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統合マネジメントは、リアクティブではなく、プロアクティブに行うべき

第13回 経営の意図と現場の意思(2010.08.30)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆戦略の読み取りと戦略コミュニケーションの関係


第11回で戦略は読み取るもという指摘をし、また、前回は戦略コミュニケーションの重要性を指摘した。この2つの指摘は、一方でちゃんと伝えよ、一方で考えよといっているようで、矛盾する。今回はこの謎解きをしたい。

最初にPMBOK(R)を見たときに関心をもったのは、統合マネジメントとプロアクティブという考え方である。プロアクティブという英語は、日本語でいえば、

・率先する
・先を見越す

といった意味である。PMBOK(R)で統合マネジメントをうまく行うには、プロアクティブという考え方がキーになる。PMBOK(R)を導入していても、統合マネジメントをうまく実現できている企業は決して少なくない。理由は、統合マネジメントがリアクティブになっているためである。

リアクティブは「反応的」、「反作用的」という意味だ。統合マネジメントをリアクティブに行うと、単なる問題解決に過ぎなくなる。ベースラインに何らかの問題が起こったときに、「反応的に」対処することに過ぎなくなる。

◆プロアクティブプロジェクトマネジメントのキーは戦略


プロアクティブに対応するということは、先を見越して対応することで、一つのポイントは、統合マネジメントをリスクの段階で起動することである。

一方で、プロアクティブには、「率先する」といったニュアンスもある。統合マネジメントをプロアクティブに行うためには、「率先する」という観点も重要である。そこで重要な意味を持ってくるのは「戦略」である。プロジェクトの進むべき方向は、戦略が決めている。戦略をQCDSの観点からオペレーションに展開するのが統合マネジメントであるということができる。リスクマネジメントをプロアクティブに行うことは受動的な活動を先手を打ってやるということであるが、こちらの要素は目標設定に関わる能動的な活動であり、文字通り、プロアクティブな活動である。

◆戦略コミュニケーションの実際


ここで問題になるのが、戦略をQCDSに落とし込むコミュニケーションの実態である。戦略コミュニケーションで落とし込んで行く場合には、経営層から、現場に向けて以下のようなコミュニケーションを行う必要がある。

(1)ビジョンの共有
・ビジョン
・企業理念
(2)戦略の背景の共有
・問題(事象)の共有
・前提の共有
・起点の共有
(3)戦略の意味の共有
・戦略と業務方針の関係の共有
・戦略と業務目的の関係の共有
(4)戦略の関係の共有
・戦略間の依存関係
(5)仕事の戦略的位置づけと意味の共有
・仕事の戦略上の位置づけ
・仕事の戦略上の意味

ただし、前回述べたように、これらは一方的な「伝達」として行われるべきものではない。コミュニケーションとして、上司と部下の間で相互理解ができるまで繰り替えし行われるべきものである。

◆経営の意図、現場の意思


この項目を見てお分かりだと思うが、戦略というのは経営からの「指示」ではない。方向性という言葉があるが、方向性に近い。つまり、経営は経営の「意図」を持って戦略を策定する。しかし、現場は現場の「意思」を持って戦略を理解する。実行される戦略とは、経営の意図ではなく現場の意思に基づくものである。

つまり、現場は戦略的なコミュニケーションを背景にして、戦略を読み取り、実行するという図式ができる。

ここで一つ考えて置かなくてはならないのは、この延長線上に創発的な戦略があるということだ。提唱者のミンツバーグによると、創発的な戦略とは、「意図せざる行動と学習の過程から生まれるパターン形成」ということで、主にミドルがよかれと思ってやっていることの中で、学習し、事業や業務の活動の方向性を決めていくとそれが戦略になるという考え方である。

戦略をこのように捉えた場合に、戦略策定と戦略の読み取りの活動は重なり合う部分が大きくなり、経営的な意図と現場の意思が重なることになり、質のよい戦略の策定と合理的な戦略実行が可能になる。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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