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第14回 PMOの構築(3)(2003.06.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆PMOは組織によって違う!
 前回はPMO構築のマスタープログラムを策定するというところまで話が進んだ。忘れられた方は、復習しましょう!

 この中で述べているように、PMOというのは、「この形」というものがあるようで、実はそんなに明確ではない。それは、PMOの位置づけにもよるのだが、全社レベルで、なおかつ、ある程度長期的な視野を持つプロジェクト推進の問題解決組織だと位置づけるのであれば、PMOをどういう手順で作っていくか、つまり、マスタープログラムにどういうプロジェクトを盛り込み、それをどのようなプライオリティで取り組んでいくかは、あまり一般性はないからだと思われる。

 その点は前提としながらも、PMOの構築の第1回で説明した

(1)手法の開発と普及、コンサルティング
(2)教育・研修
(3)プロジェクトのトラブル解消(いわゆる火消し)

の3つの機能は必須なので、この3つについて、この順番でどのような手順で構築していくかを考えてみたい。


◆手法の開発の考え方

 最初は手法の開発と普及である。
 手法の開発といった場合、PMBOK(R)のような予め一般手法になっているものを選択してきて、それを自社にフィッティングするという方法が一般的だろう。

 すると、まず、最初は、どのような手法を使うかを選択することから始まる。その際にまず、すべきことは、プロジェクトの実態調査である。日本人的なものの考え方として、

PMBOK(R)は国際標準だし、コンペチターのA社も導入している模様なのでわが社も導入しよう。ただし、自社にフィッティングする部分で、わが社のやり方が十分に生かされるように工夫をすることにしよう。

という発想法がある。この発想法を100%否定することは難しいし、確かに、PMBOK(R)というのは、そのようなアプローチができるくらい「標準としての完成度が高い」ものだと思う。

 それを承知の上であえて言うが、このようなアプローチは如何なものかと思う。まず、自社のプロジェクトマネジメントの弱いところ、強いところをきちんと分析し、その上で、プロジェクトマネジメントのあるべき姿を明確にするというところからはじめるべきである。

 なぜか?プロジェクトマネジメントに正解はない。正解があればPMBOKを前提にして、十分でない部分を補足するというアプローチでもよいだろう。しかし、正解がないとすれば、まず、正解を作らなければならない。これを全社レベルでやることが重要だ。

 その上で、そのようなプロジェクトマネジメントを導入するスキームを探すべきだ。少なくとも、プロジェクトマネジメントを企業の競争力にしようとすれば、そのようなアプローチが望ましい。それが、結果としてPMBOKであれば、それはそれでいい。


◆PMで何を達成したいのかから始まる

 自社のプロジェクトマネジメントの分析をするには、

 まず、プロジェクトマネジメントで何を達成したいのか

ということを真剣に考えるべきである。PMBOK(R)を導入すれば何か変わって良くなるだろうというのは論外としても、プロジェクトマネジメントで達成したいことと、開発マネジメントで達成したいことの区別をしないままで取り組んでいる企業はよく見かける。それなら、開発マネジメントで十分である。

 その上で、SWOT分析なり、何なりで、それを達成するために、自社にとっての足らないところと十分なところの分析をする。また、現実に、自社がそのようなプロジェクトマネジメント能力を身につけた場合に、どういう機会が生まれるか、また、どういう脅威が存在しているかということを分析する。

 そして、弱みをカバーし、また、機会を強化できるような手法を導入することが望ましい。また、標準手法を導入し、そのようにフィッティングすることが望まれる。

 普及については次回説明する。




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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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