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第8回 個の確立が創造するミドルの条件(2008.11.05)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆時間がない?!

課長クラスの方と創造的な仕事をしようという話をすると、お決まりの返事がある。「いうことは分かるが、そんな時間を取れない」という返事。実際に、部下はどんどん、相談を持ち込んでくるし、上からも指令が飛んでくる。どうすれば、いいのだろうか?

10年以上年前に、金井先生(神戸大学)、米倉先生(一橋大学)、沼上先生(一橋大学)が3人で、ミドルの取材をされ、それをまとめられた本がある。おそらく、創造するミドルというのは彼らが創造した言葉だと思う。

金井 壽宏、沼上 幹、米倉 誠一郎「創造するミドル―生き方とキャリアを考えつづける」ために」、有斐閣(1994)


この本の中で、沼上先生が面白いことを言っている。90%はルーティンワークで、残りの5%がちょっと知的な仕事、そしての残りの5%が「きらめきの仕事」であればよいという。

さて、冒頭の話に戻る。5%が本当に取れないのか。現実を見ていると、本当に取れない人が少なくない。どこに問題があるのだろうか?


◆個の確立が先決

まず、最初の問題は創造するミドルでも指摘されているとおり、「個の確立」である。日本の企業は、新入社員を自社の風土になじませるために、入り口のところで画一的な仕事させる。このことが個の確立を妨げていることが多い。実際に好川自身の経験だが、これをやると馴染む競争を始めるようだ。つまり、同期の仲間より早く馴染むことに誇りめいたものを感じる。こうなると、1年もたてば一色になり、自分が何色かを考える機会は失われる。外から企業を見ていると、このパターンは恐ろしく多い。自分自身の価値を大学のときに見つける人もいることを考えると、なんとももったいない話である。

それでも、クリエイティブカンパニーとして語られるような企業はよい。染まっていくことが創造に結びつくからだ。日本企業ではあまりないパターンだ。

では、日本企業がガチガチに管理しているかというとそうではない。クリエイティブというのもある意味で会社の意思である。広い意味では会社がレールを敷いている。ところが日本の企業は非常に許容度が大きい。「やろうと思えばできる」組織である。以前、このメルマガで伊藤忠の丹羽宇一郎会長の「くれない症候群」の話を紹介したが、まさに、そういうことを言っているわけだ。

これらの状況を作っているのは個が確立できていないことが原因だと思われる。自分自身の価値観がないので、組織の価値観に縛られる。そして、それが組織的に波風の立つような行動を縛る。


◆個の確立に必要なマインドセット

組織の価値観を認めながらも、自分の価値観を探し、しっかりと持つ。これが個の確立であるが、どうすればよいのだろうか?これそのものがこの連載の内容だともいえるのだが、3つのマインドセットがあると思われる。

ひとつ目は、ものごとをポジティブに考えることである。常識に縛られない創造的な仕事をしない理由などいくらでも考えられる。しかし、そこには目を向けず、創造的な仕事をしたい理由を探す。二つ目はワークライフバランスを意識をして仕事をすることだ。三つ目は外部ネットワークを重視すること。


◆粘りが何よりも重要

そしてもっとも重要なのは、一旦、クチに出したことは粘り強くやることだ。新入社員のころに、提案をするときには3回目が初回だと思えといわれたことがある。そのときはよく分からなかったが、その後、部下を持ってよく分かった。そのときの上司の常套手段は1回目は相手にしない、2回目はぼろくそにいうものだった。そして諦めずに3回目を出したら、一緒に考えてくれていた。要するに本人がいざとなったときに引いてしまうようでは上司としても支援する意味がないということだろう。ミドルが経営に対して提案するというのも同じだろう。本気であるというなら、つまらないプライドなど捨てて、粘ることがだろう。実現に執念を燃やすことだ。


◆組織に立脚した夢や志はあるか?

外堀の話はこれくらいにして、創造的な仕事をするにはどうすればよいかという議論に移ろう。以前、ブログで紹介した「プロデューサーズ」という本がある。9人の創造的な仕事をした人の事例をインタビューに基づいて紹介した本だ。

プロデューサーズ―成功したプロジェクトのキーマンたち


立山正之(ザ・ホップ)、田中栄子(鉄コン筋クリート)、平野友康(digitalstage)、高島宏平(オイシックス)、内山光司(BIG SHADOW)、相原博之(くまのがっこう)、佐藤悦子(SAMURAI)、武藤弥(R-Investment & Design)、藤原明(REENAL)

9人に共通しているのは、夢、志があることだ。ここがミドルと一般社員の違いだが、ミドルの、夢や志は個人に立脚するものではなく、組織に立脚するものである。つまり、組織をこうしたいという夢や志だ。そして、この夢や志に立脚して、目標の設定を考え抜いている。考えることがポイントである。創造するミドルとは考えるミドルだといってもよいくらいだ。

今回はここまでにする。もし、今、あなたが何か新しい課題を与えられていたら、上に述べたような視点で考えてみてほしい。

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  2.4 コンセプチュアルな人材育成
  2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
 3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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