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技術中心のイノベーションの時代は終わり、これからは人間中心のイノベーションであり、その中核になるのがデザイン思考、人や生活をどう変えるかがデザインである

第95回 人間中心のイノベーション(2016.08.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆技術中心 vs 人間中心

技術中心のイノベーションの時代は終わった、これからは人間中心のイノベーションだ、そしてその中核になるのがデザイン思考だという声が聞こえ始めてもうずいぶん時間が経つ。この指摘はどうなっているのだろうか。今回はこの問題について考えてみたい。

確かにデザイン思考は普及してきたが、イノベーションの対象が人間中心になっているかというと怪しい。そもそも、人間中心のイノベーションというのはどういう意味なのだろうか。

これがなかなか、表現が難しい。技術中心のイノベーションは新しい技術を開発することにより、新しい価値を生み出すものだ。これに対して、人間中心のイノベーションは人や社会の課題を追求することにより、新しい価値を生み出すものだ。


◆現実によく見かけるイノベーション

ところが、人や社会の持つ課題、言い換えると要求に対して、技術開発により課題を解決していこうという技術中心のイノベーションを人間中心のイノベーションだと考えている人が意外と多い。

さらにいえば、デザインとしてみているのが、人とモノのインタフェースであることも少なくない。確かに寄与する先は人や社会の行動であるので、これを人間を中心とするイノベーションだと考えてもおかしくはない。


◆人間中心のイノベーションとは

ただ、これは本来、人間中心のイノベーションだと考えられていたものとは少し異なる。たとえば人間中心のイノベーションのiPhoneを考えてみてほしい。フューチャーフォンで新しい技術イノベーションがほぼ終わったと考えられる時期に登場したのだが、これはフューチャーフォンのユーザーが何か望み、それに応えるために開発された製品ではない。

人や社会に何が必要かという課題を追求した結果、生まれた製品である。つまり、技術イノベーションのように明確な課題があってイノベーションが起こったわけではなく、人や社会の課題そのものを探すところから、生まれてきたものだ。

これは、ジョブズがユーザーは自分たちが何を欲しがっているか知らないと発言したことからも明らかだ。だからこそ、ユーザーはいきなり、自分の予期せぬ製品を突き付けらる。しかも、それは自分が必要だと思えるもの、したいことができるものなのだ。だから、熱狂するのだが、熱狂させている要因は課題解決そのものではない。もちろん、課題解決ができない限り、どのような課題であってもユーザーに影響を与えることはできないわけで、課題解決が不可欠なことはいうまでもない。しかし、ユーザーの熱狂させるのはどのような課題を認識するかであろう。


◆人や生活をどう変えるかがデザイン

iPhoneは人の生活を変えたとよく言われる。一方で、技術的には比較的古くからある技術を応用していると言われる。つまり、どういう「電話」がこれからの人や社会に必要かから課題を認識している。要するにそういうことなのだ。

そして、そのような課題を認識する(探す)のに、デザインやデザイン思考が有効だと考えられている。

人間中心のイノベーションとはそういうイメージだ。決して、人や社会が欲しいというものを生み出すことではない。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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