第53回 属性の多様性と意見の多様性は違う(2014.09.17)
◆多様性という言葉の解釈
イノベーションに必要なのは多様性である。
このこと自体について異議がある人は少ないと思う。しかし、多様性とは何かという質問をすると、いくつかの答えが返ってくる。典型的な答えは、「女性や外国人を増やす」というのと、「いろいろな意見を持つ人を増やす」というものだ。
今、世の中はアベノミクスで女性活用が推進されている。1990年代にもウーマノミスクなる言葉が生まれて、女性の社会進出が注目された時代があったが、今回はリーダー的立場への登用など、労働力を超えて、多様性に注目が集まっているように感じる。まあ、男社会で20年ほど停滞してきたのだから、当たり前かもしれない。
しかし、そううまく行くだろうかというのが今回の戦略ノートのテーマ。
◆オンナを捨てる
女性活用運動の中で、ただでさえ少ない大臣のポストの5人を女性が占めたりと、現実の動きが起こっている。企業を見ても欧米と比べると少ないとはいえ、日本にも女性管理職がいないわけではない。現実問題として著者の仕事の相手が女性管理職(役員)になることは決してすくなくないし、全般的に優秀な印象がある。
ところが、実際に一緒に仕事をしていて思うのは、姿かたちは女性でも女性を感じさせないことだ。
ウーマノミクスという言葉が流行ったときに、「オンナを捨てる」という言葉が流行ったが、ある意味でオンナを捨てているのだろう(ごめんなさい)。この言葉の意味するところは重要で、少なくともこの時代には男性と同じように考え、同じように仕事をしなけばポストはもちろん、重要な仕事を任せてもらうことも難しかった。
別に著者だけがそう思っているわけではなく、5人の大臣はもっぱら男と同じことをしてきたといわれているし、社内の女性管理職を男性の発想で仕事をしていると思っている人は多いと思う。
◆属性の多様性と意見の多様性は違う。
これから分かるように女性を活用すればジェンダーは多様になるが、意見が多様になるかどうかは別問題なのだ。これが冒頭に述べた多様性の解釈はいろいろとあるという話だ。
だから、女性を活用することに労働力以上の意味がないというわけではない。まずは属性の多様性。性別とか、国籍といったものは、明らかに何か違う要因になっている。
問題はここで終わってしまっていることだ。女性を入れても、何もしなければマジョリティの男性文化は変わらない。属性の多様性を思考や感情の多様性に結び付けていく必要がある。
◆なぜ、考え方や感じ方が多様にならないのか
女性を入れても変わらないのは、思考や感情の多様性が阻害されているからだ。つまり、男性と同じように考え、感じることを要求されるからだ。
このような阻害要因を取り除いていく必要がある。この阻害要因は多様性を阻害するだけではなく、創造的であることも阻害しており、取り除くことが極めて重要である。
多様な属性を持つ人たちが、自分らしく考えたり、感じたりできるようになれば、彼らから出てくる意見はおのずと多様になる。逆に、思考や感情の多様性が阻害されている限り、いくら多様な属性を持つ人を集めても意見は一様であり、イノベーションが起こることは難しい。
◆多様な考え方、感じ方から、多様なアイデアが生まれる
多様性をイノベーションに結びつけるには、属性の多様性を、アイデアの多様性に結びつける必要がある。ところが、結構、この壁は高い。
これまで逆に属性の多様性を乗り越えて、一様な意見を出すように教育されている。これをアンラーニングしなくてはならない。仕組みだけを作っても、機能しないからだ。
余談だが、多様な属性の人を一様な考え方をさせ、感じ方をさせるというのも非常に難しいことをやっており、米国人で会社をやっている知人がどうしたらこんなことができるのかと不思議そうにしていた。
おそらくだが、義務教育の成せる技だろう。
◆イノベーティブ・リーダーの役割
考え方や感じ方の多様性を認めることは、組織文化の問題であり、リーダーシップの問題である。
イノベーティブリーダーは、メンバーの一人一人に向き合い、考え方や感じ方を受け入れることによって、属性の多様性とアイデアの多様性の間のギャップを埋める役割を果たさなくてはならない。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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