第14回 ステークホルダーマネジメントがなぜ、難しいのか(2017.12.19)
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◆ステークホルダーマネジメントがなぜ、難しいのか
前回は、プロジェクトとステークホルダーマネジメントについて、10のポイントについて述べました。
ステークホルダーマネジメント
第13回 プロジェクトとステークホルダーマネジメント
本号では、ステークホルダーマネジメントがなぜ、難しいのかを、次の6つの質問にて、考えてみましょう。
1.母体組織とプロジェクト組織に共通する利益がない場合、どちらの要求を満たすのか?
プロジェクトに対して、関心がない場合にステークホルダーはどのような振る舞いをするのでしょうか。関心の多くは、プロジェクトの成果物と母体組織における権限についてです。
それらについて、ステークホルダーがプロジェクトに対してどのような対応するのかまた、母体組織とプロジェクトが相反する要求、例えば、プロジェクトが予算追加を要求し、母体組織が予算縮小を要求した場合、そのステークホルダーは、どちらの要求を満足させるのでしょうか。
当然ながら、母体組織を優先するはずですので、プロジェクト組織の要求を検討してもらうために、ステークホルダーからエンゲージメントを獲得することが重要になってきます。
エンゲージメントマネジメントについては、下記のコラムをご覧ください。
PMの道具箱 第65回 コミュニケーションログとエンゲージメントマネジメント
2.母体組織からの要求と、母体組織の利害と相反するが、倫理的に正しい要求がステークホルダーから出された場合、どちらを満たすのか?
プロジェクトには目的がありますので、その目的に沿っているかどうかにて、判断します。ただ、ステークホルダーには強い弱いがありますので、弱い方のステークホルダーの要求が目的に沿っている場合は、難しいですね。
そのためには、なぜその要求を出すのかを考慮し、母体組織の要求と本当に利害が相反するのかを突き止めることも重要であり、どちらを満たすのか、よりもプロジェクトの目的に沿った本質的な要求が何かをステークホルダーと協議することが必要になってきます。
3.ステークホルダー間の矛盾した利害関係をどうするのか?
ステークホルダーにはそれぞれの立場があり、それぞれの要求、関心事があります。例えば、経理部門では、経費についてなるべく安くを要求しますが、品質部門では、費用をかけてでも品質第一をモットーとしています。プロジェクトにおいて、これらの矛盾している関心事に対し、どのように対応するのか、どのように調整するのかが重要になってきます。
定常業務であれば、そこの折り合いをつけ、最も効率的に運用しているはずですが、プロジェクトは非定常業務かつ独自性のある業務です。そのため、プロジェクトの目的からブレークダウンした目標に対して、それぞれのステークホルダーからの合意を得ることで、その矛盾を解消します。
4.短期的な最適化と将来的に見込まれる成果とどちらかをとるか?
ステークホルダーによっては、短期的なベネフィットを期待する場合と長期的なベネフィットを期待する場合があります。例えば、新製品の開発の場合、開発コストをコストダウンし、製品におけるプロジェクトコスト分を減らすことで利益向上を期待する場合と、新製品のブランドイメージを上げることで、ラインナップ全体の売上向上を目指す場合です。両者では、プロジェクトに求めるものが異なってきますので、ステークホルダーの要求に対するトレードオフを調整する必要があります。ここでも、プロジェクト目的に各ステークホルダーの合意が重要であり、そのどちらかなのかを目的の中で明確にしておきます。
5.計画的な行動と利他的なコンタクトとどちらが良いのか?
利他的とは、自己的とは正反対の意味で、自分を犠牲にしてでも相手を大事にするということです。相手の要求をすべて呑むということではありません。
ステークホルダーに対して計画的に行動するのか、とにかく相手のことを第一に考えるのか、どちらの行動をとるのかということです。ステークホルダーマネジメント計画を作成し、プロジェクトチームとして一貫した行動を取ることはもちろん、重要です。
ですが、ステークホルダーとの信頼関係、WinWinの関係を構築するためには、まず、相手の立場を考えることが重要であり、論理よりも感情の方が相手を動かすことが多いですので、ステークホルダーとは共感できるような関係を築くことが第一です。
下記のコラムもご参照ください。
PMの道具箱
第83回 ステークホルダーバランスシート:ステークホルダーとの関係性構築
6.ステークホルダー自身のステークホルダーに対して非倫理的な振る舞いをするステークホルダーとの関係を維持するかどうか?
誰にもあまり付き合いたくないステークホルダーの一人や二人はいることでしょう。例えば、その人が、部下へのパワハラをしているような人であれば、なおさらです。だけど、その人からの協力がないとプロジェクトを進めることができないとすると、どうでしょうか。
プロジェクトマネジャーであれば、プロジェクトを優先するほかありませんので、そこは悩むとこですね。何とか、そのステークホルダーとの共通点を探し、信頼関係を構築していきましょう。
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2.ステークホルダーの特定・プロジェクトのパラメータ
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3.影響力の法則(R)
・(演習3)カレンシーを考える
4.概念的に考えて具体的に行動する
・コンセプチュアルスキルとは
・本質を見極める
・洞察力を高める
5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介
鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
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