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第33回 トラブルに対して本質的な問題を見極め、対応する
(第33回から続く)
本号からは、プロジェクトを如何に統合するかについて考えてみたいと思います。
最初に統合のイメージですが、PMBOK(R)の知識エリアにプロジェクト統合マネジメントというエリアがあります。プロジェクトマネジメントではQCDSのマネジメントを始め、さまざまマネジメントプロセスが必要ですが、統合マネジメントはこれらのマネジメントプロセスを相互に調整したうえでプロジェクトとしての目標の達成を図るものです。
言い換えれば、統合マネジメントはプロジェクトを動かすための基本的なマネジメントの流れの定義、つまり、プロジェクトを運営するための一連のマネジメントの流れで、PDCAサイクルそのものだといえます。
このようにPMBOK(R)の考え方では統合マネジメントは目標に対して、目標を達成するために行なうマネジメントが統合マネジメントです。目標は基本的にはスコープ、コスト、スケジュール、品質のべースラインです。これ以外にも要求や顧客満足などを目標にすることもあります。
コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントにおいてもこの点は変わりません。コンセプトから目的、目的から目標に落とし込んでいるわけですので、まず中心に置くのは目標です。すべてのマネジメントは目標を達成するために行われます。
ただし、ここで重要なことは目標はあくまでも目的やコンセプトの実現方法の一つに過ぎないということです。つまり、マネジメントは何がなんでも目標を達成することが目的ではなく、あくまでもプロジェクトの目的を実現すること、あるいはコンセプトを実現することが目的だという意識でプロジェクトを進めていきます。この点は、すでに第31回〜第33回の問題解決においても示していますが、本号からは、コンセプトを実現するために、どのようにマネジメントを統合していくかを考えてみたいと思います。
まず、統合マネジメントのイメージを説明しておきたいと思います。たとえば、要員の確保がうまく行かずにスケジュールの遅れが生じた場合を考えてみましょう。この場合、問題解決の方向性として、次の方向が考えられます。
(0)生産性を向上し、スケジュール、コスト、品質、スコープと共に守る
(1)スケジュール遅れを容認し、コスト、品質、スコープは守る
(2)コストの追加投入をし、コストオーバーを容認し、スケジュール、品質、スコープを守る
(3)スコープ削減をし、スケジュール、コスト、品眞を守る
(4)品質を下げ、スコープ、スケジュール、コストを守る
┌───┬──────┬──────┬──────┬──────┐
│ │ スコープ │ コスト │スケジュール│ 品質 │
├───┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│(0)│ 〇 │ 〇 │ 〇 │ 〇 │
├───┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│(1)│ 〇 │ 〇 │ × │ 〇 │
├───┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│(2)│ 〇 │ × │ 〇 │ 〇 │
├───┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│(3)│ × │ 〇 │ 〇 │ 〇 │
├───┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│(4)│ 〇 │ 〇 │ 〇 │ × │
└───┴──────┴──────┴──────┴──────┘
ITのプロジェクトでは、多くの場合、(1)か(2)の戦略を取り、それでも解決しない場合には(3)も考えることが多いようですが、(4)はめったなことがないと取りません。これは、良いかどうかは別にして品質マネジメントに特別な位置づけがあり、プロジェクトとは独立した取り組みがされていることが多いためです。
そしてベースライン以外のマネジメントもここに統合されます。その際の方針としては、本来はプロジェクトの目的の実現をできるだけ行うにはどうすればよいかを考えるべきですが、現実には目標が達成できない悪い影響をできるだけ小さくするにはどうすればよいかを考えることが多いように思います。
(0)の生産性の向上ですと、生産性の見直しでコストとスケジュールのマネジメントを行う必要があり、また、その結果によっては人的資源のマネジメントをする必要がありますが、そのためにステークホルダーのマネジメントやコミュニケーションのマネジメントが必要になってきます。場合によっては調達のマネジメントが必要になるかもしれません。これらのマネジメントを統合することによって初めて生産性の向上が可能になります。
(1)の場合ですと、ステークホルダーに対してスケジュールが遅れることの合意を得るコミュニケーション、スケジュールが延びた分の要員調達などが必要になります。つまり、ステークホルダーマネジメントやコミュニケーションマネジメント、人的資源マネジメントを行う必要があります。
さて、ではコンセプチュアルなプロジェクトマネジメントであればどうでしょう?
(0)の生産性を向上させるというアプローチは全く同じです。しかし、(1)〜(4)のように何らかのベースラインを変更して、対応する場合、単に達成できない目標の影響をできるだけ小さくするというのではなく、コンセプトを実現するにはどうすればよいかを考えるわけです。
そのため、(1)〜(4)を同時に行うようなアプローチになることが多くなります。以下のストーリーをお読みください。
(続く)
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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