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PMOの機能であるプロジェクト運営技術支援としてのプロジェクトリカバリーへの関与。リカバリーとはプロジェクトの再建である。

第7回 プロジェクト運営技術支援〜プロジェクトリカバリー(1)(2005.01.04)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆リカバリーとはプロジェクトの再建である


前回まではプロジェクトの計画作業に対するPMOの支援の進め方について説明した。今回からはプロジェクトリカバリーへの関与について説明をする。

まず、最初にプロジェクトリカバリーとは何かということを整理しておきたい。IT業界ではよく「火消し」という言葉を使う。「火を噴いた」プロジェクトを消火するという比喩である。

 プロジェクトリカバリー=火消し

という理解をしている人が多いが、必ずしも正しくない。当事者にとってはこの方程式の是非は微妙なところであるが、少なくとも、PMOやプロジェクトの母体組織がプロジェクトリカバリーを考える際にはこのように考えない方がよいだろう。

プロジェクトリカバリーというのは単なる目先の問題解決のプロセスではない。火事の比喩で言えば、山火事の消火プロセスに似ている。もちろん、燃えているところの消火が最重要課題なのだが、同時に、延焼を防ぐことも最重要課題になる。そのためには、消火活動より、延焼の防止対策を優先する場合もある。

リカバリーのひとつのキーワードは「ターン・アラウンド」である。これはプロジェクトリカバリーという作業の認識の問題でもあるが、リカバリーというのは失敗プロジェクトの被害を最小限に食い止めるための活動である。そこにはリカバリーとしての成否はあるが、プロジェクトとしての成功はない。つまり、再建なのだ。

リカバリーとリスクマネジメントの中のコンティンジェンシーを混乱している人が時々いるが、これは誤りである。例えば、スケジュールが相当遅れてきてこのままでは大変なことになるというときに、まだ、当初計画通りに完了するために建て直しをするというのはこれはリスクマネジメントの範囲である。

リカバリーというのは用意周到なリスク計画を作ってプロジェクトを進めたにもかかわらずプロジェクトは失敗した。そこで行う活動がリカバリーである。コンティンジェンシープランはプロジェクトの成功を目指して行われるものであり、計画変更に過ぎない。

リカバリーとは、計画が機能しなくなった際の対処である。もちろん、すばらしいリカバリーによって、100%プロジェクト目的を達成できることもあるかもしれない。が、それは結果に過ぎない。本質はターン・アラウンドであり、如何にロスを小さくするかにある。

例えば、商品開発のプロジェクトがあったとしよう。予定が遅れている。当然、市場投入が遅れる。これに伴い、競合にシェアを奪われる可能性がある。このような状況では、「当初計画にできるだけ近い線でいけるように最善を尽くします」ではすまないのだ。もちろん、それも解決策(ゴール)設定のひとつかもしれないが、プロジェクトの承認をした根拠そのものが失われていることを前提にして、もう一度、今の状況で何を達成できればよいかを考え直す必要がある。その中には、プロジェクトを縮小して、プロジェクト期間をさらに伸ばすという選択肢もあるだろう。

まず、この点をはっきりさせておく必要がある。

◆プロジェクトのリカバリープロセス


プロジェクトマネジメントプロセスとプロジェクトプロセス(プロジェクト作業)がまったく別物でありながら、相互に影響を与えながらプロジェクトが進んでいく。これと同じようにプロジェクトマネジメントプロセスと、リカバリープロセスは別物である。つまり、プロジェクトリカバリーはあらかじめ計画されたプロジェクト作業とは別の作業である。ここを理解していないリカバリー活動は必ずといってよいくらい失敗する。すでにプロジェクトとしては失敗しているにもかかわらず、プロジェクトの軌道修正にだけ、関心が行くからだ。

一般的なプロジェクトリカバリーのプロセスは、
 1)プロジェクトの状況を把握し
 2)ゴールを設定しなおし、
 3)そのゴールに到達するための方策を考え、
 4)その方策を実現するための計画を作り、
 5)計画を実行する

というものである。トラブルプロジェクトのプロジェクトマネージャー自身がリカバリーを行う場合には2)がうまくいかないことが多い。理由はリカバリーを単なる計画変更として捉え、スケジュールのコントロール、コストのコントロールといったところにのみ関心が集中してしまうからである。

2)がうまくいかないということは、当然、そのリカバリーはうまくいかない。このような事態を回避することをプロジェクトマネージャーに求めるのは酷であろう。トラブルの原因がプロジェクトマネージャーにあろうとなかろうと、そのような事態を招いた当事者にその解決を求めることは現実的でもないだろう。

そこで、PMOの登場となる。PMOがない企業であれば、母体組織が登場する必要がある。

今回はここまでにし、次回は、そのためにPMOが実施すべきことについて述べる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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