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第12回 第10の現場力〜目的整合力(2008.05.02)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトが「うまく」いくとは

この連載は、「現場力」をテーマとしているのだが、ずっと、プロジェクトマネジャーの現場力について議論してきた。

プロジェクトマネジャーの現場力というと、プロジェクトをなんとかうまくやるための能力であることは間違いないが、問題は「うまく」、あるいは「成功」という言葉の意味するところである。これは、プロジェクトの目的を達成すること以外には考えられない。

つまり、現場力とはプロジェクトの目的を達成するために必要な能力だと考えることができる。


◆プロジェクトの目的は一つではない

ここで原点に戻って考えなくてはならないのは、ひとつのプロジェクトを巡っては、プロジェクトマネジャーやプロジェクトメンバーも含めて、複数の主要ステークホルダが存在し、それぞれのステークホルダが個別の目的を持っていることである。

よくプロジェクトの目的を定義にするとか、ベクトルを一致させるとかいうが、これはプロジェクト関係者の目的そのものを一致させることではない。この点を多くの人が勘違いをしている。冷静に考えてみればすぐに分かる。たとえば、プロジェクトオーナーとプロジェクトが同じ目的を持ってプロジェクトを実施していると考えれば不気味である。あるいは、プロジェクトと顧客が同じ目的でプロジェクトを実施したとすれば、ビジネスにはならない。

目的を定義にするとは、それぞれの「目的の整合性」を取ることであり、整合したプロジェクト方針を作ることに他ならない。


◆整合するための行動例

たとえば、こんな例を考えればすぐに分かる。SIプロジェクトの例だ。

(プロジェクト):面白い仕事をし、、システム構築スキルを向上する
(上位組織):収益を上げるととにも、将来利益を最大化するような顧客との関係を作る
(顧客):自分たちがやりたいビジネスの戦略を実行できるような情報システムを手にいれる。

この3つを整合させるにはどうすればよいだろうか?そんなにたくさんの答えはないと思うが、その一つは以下のような答えだろう。

プロジェクトが顧客の戦略やビジネスをきちんと理解し、それを予算内で実現でき、自分たちの開発動機を高めることのできるシステムを構想すること

これを方針としてプロジェクトを進めるプラニングができれば、目的が定義されたと考えてよい。そんな理想論を言ってみても仕方ないと思う人も少なくないと思うが、理想論ではない。これがこのプロジェクトで達成すべき「あるべき姿」なのだ。言い換えると、これができて、このプロジェクトは目的を達成できたと考えることができる。

このプロジェクトというか、ビジネスの主人公はいうまでもなくプロジェクトである。したがって、プロジェクトは目的を達成するために、この難しい問題を解かなくてはならない。


◆目的と整合はダイナミックに行うべき

ただし、ここで重要なことは、整合させる答えがあらかじめあると考えないことだ。極論すれば、顧客の戦略を実現できるシステムというのは形の上では作れるが、実現できるかどうかは、結果にすぎない。つまり、この答えは、プロジェクトと顧客が対話をしながら作っていく類のものなのだ。

同時に、プロジェクト自身が自分たちと対話をすることも必要だ。多くのエンジニアが「面白い」、「やりがいがある」と感じるのは経験に基づく仕事である。つまり、経験の中で、こんなシステムを作ってみたいとか、こんな技術を適用してみたいとかいったことの根拠は経験である。したがって、まったく経験がないことを面白いとは感じないだろう。あるいは、経験上、面白いと思えないことは、面白くないと判断するだろう。

しかし、仕事のおもしろさというのはそんな単純なものではない。そこで、自らとの対話で、自らの目的と整合できるような答えを見つけることも重要になる。

これが目的を定義にするというマネジメントの仕事であり、これを可能にする能力が現場力なのだ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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