第192話:コンセプチュアルな人々(15)ストーリー(2026/07/12)
◆振返り講座
PMstyleでは、『振返り講座』(現在は、『プロジェクト知識マネジメント~質の高い振返りでプロジェクトを変える』)を2013年から開催しています。当初は、7時間の講座でしたが、現在はPMO講座として3.5時間にて開催しています。
講座では、プロジェクト、個人、組織の振返りの概要とそれぞれのレベルに適したツールを解説し、演習にて体験いただいています。
まず、経験学習モデル、SECI(セキ)モデル、ダブルループの振返りには欠かせない理論についてご紹介していますが、どれも、抽象化とか、概念化という話が出てきます。ダブルループは、単に外側にもう一個ぐるりと回るループがありますよ、という話なのですが、経験学習モデル、SECIモデルは、具体的に経験したことを抽象化・概念化する、暗黙知を形式知化しましょうというモデルです。
モデル自体が、複雑な事象を本質を捉え、単純化・簡素化してわかりやすくしたものですので、まず、ここでコンセプチュアルスキルが必要になってきます。
著者は、理系で、物理や化学、数学は得意だったのですが、物理の法則で、一つだけ、難しくて理解できないものがあり、時間もなかったため(試験が明日)、まる覚えで対処したことが高校時代にありました。
何の法則かは忘れたのですが、その法則だけは、まる覚えしたため、忘れてしまうと、次の試験などでは、全く手が出せませんでした。理屈を理解して公式などを覚えた法則は、公式を忘れてしまっても、その理屈を覚えていますので、公式を自分で作る(おこがましいのですが)ことができ、問題を解くことができました。
これと同じことなんですね。本質を捉えてモデル化できるかどうかが、ポイントです。数学的帰納法の、1がこうだから、2がこうだから、nはこうなります、ということもモデル化と同じことだなあ、と今、考えています。これも洞察だなあ、とも思っています。
SECIモデルは、共同化(暗黙知の共有)、表出化(暗黙知を形式知化)、結合化(形式知を組み合わせる)、内面化(形式知を実践して暗黙知を得る)の4ステップがあり、少し複雑なモデルですので、経験学習モデルを実際には使用することが多いようです。
◆振返りのレベルと手法
講座では、プロジェクトの振り返りとして、PDCA、ポストプロジェクトレビュー、KPTなどのツールを紹介していますが、その振り返りは誰がするのか、と言うと、プロジェクトマネジャーやメンバーが行います、つまり、個人がプロジェクトで感じたことを共有しているのです。
すると、振り返りの土台は、個人、ということになりますが、講座では、個人の振り返りである内省についても紹介しています。
内省できるかどうかが、振返りできるかどうかとイコールです。内省は、まず、何を感じたのか、何を思ったのかがスタートです。それがないと、内省できません。振返りできません。
ある企業である期間、コンセプチュアルスキル向上のために、研修後に月に1回グループミーティングを行ったことがありますが、全員が発表し、全員が質問する流れで進めています。質問は、コメント、感想でもOKにしていました。最初は「素晴らしいです」としか言わなかった方が、
「このポイントが素晴らしくて、自分もマネしたいと思いました」
「この行動はなぜしたのですか?」
「これは、〇〇のことを追加で考えた方がいいと思います」
と質問が変遷していきました。内省が深まっているのです。当然のことながら、その方のコンセプチュアルスキル診断結果は大きく向上していきました。
そして、組織レベルの振り返りでは、教訓(レッスンズラーンド)の作り方、ストーリーの作り方を紹介しています。
教訓は、ナレッジ(知識)マネジメントそのものであり、教訓を簡潔な言葉で表し、ポイントだけを強調できるので、形式知を共有するのに適しています。が、細かいところや背景などが伝わりにくいです。反して、ストーリーは、教訓を文章で表現します。作るのは大変ですが、前後関係も含めて伝わるので、暗黙知を共有するのに適しています。
ストーリーには、訴えたい訴求点があり、それを文章で伝えますが、出だしの言葉(掴みの言葉)、話材の語り、概念化、キメの言葉の4つのパートから成り立っています。
漫才や講演のように、掴みで相手を聞く気にさせ、最後でバシッと決めれば、印象に残ります。内容は具体的な経験を背景も含めて語り、その中から、概念化した訴えたいことを伝えます。伝えたいことは概念化した教訓ですが、それをわかりやすくするために、具体的な経験を語るわけです。その中には、身近に感じてもらうために、自分の感情、思ったことも含めた方がいい場合が多く、それが、概念化に活かされてきます。その感情を共感できる方が多ければ多いほど、概念化した内容は、ストーリーを読んだ人の心に残るはずです。
◆ストーリーの例
訴求点:顧客の表面的な要求に振り回されず、顧客の真の要求を考える習慣をつけてほしい
みなさんは私が今年度のキックオフミーティングで言った「徹底的に顧客に尽くせ」という意味を十分に理解して戴いているでしょうか?
