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第80回 差別化とイノベーション(2015.06.17)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆リニュアルに向けて

イノベーション戦略ノートは、イノベーションに関するネタであればなんでもアリのノート記事として書いてきたが、誌面刷新を機に、もう少し、イノベーションの戦略・視座に絞った内容にしようと思う。

リニュアル第1回は差別化について。


◆イノベーションと差別化

イノベーションと差別化の関係は複雑である。差別化の結果がイノベーションになることもあるし、差別化により些細な機能の競争に陥り、ガラパゴス化してしまうこともある。

差別化という言葉には、競争相手がまだ提供していないものを提供するというニュアンスが含まれている。従って、差別化する要素はまだ世にない可能性が高い。

つまり、イノベーションである可能性が高い?

問題はここだ。新しいものを提供すればイノベーションなのか?新しいことは一つの必要条件ではあるが、十分条件ではない。


◆サムスンの曲面型スクリーンに見る落とし穴

スマートフォンでサムスンが投入した曲面型のスクリーン(エッジスクリーン)機能がある。これは技術的には画期的なものであるが、ほとんど実用に供していない。極論すれば、デザインの一環だと言ってもよいだろう。

サムスンがこのスクリーンを投入した目的は差別化だと思われ、確かに(技術的には)新しいものだが、これを以てイノベーションだとは思えない。

何が欠けているかというと、価値なのだ。イノベーションはユーザーに新しい価値を提供することだ。その点において、曲面型のスクリーンはほとんど新しい価値を提供していない。

これが差別化の落とし穴である。


◆差別化と新しい価値の提供はイコールではない

実は一昔前の、モノが十分にいきわたっていない時代には、

差別化=新しい価値の提供

であった。実際に、新しく提案される機能には価値があったし、それがユーザーの購買行動の前提だといってもよかった。

ところが、この前提が崩れてきた。すべての製品に最低限必要な機能があることを前提に、ユーザーの購買行動が、自分たちが欲しいものを買うという風に変わってきた。
これが、ガラパゴス現象を引き起こしている。


◆イノベーションは本質の差別化で起こす

今、イノベーションが注目されているのはどういう背景がある。新しいモノや機能を提供するだけでは不十分で、新しい価値を提供しなくてはならない。新しい価値の提供はイノベーションそのものである。

ただし、差別化という行動は競争の中では避けることができない行動であることも事実だ

すると、イノベーションの議論は差別化を前提にしたものになる。その場合にポイントになるのは、製品の本質である。

製品の本質において差別化することが不可欠なのだ。

たとえば、サムスンのスマートフォンのカメラは素晴らしく高機能だし、使いやすい。スマートフォンという製品の本質を考えたときに、カメラで映像を撮影し、共有するというのは本質の一つだといえ、イノベーションと呼ぶに値する。

こういうイノベーションを積み上げていくと、サムスンのスマートフォンも復活の余地があるのだろう。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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