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第13回 PMOの構築(2)(2003.05.12)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆PMOの構築は変革である
 PMOを構築する状況として、新しくベンチャー企業を作って、そこで展開するというケースは稀だろう。多くの場合、すでにプロジェクト「らしき」形で仕事をしており、そこにプロジェクトマネジメントの改善のためにPMOを構築していきたいというケースが多い。

 まず、PMOの構築という作業のイメージを共有したい。多くの組織の構築がそうであるように、PMOもやはり、組織図を書いて、ジョブディスクリプションを作り、辞令を出せば構築終わりではない。ここが構築の始まりだ。

 最初に述べたように、現在のプロジェクトの進め方からPMOを中心にしたプロジェクト運営をはじめるということは、PMOの辞令が降りたところでそれまでのやり方をすべて放り出し、新しいやり方をはじめるということではない。従来のやり方から、新しいやり方への「変化を始める」ということである。

 そのように考えたときに、ミッションステートメントは、例えば、ローマス・ブロックやデビッドソン・フレームが提案しているようなものでよいだろう。

 しかし、従来からプロジェクトを中心にした組織にPMOを作るというのは「変革」をするということであり、これだけでは不十分だ。まず、何からやるかという順序付けこそが、PMO構築の鍵を握っていると言ってよい。

◆プロジェクトマネジメント変革プログラム
 そのように考えると、まず、PMOを構築したときにすべきことは、「プロジェクトマネジメント変革プログラム」を立ち上げ、その中で自らの位置づけを明確にしていくことも含めて、プログラムマネジメントをしていくことである。

 現実を見ていると、PMOの立ち上げ方には2種類があるようだ。一つは、とにかく組織をつくってしまい、ミッションの定義も含めてPMOでやらせるという方法である。もう一つはミッションまでを定義した上でPMOを立ち上げ、PMO構築プログラムのマスタープランの作成からをPMOでやるケースだ。まれに、マスタープランまでをPMOの立ち上げ以前に作っているケースがあるが、このようなケースは準備組織を作っていることが多いので、実質的には最初のケースの変形とみなしていいだろう。

 これはPMO立ち上げというプログラムのスコープの問題に過ぎないので、この後の議論はとりあえず、組織をつくって、さあやりなさいというケースを想定して話を進める。

◆マスタープランで押さえるべきこと
 まず、作らなくてはならないのはマスタープランであるが、そのマスタープランを作成のために、プロジェクトマネジメントの実態調査をする必要がある。実態として把握しておかなくてはならないことは、

 ・PMの権限
 ・プロジェクトメンバーの人事権
 ・計画と実績のギャップ
 ・プロジェクトミーティングの実態
 ・変更管理の方法
 ・調達の実態

などである。この6点がPMOのミッションを決定する際のポイントになる。

 これらの調査結果により、PMOのミッションの大枠が決まると、次に、そのミッションを実現する組織作りのイメージをして、PMOの構築という作業の目的化をする。そして、それをマスタープランに落とし込んでいく。

 マスタープランでは、

 ・目的を達成するために必要なプロジェクト
 ・それらのプロジェクトの優先順位の決定
 ・それらのプロジェクトの実施順位の決定
 ・目的の達成しかたかどうかの達成基準の策定
 ・プログラムを成功させるために必要な(公式)権限、ネットワーク

の5つは必ず明確にしておく。これが変化の航海図になる。



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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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