最近、我が家では子供も全員独立したのを機に、自宅の洋館を修理することにしました。そこで、妻の知り合いのリフォーム業者にきてもらい、いろいろと相談しました。その中で、妻はまず、外壁を元の色である白に塗り替えることを要望しました。ずいぶん汚れているからです。しかし、業者はこの言葉をそのまま聞き入れることはありませんでした。元々の白だという妻に対して、「なぜ、白に塗るのですか」などと聞いていき、「汚れを目立たなくしたいということですね、じゃあ、白は止めて、ベージュにした方が他とのバランスもとれていいと思いますよ」と提案してくれました。妻は受け入れ、出来上りに感動し、非常に感謝しました。私はこの様子を見ていて、これだけ考えてくれるのだと感動しました。
顧客に尽くすという意味は難しいものがあります。顧客という言葉を巡っては、お客様の立場で考えるとか、お客様のためになることをするとか、いろいろな考えがありますが、まず、最初に考えるべきことは顧客が自分たちがやりたいことを知っているとは思わないことです。お客様は自分がこうなるといいということは分かっていても、どうすればそうなれるかわからないのが普通ですし、場合によっては自分たちが競争に勝つにはどうすればいいかすら分かっていないケースもあります。
そのような場合、顧客に何をしたいですか、何が欲しいですかといくら聞いても答えは返ってこず、混乱するだけです。そのようなときに、マネジャーは現場リーダーに対して、要求の本質を考えることをアドバイスし、また、一緒になって考えてあげてください。そのためには、顧客について徹底的に知る必要があります。そこについても自分の持っている情報やスキルを惜しみなく提供し、協力をしてあげてください。
そうして、初めて「徹底的に顧客に尽くす」ことが可能になります。
「顧客に尽くす」というのは、顧客のいうことを聞き入れることと100%合致するものではありませんし、場合によっては180度違うようなケースもあります。つまり、今回のように顧客の要求を聞き入れば入れるほど、顧客の望みと離れた方向にいくことがあります。そこを肝に銘じ、顧客のためとは何かを常に考える習慣をつけてください。
◆ストーリー化の演習
『プロジェクト知識マネジメント~質の高い振返りでプロジェクトを変える』では、ストーリーを作成していただく演習を行っていますが、『コンセプチュアル思考を活用したコミュニケーションの考え方と実践』講座でも演習を行っています。時間が限られていますので、完成形まで作成はできませんが、ご受講いただいた皆様は、やはり、思い出深い経験があり、それを嬉々として、ストーリーを作成していただいています。
体験したことの中から、何かを感じ、概念化し、自分の業務に活かそうと考える人、ストーリーを作れる人、もちろん、内省できる人、振り返りできるは、コンセプチュアルな人々です。
◆関連セミナー
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアル思考のポイントと活用~VUCA時代の思考法 ◆7PDU's
日時・場所:【Zoom】2026年 10月 30日(金)9:30-17:30(9:20入室可)
【Zoomハーフ】2026年 11月 11日(水)13:00-17:00+3時間
【Zoomナイト】2026年 10月 14日(水)16日(金) 19:00-21:00+3時間
※Zoomによるオンライン開催です
※ナイトセミナーは、2日間です
※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります
※少人数、双方向にて、個人ワーク、ディスカッションを行います
講師:鈴木道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_thinking.htm
主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる」
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【カリキュラム】
1.コンセプチュアル思考のイメージ(アイスブレーク、講義)
2.コンセプチュアル思考を実践してみる(個人ワーク)
3.コンセプチュアル思考の原理を学ぶ(ワークの振返り、講義)
4.コンセプチュアル思考の実際(講義)
5.コンセプチュアル思考で変化に対応する
(個人ワーク、グループディスカッション)
6.コンセプチュアル思考で不確実性に対応する
(個人ワーク、グループディスカッション)
7.コンセプチュアル思考を応用した活動(まとめ)
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入門編はこちらです。
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◆コンセプチュアルスキル入門~本質を見極め、行動するスキル ◆(7PDU's)
日時・場所:【Zoom】2026年 10月 23日(金) 9:30-17:30(9:20入室可)
【Zoomハーフ】2026年 11月 04日(水)13:00-17:00+3時間
【Zoomナイト】2026年 12月 02日(水),04日(金) 19:00-21:00+3時間
※Zoomによるオンライン開催です
※ナイトセミナーは、2日間です
※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります。
※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
講師:鈴木道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_skill.htm
主催:プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる」
「プロジェクトマネジャーのためのシステム思考」
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【カリキュラム】
1.コンセプチュアルスキルとは
2.本質を見極める
3.洞察力を高める
4.応用力を高める
5.コンセプチュアルスキルでこれからの行動が変わる~ケーススタディ
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著者紹介
鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得
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