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コンセプトがないところで、アイデアや技術を生み出してもイノベーションはできない。イノベーションは組み合わせだと言われるのは、コンセプトをニーズとシーズの組み合せで作るからである

第96回 コンセプトから始める(2016.08.31)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆何をデザインするのか

技術から始まるイノベーションは終わったといわれるが、では、イノベーションは何から始まるのか。今回はこの問題について考えてみたい。

この議論がそもそも出てきたのは、デザインが注目されるようになってきたころだと思う。特に、iPhoneに代表されるように新しい技術ではなく、既存の技術の組み合わせ(デザイン)によってイノベーションが生まれるというロジックが注目されるようになった。

ここで問題は何をデザインしているのかという問題である。この答えは日本ではあまり強く言われないように感じるが、言うまでもなく、コンセプトである。コンセプトがあって初めて、技術が活かされる。

日本は従来はコンセプトは輸入していた。そしてそのコンセプトの実現技術を開発し、国内、海外との競争に勝っていった。それが高度成長期であったが、トップの一角を担うようになって先頭を走るためにこのやり方が使えなくなった。技術開発以前にコンセプトを作らなくてはならなくなった。


◆ニーズとシーズ

ここで問題になったのが、シーズとニーズの統合である。技術者はもともとシーズをたくさん持つが、ニーズには弱い。コンセプトはシーズとニーズを統合したものである。ニーズが弱いといいコンセプトができない。

ニーズに弱い原因は技術者の態度にあることが多い。よいコンセプトを生み出しそうなニーズに対して、できない理由をあげて実現できないと判断してしまう。これがコンセプト作りが弱いことに直結している。つまり、コンセプトが中途半端で飛べない原因になっている。

ちょっと話は脱線するが、高度成長期にはコンセプトを輸入していたが、どのようなコンセプトを輸入するかはニーズに即していたように思う。どんな難しいコンセプトでも何とか実現してきた。それが成長の源泉だったのだ。


◆ニーズへの認識を高めるだけではだめ

さて話を元に戻すが、そこで顧客志向のような活動テーマを掲げてニーズを強化しようとした。結果、失敗しているケースが多い。たとえば、ITに代表されるようにニーズにしか対応しないといった態度の開発をするようになり、競争力を落として、海外の企業に市場を取られてしまったような分野が少なくない。

実はこのようなケースでニーズに対する認識を高めていくと同時にすべきことはシーズへの認識を高めていくことなのだ。特に、自分の専門分野以外のシーズへの認識を高めていくことは、イノベーションを起こすためには不可欠だと言ってもよい。これは技術者以外、たとえば、マーケッタに対しても言えることだ。


◆ニーズとシーズを統合し、コンセプトを作る

イノベーションは組み合わせだと言われるのは、コンセプトをニーズとシーズの組み合せで作るからに他ならない。

コンセプトをデザインするとは、どのようなニーズとシーズに対応するかを決め、そのバランスを考えることに他ならない。そして、コンセプトがすべてのスタートになる。

逆にいえば、コンセプトがないところでいくら頑張っても、アイデアや技術を生み出してもイノベーションはできない。コンセプトを考え、コンセプトを実現する方法を考え出すという当たり前のプロセスを経ることが、持続的にイノベーションを生み出す唯一のマネジメントである。

これこそが、イノベーティブ・リーダーシップを呼ぶべきものだ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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