◆プロジェクトリクエスト
PMBOK(R)の立上げプロセスでは、プロジェクト憲章を作成する。
プロジェクト憲章では、プロジェクト・マネジャーを任命し、プロジェクト活動に必要な資源についての権限を与えている。
そもそもプロジェクトは以下の事項が誘引となり、フィージビリティ・スタディ(実現可能性)、利益評価などを検討した結果として、発足するものである。
・市場の要求
・ビジネス・ニーズ
・顧客要求
・技術の進歩
・法的要求
・社会的ニーズ
そして、プロジェクトの立上げプロセスでプロジェクト憲章を作成し、プロジェクトを公式に認可するが、発行は、プロジェクトに資金提供を行うプロジェクト・スポンサーが行い、作成は通常、プロジェクト・マネジャーが行っている。
PMBOK(R)では、プロジェクト憲章作成プロセスのインプットは、
・契約(該当する場合)
・プロジェクト作業範囲記述書
・組織体の環境要因
・組織のプロセス資産
としているが、これらは、組織から与えられる情報である。
が、それらは文書としてまとめられていることはそれほど多くはない。
そこで、プロジェクトリクエストという文書で、立ち上げプロセスに必要な情報をまとめておくことを提案する。プロジェクトリクエストに記載する内容に不明な点があれば、プロジェクト・スポンサーに確認や相談をすることで、プロジェクト憲章からあいまい性をなくし、濃密な内容にすることができる。
プロジェクトリクエストを作成することで、組織が考えているプロジェクト像の理解を深めることができる。
組織からのプロジェクトへの課題を解決するために、プロジェクトをどのように進めていくかをプロジェクト憲章に盛り込むことができる。
プロジェクトリクエストに書く項目は、
○ビジネス情報
・ビジネス領域
・ビジネスニーズ
・プロジェクトの戦略上の位置づけ
・顧客
○プロジェクト概要
・目的
・プロジェクトスコープ
・希望納期
・概算予算と希望損益
○プロジェクト情報
・前提条件
・課題
・リスク
・判断基準や成功基準
であり、プロジェクト憲章と項目としては重複しているものが多いが、異なる点は組織(プロジェクトスポンサー)の立場からプロジェクトについて考えていることをまとめるということである。
ビジネス情報では、プロジェクトが組織においどのような位置にあるのかということを記載している。
プロジェクト概要では、プロジェクトの目的や成果物を定義し、プロジェクト情報では、プロジェクトを実施する上での、組織の考えを示している。前提条件は、組織としてプロジェクトに提供する資源などを示し、このプロジェクトで解決すべき課題が何かということ、この段階で組織が考えているリスクは何かということ、それから、優先順位や優先すべきことなどの判断基準と組織がプロジェクト成功と考える成功基準などを記載する。
プロジェクト憲章はプロジェクト計画、プロジェクト実行の指針となるものであり、また、チームの指針としても重要な文書であり、そのためにプロジェクトリクエストを作成することを提案する。
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鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
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