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イノベーションに関わるすべての人がリーダーシップを発揮し、主体者としてイノベーションに貢献しなくてはならない。イノベーションは一人ではできない

第52回 続・イノベーティブなリーダーとは(2014.09.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆イノベーションは誰が進めるのか

第48回でイノベーティブなリーダーは何をするのかという問題を、マネジメントとリーダーシップという視点から書いてみた。簡単にいえば、マネジャーは問題解決をするが、イノベーティブなリーダーは課題解決をするという違いがある。

今回はこの問題をもう少し深堀してみたい。

この話を議論するには、まず、イノベーションは「誰が」、「どのように」進めていくのかという問題を考えていかなくてはならない。


◆イノベーションは一人ではできない

大抵のイノベーションは一人ではできない。多くの人のコラボレーションになることが圧倒的に多い。その中でイノベーティブリーダーはどのような役割を果たすのだろうか?おそらく、イメージとして多いのはジョブズのようなイメージではないかと思う。

もちろんそういうリーダーシップがないとは言わないが、そういうリーダーシップでアップルのようにすごいものを創れるのはリーダーが天才的な場合だけだろう。

多くの場合はそうではなく、コラボレートする人がいろいろなアイデアを出し、チームとしての思考に貢献しなくてはすごいイノベーションは実現しない。つまり、イノベーションに関わるすべての人がリーダーシップを発揮し、主体者としてイノベーションに貢献しなくてはならない。

つまり、イノベーションには場が必要なのだ。


◆イノベーションには場が必要である

このような認識の下でイノベーティブリーダーは何をするのか?

参加者の一人としてアイデアを出したりすることはあるかもしれないが、イノベーションの場を作ることが役割である。

これはファシリテーションをするということだけを意味しているわけではない。むしろ、もっと積極的に、イノベーションをするんだという雰囲気を作ったり、イノベーションの価値観を浸透させる。その中で、自らが率先して動く。

イノベーションにはミッション(ビジョン)がある。具体的なテーマは偶発的なものかもしれないが、ミッションは決して偶発ではない。

そして、ミッションにつながる目的や価値観が重要になる。イノベーティブリーダーが場を作る役割として必ずやらなくてはならないことは、ミッションにつながる目的や価値観をメンバーに持たせることである。


◆メンバーに問い、目的や価値観を共有する

そのために有効な方法はメンバーに対して問うことだ。

・自分たちのイノベーションは源泉は何か
・イノベーションはどこから始まるのか
・イノベーションはどのようなものか

といった問いかけをし、話し合う場を作る。そうして目的意識を持たせ、価値観を共有することによって、メンバーの力を十分に引っ張り出すことがイノベーティブリーダーの役割である。

イノベーションであろうとあるまいと、日本人のチームは欧米と比べて、リーダーシップが集中し、リーダーに頼りっぱなしになる傾向があるのは周知のことである。この問題はあまり議論されないが、明らかにイノベーションが起こらない一つの理由になっている。上に述べたように、イノベーションは一人ではできないからだ。

この傾向を改め、みんながリーダーとなってイノベーションを起こすだのという雰囲気や風土を創れるのがイノベーティブ・リーダーの値打ちである。


◆プロジェクトを作るか、場を創るか

実はこの議論はオペレーションプロジェクトでもある。そのプロジェクトを行っている戦略があり、その中でプロジェクトの目的を決め、プロジェクトを進めていく。これはプロジェクトリーダーの役割である。

この議論とイノベーションの議論が違うのは、メンバーに対して個々に目標を与えるかどうかである。目標を与えることができれば、あとは目標を管理しながらプロジェクトを進めることである。

ところがイノベーションの場合は、目標を与えることは好ましくない。メンバーの持つポテンシャルを殺してしまう可能性があるからだ。そこで、目標ではなく、価値観を共有し、目的と価値観の範囲で、メンバーにリーダーシップを期待する。

リーダーはプロジェクトを作り、イノベーティブリーダーは場を創る。この違いは極めて大きい。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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