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第12回 PMOの構築(1)(2003.04.17)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆PMOブーム到来!
 プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の概要については、第5回で説明した。今回から何回かは、PMOについては、もう少し、具体的な話をしてみたい。

 昨年(2002年)後半からPMOブームである。著者が知っているだけでも、PMOを新設した企業は両手では数え切れない。90年代の後半に、企業がこぞって経営企画室を作った時期があったが、それを思い出させるブームである。

 なぜ、経営企画室を引き合いに出したかというと、経営企画室というのがまた、ミッションが明確ではない組織で、明らかに、他社が作ったからわが社でもということで作った企業が多かったからだ。戦略的な経営スタイルありきではなく、組織ありきなので、その機能は問題解決機能になる傾向があった。

◆PMの問題とPMO
 PMOもそれに似ている。その企業のプロジェクトマネジメントの問題を洗い出し、その問題を解決する方向でPMOを作っている企業が多いようだ。多くの企業の抱えている問題はそんなに多くはない。

(1)標準手法がない
(2)PMが足らない
(3)リスクマネジメントができていない

の3つに集約されるのではないかと思う。この3つの問題を解決するために、どこの会社を見てもPMOの機能として

(1)手法の開発と普及、コンサルティング
(2)教育・研修
(3)プロジェクトのトラブル解消(いわゆる火消し)

の3つは必ずあるようだ。

◆トラブル解消チーム
 この中で(3)は実際に効果がでているという企業が多い。反面、あまり評価していない人が多いのも事実だ。理由は、トラブルの発生はプロジェクトマネジメントのやり方の問題であり、プロジェクトマネジメントのやり方がよければトラブルは起こらないと考えている人が多いからだ。つまり、手法に手をつけず、トラブル解消を行うというのは本末転倒で、根本的な解決にならないというわけだ。
 だが、これは思い過ごしだろう。プロジェクトのトラブルはプロジェクトマネジメントの方法で完全に解消できるものではない。仮に完璧な手法を導入しても、PMの個人能力差はあるし、プロジェクトの難易度の差もある。これらをすべて吸収できるようなプロジェクトマネジメントというのは理想ではあるが、あまり、現実的に感じない。組織成熟度が上がっても、現実的になると思えない。
 その意味で(3)の取り組みは非常に意味があると考える。しかし、そのやり方は少し寒いものがある。よく聞くのは、手の空いているPMO所属のPMが支援することによってプロジェクトの火消しをするというスタイルだ。しかし、これは組織成熟度を考えるとあまり合理的とはいえない。やはり、フォーメーションを組んで支援に当たれるようにすべきであろう。

◆PMコンピテンシーに注目
 (2)の中で注目されるのは、PMコンピテンシーへの取り組みである。著者も最近よくそのような相談を受ける。PMOとして、何かスキル体系に取り組みたいということで、ITSSやPMコンピテンシーに注目する企業が増えているわけだが、経験的にこれらを導入することよりは、うまく使うことにより難しさがある。これからの課題だといえる。

◆PMBOK(R)は本命か?
 (1)としては、やはり、PMBOK(R)が増えているようだ。同時に、PMPの数が急激に増えている。著者がコンサルティングで企業にいくとミーティングメンバーの1/3くらいPMP(R)がいることもあるくらいだ。ただ、このまま、PMBOK(R)でいくかどうかは、若干疑問がある。理由はまたの機会に述べるが、どのような標準を導入するかは、これまた、これからの課題だといえる。



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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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