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第35回 コンセプトを中核にプロジェクトを統合的にマネジメントする(2019.03.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


☆これまでの記事

第34回 統合マネジメント

(第34回から続く)

[ストーリー1]

第31回〜第33回では、要件定義のスケジュールが遅れていたため、SNSをどのように準備するか、つまり

・帆布製品の口コミSNSを実現する
・帆布製品のネット販売の仕組みを作る

の2つの目標を如何に達成するかをコンセプトを踏まえながら議論した。

第31回 トラブル発生

第32回 本質的な問題

第33回 トラブルに対して本質的な問題を見極め、対応する

ここで行った議論では販売システム構築するか、ショッピングモールを利用するかを検討し、ショッピングモールを利用するという結論を得て、それを前提に要件を整理し、なんとか要件定義を終え、自社モールの構築に入った。

構築はあらかじめ決められたフォーマットに従って、データや販売の仕組みを作るという作業だったが、やがて、商品の良さを十分に伝えられるような表現ができないという問題提起がデータ作成を担当しているメンバーから出てきた。

そこで、リーダーの藤田は、営業担当の芦田、管理部門の高野部長、コンサルタントの徳田に声をかけて対策を考えるミーティングを開催した。

藤田が

「ショッピングモールにしようと決めたことで、スケジュールの問題は解消し、コンテンツ作成にかかっていますが、モールのフォーマットに縛られているため、新たな問題としてアピールしたいことができないという悩みが出てきています。今日は、この状況を踏まえてこれからどのように進めていくかを話し合いたいと思って集まってもらいました。」

と切り出した。芦田が応える。

「私も同じことを感じています。ある商品のアピールをどう表現するかを相談されて一緒に考えたことがあるのですが、確かに難しいですね」

「あくまでも口コミで伝えていくことがメインなので、モールでの表現にはこだわらず、このままでいくという手もありだとは思うけど、皆さんどう思われますか」

と藤田。これに対して、高野部長は

「実際にコンテンツを作っているメンバーの上司は納得しているのですが、担当者レベルではかなり、不自由しているようです。このまま進めていってもあまりよいものができないような気がします」

と意見を述べた。芦田も高野部長に賛同する。しばらくみんなが押し黙っていたが、見かねた徳田が

「もう一度、コンセプトに戻ってみましょうか」

と口を開いた。

「まず、SNSによるネット販売の仕組みづくりの目標が出てきたのは、目的として「利用者が商品の良さを伝え、購入を促し、それを聞いた人が利用し、また別の人に推奨する好循環を起こす」と決めたからです。そしてその背景にあるコンセプトは

・口コミによって販売を促進できる仕組みをネットユーザー全員に提供する
・我々の商品の利用者が、利用したことがない人に商品の良さを伝える仕組みを提供する

の2つです。これから考えるとSNSにこだわる必要はなさそうです。ほかに口コミが生まれる方法と実行する仕組みがあればよいわけですね。ただ、一方で仕組みの自前の構築を前提にすると要件がまとまらないし、スケジュール的にも厳しいものがありますので選択肢は多くないっていう感じですね」

この整理を受けて藤田は、
「芦田さん、何かアイデアはありませんか」
と、問いかけた。

しばらく考え込んでいた芦田は

「そうですね、いっそのこと、口コミの機能と販売の機能の主従を変えてはどうでしょう。今はあくまでも販売が主体で、その支援のためにSNSを位置付けています。これだとどうやって売るかのイメージが人それぞれで、それが要件がまとまらない原因になっていたように思います。なので、まず、うちの商品についてと、いうよりバッグや小物について語り合うコミュニティを作り、そこからモールにアクセスするようにしてはどうでしょう。」

と発言した。藤田や高野部長はきょとんとしている。

「もう少し具体的にいうとどういうことでしょう」
と高野部長。

「思いつきなのでまだあまり具体的なアイデアがあるわけではないのですが、今は特定のバッグが中心にあってそれを使った人が口コミしてくれるイメージですよね。これを逆にして、一般のバックに対して話題提供をしてその話題の中で出てきたバックに該当する商品をモール上で購入するようなイメージですね」

「なるほど、でもどうやって商品との結び付けをするのですか」と高野部長。

「そうですね、我々が話題提供する際にある程度、想定しておく必要はありますが、基本的にはうちの商品を使ってくれているユーザが関連付けをしてほしいですね。将来的には話題提供もユーザがしてくれるといいですね」

と芦田。黙って聞いていた藤田が疑問を口にした。

「面白いアイデアだけど、鞄の担当者が顧客に伝えたいことを伝えられないという悩みの解消になるんだろうか」

「そうですね、今と同じように情報提供として伝えるのはムリですね。たとえば、担当者が話題提供とともにファシリテータを担当し、参加者から自分の言いたいことを引き出すというスタイルはどうでしょう。スキルが必要でしょうけど」

「確かに、それだとうまく行くかもしれないね。う〜ん、面白そうな気がしてきた。もう少し、具体化しようか。しかし、システム的にはコンテンツの直しは少し入るとしても、あまり大きな変更にはならないんじゃないかな。仕組みは全面的な変更になるけどね」

[ストーリー1 終わり]


このようにコンセプトに立ち戻り、現実を踏まえて、QCDSのどれかを守るのではなく、もう一度ゼロベースで目標を考えることにより、実行可能な計画に変えていくことができるわけです。

ここで重要なことは、実はこの変更は仕組みとしては大きな変更なのですが、システム的にはあまり大きな変更になっていないことです。そのため、システムのQCDSに関しては調整レベルで済みました。

このようにコンセプトに戻って考え直すときにも、現実を踏まえた一定の制約は必要で、制約の範囲で変えていくには、視点を変えることが重要なポイントになります。
その方法については、

●視点を変えるポイントは、

・注視点を変えたり、着眼点を変える
・判断基準や評価基準を変える
・自分の好き嫌いなどの態度を変える
・自分の価値観を変える

であり、詳細は、第33回の記事をご覧ください。

第33回 トラブルに対して本質的な問題を見極め、対応する

(続く)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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