◆PMOのコストを誰が見るのか?
最終的には承認を得る。これがビジネスケースの最後になる。
PMOの承認はプロジェクトマネジャーの承認以上に複雑な問題がある。それは、コストである。PMOの立ち上げについてはそのコストは組織の投資として行われることが多いが、その後の運用をどのように行うかによって、ビジネスケースそのものが変わってくる。日常的な活用予算の確保についてはビジネスケース作成の段階で明確にしておかないと、活動そのものが予算の問題で制約されることになりかねない。
PMOのコストの確保は大雑把にいえば、プロジェクト費用から調達する方法と、組織としての間接費用としてみる方法がある。前者はプロジェクトオフィスの機能を果たすような場合、コンサルティングを行う場合、リカバリーを行う場合に適切な方法である。後者は標準化やナレッジマネジメントを行うような場合に適切な方法であると言える。
◆お布施で課金するPMO
これに対して、この逆をやっている非常に興味深い事例がある。あるSI企業では標準やツールにチャージしてプロジェクトに提供している。これは、PMOを立ち上げ、計画書と、見積もり、および、進捗評価の標準化などを行った当初からの取り組みとして実施した。
ただでも使わない標準にチャージすることについてはPMOもプロジェクトマネジャーも反対したが、業務プロセス改革を担当する役員の鶴の一声で5年ほど前に強引にやってしまった。ただし、PMO側からの課金ではなく、当時、インターネットビジネスで注目されていた「投げ銭」、「お布施」システムである。
その結果、何が起こったか?著者が知っている企業の中で、間違いなくトップ3に入るような、プロジェクトマネジメントの質、成果を実現している。
◆標準化やツールの注文を受ける
当然のことながら、プロジェクトマネジャーは標準やツールを使う義務はないし、使う場合には費用が必要になる。実際のところ、初年度はあまり使われなかった。それで、PMOは一生懸命にマーケティングをした。人間関係や社内政治などで、いくつかのプロジェクトで使われるようになった。そして、社内で事例発表会などで、お布施システムであることが、徐々に認識されるようになってきた。
状況がドラスティックに変わったのは2年目の事例発表会であった。あるプロジェクトマネジャーが、コストをプロジェクトで持てば、要求したものを作ってくれるのかという質問をした。これに対して、担当役員がもちろんだと引き受けた。
これ以来、プロジェクトからの要求でPMOはさまざまな標準やツールを作って提供している。特定プロジェクトへの対応で開発した標準やツールを、別のプロジェクトにも使わせている。もちろん、使った場合には、プロジェクトはお布施を払う。
◆PMOのサービス対価の本質はお布施にある
この仕組みはPMOの在り方を考える上で非常に興味深い。品質マネジメントプロセスとプロジェクトマネジメントプロセスは本質的な違いがある。それは前者はある程度、体系的、論理的なものであるのに対して、マネジメントプロセスは本質的にベストプラクティスである。
考えようによっては、この企業はベストプラクティスをPMOがプロジェクトと一緒に作って、それを流通させているとみることもできる。もっともPMOに求められる仕事はこの仕事ではないかと思われる。
当初、3名で頑張っていたPMOスタッフの人数も今は10名を超えている。10名を超えるPMOの費用はすべてプロジェクトからの委託業務をお布施で賄っている。PMOの価値とコストというのは本質的にこういうものではないかと考えさせられる事例である。みなさんは如何、お考えだろうか?
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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