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第13回 リテンション(2) (2009.04.07)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木 道代


◆リテンション(Retention)(2)

前回は、退職を希望する社員の不満足要因が何なのかを把握して、取り除くことで離職率を下げようという試みがリテンションであることを述べました。

それでは、不満があることやメンバーの思いを知るためには、どのようにしたら良いかということですが、それには次の3つの方法があります。

1.社員満足度調査
2.インタビュー調査
3.退職時面接

1.社員満足度調査は、無記名で行うアンケートで、

・自分の報酬は十分だと思いますか
・同僚は協力して仕事を行っていますか
・上司はあなたの育成に熱心ですか
・職場では多様な見方を尊重する雰囲気ですか
・上司は会社の情報を開示していますか

などを質問し、改善点の情報を見つけ、対策を打つことによって働きやすい職場にするための調査です。

人数が少ない場合(10人以下)は、無記名でも誰が書いたかがわかってしまいますので、どちらかと言いますと不向きの方法です。

また、満足度調査を実施しますと、結果に対するアクションへの期待が高まりますので、対策を何も講じないでいますと、より士気が下がってしまいます。
なぜアンケートをしたかという不信感だけが高くなりますので、アンケートを実施しないほうがましということになります。

したがって、満足度調査は、指摘されたことに対する何らかの対策を必ず実施することが重要です。

2.インタビュー調査は面接形式で、意見を聞く方法です。
人数が少ない場合は、1対1で行い、人数が多い場合はグループでディスカッションを行いますが、全員対象のアンケートの補完として、代表者を選んで行う場合が多いようです。

重要なことは事前に質問の項目を決めておいて、全員に同じ質問を行うことです。そのことにより、収集した情報で分析や比較が作成しやすくなるからです。

ステークホルダーを分析し、要望をスコープに取り入れるツールとして、顧客ロードマップというツールがありますが、その中には次の3つのツールが含まれています。

・重点課題記述書:顧客のヒアリングによる調査で何をいつまでに誰がするかを記述・標本選択:誰にヒアリングするかを決定
・討議ガイド:質問項目とスクリプト(話し言葉そのもの)を決定

したがって、上記は、誰がヒアリングを行っても、同じ質問ができるように決めておくためのツールです。

同様に、インタビュー調査でも、討議ガイドのように、事前に質問項目を決めておき、全員に同じ質問を行うことで、収集した情報による分析や比較が作成しやすくなります。

3.退職時面接は、退職者から情報を引き出すための面接であり、退職を引き止める
ための面接ではありません。
退職時には、割と本音を言う方が多く、職場改善のための示唆が得られると事もあるようです。
面接時に聞くことは、自社での経験に関することでよかったこととよくなかったこと、なぜ退職するかの2点です。

また、この退職時面接を、異動時にも行うことで職場の改善、上司のマネジメント力の改善を図ることができます。

・部下が異動するときの質問例
「この部署で働いて、よかったこと、いやなこと、改善すべきことはなんですか」
・上司が異動するときの質問例
「私のやり方で評価できる点、改善すべき点は何ですか」

など、部署異動を一区切りとして、仕事のやり方を振り返ってみるいい機会と考えて、部下と話し合ってみるという方法です。

以上のリテンションの手法をプロジェクトマネジメントで考えますと、

1.社員満足度調査は、プロジェクト監査時に行われることが多いようです。
2.インタビュー調査は、インタビューという言葉は使われませんが、週に1度は昼食を一緒にとることや1日に1度は声をかけることなどで行っているプロジェクトマネジャーが多いようです。

また、3.退職時面接を、プロジェクト終結時の振り返りのミーティングなどに応用することで、次回のための改善点を分析できるのではないでしょうか


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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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