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ハードディスクのような破壊的イノベーションの本質は、真の敵を見ることにある。そのためには、自分たちのビジネスやビジネスモデルが破壊されるシナリオを書いてみること

第8話 本当の敵を探す(2013.02.11)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆破壊的イノベーション

クリステンセン博士の発見した概念に破壊的イノベーションという概念がある。少し長くなるが、破壊的イノベーションについて説明しておこう。

この概念の発見のもとになったのは、ハードディスクのイノベーションだった。ハードディスクのイノベーションは、メインフレームで使われるハードディスク(14インチ)の記憶容量を上げることにあった。

そのような競争が行われている中で、新しいタイプのコンピュータが現れてきた。ミニコンピュータである。ミニコンピューターのハードディスクはより小型のもの(8インチ)が求められた。

ところが、メインフレームのハードディスクを開発しているメーカは、ミニコンピュータのハードディスクに興味を示さなかった。理由は2つある。一つは記憶容量という点でははるかに劣っているからだ。つまり、技術的に劣っているわけだ。もう一つは、これが重要なのだが、顧客(市場)のニーズがあるからだ。8インチが出てきても顧客は目をくれず、14インチの容量を大きくしてくれることを望んでいたのだ。

そうしているうちに、コンピューターの市場はミニコンピューターが中心になり、ハードディスクの出荷量もミニコンピュータ用のものが多くなってきて、技術進化も進み、ついには14インチのハードディスクを同等になってきた。そうなると、メインフレームも5インチのものを使うようになり、14インチのものは不要となった。そして、14インチをやってきたメーカは全滅した。

同じ現象が、8インチからパソコン用の5インチ、5インチから3.25インチと主流が移ったときにも起こっている。つまり、市場の声を聞く、市場の競争相手を見るだけでは競争相手のイノベーションに負けてしまうことがある。

破壊的イノベーションはコンピュータだけではなく、多くの業界で起こっている。

◆破壊的イノベーションは真の敵によって起こる

破壊的イノベーションの本質は、真の敵を見ることにある。14インチのハードディスクメーカの真の敵は14インチの競合ではなく、8インチのメーカだったわけだ。

ハードディスクの例は、同じハードディスクなのだかえって分かりにくいかもしれないが、たとえば、電話事業を崩壊させたのは電話事業者が格下だと思っていたスカイプのようなインターネットだった。この破壊的イノベーションはまだまだ、いろいろな情報通信の分野で続くだろう。

真の顧客という言葉が誰かを考えよという言葉があるが、破壊的イノベーションは顧客のニーズによって生まれるものではないので、真の顧客のニーズを考えることはハードディスクの事例のようにマイナスになる可能性もある。

イノベーションで必要なのは、真の顧客ではなく、「真の敵」を考えてみることだ。

ほぼ、すみわけができていた電話のキャリアとにって真の敵は有線の電話キャリアではないことは明らかだし、実は携帯電話キャリアでもない。実際には携帯電話を固定電話のキャリアが始めてしまったのでどうなったか分からないが、携帯電話であれば有線電話のアークテクチャーを工夫すればもっと安い価格に提供でき、十分に戦えたと思える。本当の敵は、インターネットだった。

今のところ、日本では電話キャリアはイノベーションできず、土管屋になっていて、イノベーションはこれから、次の敵は誰かを探して、そこに勝ているようにイノベーションするのだろう。


◆真の敵をみつけるには

では、真の敵を見つけるにはどうすればよいか。自分たちのビジネスやビジネスモデルが破壊されるシナリオを書いてみることだ。電話の例でいえば、インターネットが普及し、メディア技術などが進んでくれば、スカイプのようなサービスが出てくることは可能性の高いシナリオとして描けるはずだ。

二つ目は、チームでビジネスゲームをやってみるとよい。イノベーションチームと敵の2つに分け、戦略を決め、戦略行動を実際にゲームでシミュレーションしてみる。そのときに、イノベーションチームが負ければ、そのようなビジネス行動を取る可能性がある企業が真の敵で、その企業を想定して、戦略行動を考えればよい。

イノベーションで斬新なアイデアを出したのにうまく行かないことがあるのは、実はそのアイデアを実現していったときに真の敵がいないからであることが多い。究極の競争戦略は競争をしないことであるという言葉があるが、いまそのような分野は非常に珍しいのではないかと思う。むしろ、異分野からアプローチが脅威になることが多い。そのような市場をうまく利用すると、破壊的イノベーションを起こせる可能性が高くなるだろう。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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