第21回 なんでそんな色にしてるのかなあ(2019.05.14)
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◆質問力
ある研修カリキュラムの中で、要件定義を扱っている部分で、質問力を取り上げているセッションがあります。要件定義においては、顧客へのヒアリングを行うことが多く、ヒアリングには質問力が欠かせないからです。
ヒアリングではこちらから要件定義のために必要な質問をして、その回答から要件をまとめ、要件から仕様書を作成し、仕様書を承認してもらうという流れで進めていくことから、質問がどれだけ顧客の本質要求(本当に求めている要求、顧客が気づいていないかもしれない要求)を引き出せるかがポイントとなります。
そのため、顧客に本気で質問に対して考えてもらうことや結果として気づきを与える質問が必須となっています。
そのような顧客を動かす質問はパワークエスチョンと呼ばれ、パワークエスチョンは次の3つの要素から質問を作成します。
目的:相手にしてほしいこと
質問:訊きたいこと
感情:目的が達成されたときの気持ち
つまり、何のために、何を聞いているのか、その時自分はどう感じるのかを質問の中に含めるのです。
そして、この3つの要素の中で最も重要なものは、感情であり、自分の感情を相手に話すことでで相手を動かすのです。
質問力については、こちらのコラムもご参照ください。
イノベーション・リーダーシップ
第18話 イノベーティブリーダーの質問力(1)
◆フィードバック
また、部下などを指導するツールとしてフィードバックという手法があります。フィードバックには、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックがありますが、どちらも次のステップで進めます。
1.良い(良くない)行動を指摘する:
行動を具体的に、できるだけ詳細に指摘する
2.望ましい(望ましくない)行動の良い(良くない)結果を知らせる:
具体的に結果を知らせて、達成感(残念感)を感じてもらう
3.良い(良くない)行動とその結果について、どう感じたかを知らせる:
相手の行動とその結果に対して、自分がどう思ったかを知らせる
4.今後どんな行動をとってほしいか知らせる:
行動とその結果についてインパクトを与え、これからのとってほしい行動を知らせる
フィードバックは、相手の考え方や信条について、指摘して変えさせるという指導法ではなく、とった行動とその結果について指摘し、これからとってほしい行動を知らせる指導法です。ここでも、ポイントは、3.の自分の感情を相手に伝えるところであり、それが相手の心に響くことで、相手を動かすことができるのです。
フィードバックについては、こちらのコラムもご参照ください。
PMの道具箱 第14回 ポジティブ・フィードバック
◆なんでそんな色にしてるのかなあ
その要件定義の研修では、グループワークで、質問の中に感情を含めることで、相手を動かした、もしくは相手に動かされた経験を話し合ってもらっています。
その中で、ある受講者の方が、
「自分は学生時代、黄色がかった茶髪にしていて、ある日、ゼミの教授から、しみじみと、なんでそんな色にしているのかなあ、本当に分からないなあ、とつぶやかれた。」
「特に主張があって、その色にしていたわけではないので、すぐに理容院に行って、黒髪にした。教授のつぶやきが自分の心にしみた。」
と話されていました。
質問ではないのですが、疑問を心を込めて話すことで、相手の心に響いたことになります。その教授は、受講者の方の髪の色を変えてやろうとしたわけでもなく、疑問を感情を込めて話しただけなのです。がみがみと指導するのではなく、感情を伝えただけで相手を動かしたことになります。
論理的に会話を進めるということだけではなく、自分の感情も含めて会話を進めるということも考えてみませんか。
そのことで相手を動かし、相手の協力を得て、会話をスムーズな方向に進めることができるのではないでしょうか。
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・(演習3)カレンシーを考える
4.概念的に考えて具体的に行動する
・コンセプチュアルスキルとは
・本質を見極める
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5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介
鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
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