づきます。もちろん、まだ、概念設計のタイミングですので、部屋の広さを見直すといった方策も考えられますが、家族もほかの部屋を狭くすることは受け入れそうにありません。かといって、Aさんに何かあきらめてほしいといってもうんとは言わないと感じています。

そこで、Xさんはカテゴリーを見直して、家具に注目するのをやめ、機能に注目し、個人の作業に必要な機能、仲間がやってきたときの共同作業に必要な機能、ライトの3つのカテゴリーにしました。

そして、Aさんの要求を見直し、個人の作業用の機能として、天井までの本棚、デスクとシュレッダーを組み込みんだ収納棚とし、共同作業のための機能としてPCを前提とした作業スペースとしてのテーブルとモニターの設置をし、コピーはデジタル化の推進のために置かないという提案をしました。

つまり、抽象を見直した上で、具体的な機能(家具)を考えていくという方法をとっています。いいかえると抽象から具象に行っているわけです。


◆コンセプチュアルスキルを高めるにはバランスをよくできること

このように抽象と具象の行き来をすることによって、バランスのよい答えを探すことができるのがコンセプチュアルスキルの高い人だという診断をしています。もちろん、これを抽象と具象の行き来だけではなく、他の4軸についても行うという思考モデルを立て、それのモデルに応じて診断でコンセプチュアルスキルの高さを評価しています。

現場ではよく具体的でなければ動けない、だから抽象的なことをいうなと言われます。余談になりますが、研修の際にできるだけこれを言ったことがあるか、言われたことがあるかと聞いているのですが、9割くらいはありだと答えます。

具体的でないと行動できないというのはその通りですが、具体的なアイデアを考えるために抽象化が不可欠だと考えています。

これは最近では当然のことだと考えている人が増えています。特に、VUCA時代には制約ばかりで、制約をクリアするためにモノを減らしたり、機能を減らしたりしてきましたが、もはや対応できなくなってきています。これを打開するためには、抽象的なレベルで考えを変え、視点を変えて、具体化してアイデアを出していくことが不可欠なのです。そして、バランスがよいところで答えにするのです。


◆バランスとは本質への近さ

基本的にはこのような行き来を5つの軸、すべてにおいてバランスよく行うことができることがコンセプチュアルスキルを高めることにつながっていきます。

では、バランスがよいとはどういうことでしょうか。それこそ、主観の問題だと思われるかもしれません。ある意味でその通りです。

ただし、そこには一つの概念が絡んできます。それが、コンセプチュアルスキルのキモである、「本質」なのです。バランスというのは基本的には本質との距離なのですが、ただ近いだけでは必ずしもバランスがよいとは言えません。

バランスをよくするには、本質の筋の良さが必要なのです。


次に、行動に対する評価の振返りもしてみたいと思いますが、長くなりましたので、次回にします。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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