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【PMOコラム55】日本的プロジェクトマネジメントとPMO(1)(2008.05.12)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆PMはプロマネがやるはベストプラクティスか?

以前、弊社が使っていたプロジェクトマネジメント導入の事前診断の1項目に、「プロジェクトマネジメントをプロジェクトマネジャーがやっているか」というのがあった。もちろん、イエスの方がプロジェクトマネジメントが健全であるという意味あいの設問である。

しかし、最近、この項目を削除した。どうも、プロジェクトマネジャーがプロジェクトを管理しているかどうかというのとプロジェクトマネジメントの健全性というのが関係がないような事例が増えてきたからだ。というよりも、弊害が見られるケースが増えてきたからだ。

この項目は非常に重要な意味がある。自省も込めていうが、多くの企業はプロジェクトマネジャーがプロジェクトマネジメントをしているというのを何の疑いもなく、ベストプラクティスとして考えていた(PMI(R)はOPM3(R)でそう言っている)。しかし、これは欧米の話である。

実は、このアセスメント項目を廃止したのはプロジェクトマネジメントの文脈ではない。組織マネジメントの文脈でこれはおかしいと思うに至ったからだ。


◆なぜ、プロジェクトマネジャーが必要なのか?

そもそも、欧米の企業でなぜ、プロジェクトマネジメントが常態化しているかということを考えてみると、ミドルマネジャーの存在が無視されているからである。つまり、経営側と現場が明確に分かれ、明確なガバナンスがある。上意下達であるので、基本的にはその中間で調整をする必要はない。

ただし、定常業務であればという話である。日本の場合だと定常業務であっても、継続的改善が行われているケースが多かった。すると、現場と経営の間に調整が必要になってくる。これがかつて日本ではミドルマネジャーが活躍していた理由である。

定常業務でないもの、つまり、業務変革を伴う業務の場合はどうか?これは欧米であろうと、日本であろうと、調整なしにはできない。何らかの意味で新しいことをやるわけなので、すべてが経営計画どおりには進まないからだ。

米国ではこのような場合の調整業務をプロジェクトとして扱い、調整業務を引き受ける役割としてプロジェクトマネジャーを位置づけた。


◆日本企業におけるニーズ

日本の企業の意識は必ずしもここにはない。もう2年くらい前になるが、印象的なできごとがあった。大手のSI企業の特定事業部向けにプロジェクトマネジャー育成の講演をさせていただいたときのことだ。終わった後で講演を聴講して下さった事業部長さんがお話に来られ、「お話は参考になったが、うちの場合だと本質的な問題は課長や部長の仕事をどうするかです。また、機会があったら議論させてください」と言われた。そのとおりだと思う。プロジェクトマネジャーに何をさせるかが問題なのではなく、課長や部長が何をするかが問題なのである。

この問題に正面から向き合わずに、プロジェクトマネジメントはプロジェクトマネジャーが担当すべきであると決めつけているところに、多くの問題が生じている。

この問題については、PM養成マガジンエグゼクティブ(現在は、イノベーション・イニシアチブに統合されています)で取り上げていくので、そちらを参考にして戴きたい。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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