◆ステークホルダー・マネジメントの戦略
PMBOKガイド(R)第5版は、ステークホルダー知識エリアがコミュニケーション知識エリアから独立し、10個の知識エリア、5つのプロセス群、47のプロセスから構成されています。
前回は、、新しい知識エリアとなったステークホルダーマネジメントの立上げのプロセスである、「ステークホルダー特定」について述べました。
本号では、ステークホルダーマネジメントの計画のプロセスである、「ステークホルダー・マネジメント計画」を記事にします。
本プロセスのアウトプットは、「ステークホルダー・マネジメント計画書」ですが、このマネジメント計画書は、第4版ではステークホルダーマネジメントの知識エリアがなかったため、計画書としては存在していませんでした。
第4版では、コミュニケーション知識エリアの立上げプロセスである「ステークホルダー特定」にて、
・ステークホルダー登録簿
・ステークホルダー・マネジメント戦略
を作成し、それらをインプットとして、「コミュニケーション計画」プロセスにて、「コミュニケーション・マネジメント計画書」を作成する流れでした。
つまり、ステークホルダーマネジメントは、立上げで作成されたステークホルダー・マネジメント戦略を実現するコミュニケーションマネジメント計画書を作成し、それにしたがって、実施するということです。
それでは、第4版でのステークホルダー・マネジメント戦略とは何かと言いますと、以下の通りです。
『プロジェクト・ライフサイクル全体を通してステークホルダーからの支援を増大させ、マイナスの影響を最小化するための取り組み方を定義』
(PMBOK(R)から抜粋)
つまり、ステークホルダーに対するコミュニケーションの取り組み方を立上げ段階には、決めておきましょう、ということになります。
さて、第4版の「ステークホルダー特定」のアウトプットは、
◎ステークホルダー登録簿
:ステークホルダーのプロジェクトとの関係を主に記載
・識別情報:氏名、職位など
・評価情報:プロジェクトへの期待、プロジェクトから受ける影響など
・分類:支持者か反対者かなど
◎ステークホルダー・マネジメント戦略
:プロジェクトがステークホルダーに望むことを記載
・参加の度合い:ステークホルダーに望む参加の度合い
・影響の査定:ステークホルダーから受けるプロジェクトの影響
・戦略:支援を得るまたは障害を減らすための戦略
でした。
第5版の「ステークホルダー特定」のアウトプットは、
◎ステークホルダー登録簿
・識別情報:氏名、職位など
・評価情報:プロジェクトへの期待、プロジェクトから受ける影響など
・分類:支持者か反対者かなど
であり、ステークホルダー・マネジメント戦略の部分がなくなっていますが、個人的には、立上げ段階で、戦略まで含めた「ステークホルダー登録簿」を作成すべきと思っています。
第5版の「ステークホルダー・マネジメント計画」は、以下の通りです。
◎インプット
・プロジェクトマネジメント計画書
・ステークホルダー登録簿
・組織体の環境要因
・組織のプロセス資産
◎ツールと技法
・専門家の判断
・会議
・分析技法
◎アウトプット
・ステークホルダー・マネジメント計画書
・プロジェクト文書更新版
そして、ツールと技法の「分析技法」では、ステークホルダーの関与度の分析について紹介しています。
その中で、ステークホルダーの関与度を、次のように分類しています。そして、その分類結果を、ステークホルダー登録簿に記載することとなります。
・不認識:プロジェクト自体とプロジェクトとの関係(影響)を認識していない
・抵抗:プロジェクトとの関係(影響)を認識しているが、支持しない
・中立:プロジェクトを認識しているが、抵抗も支持もせず、中立である
・支持:プロジェクトを認識し、積極的に支持する
・指導:プロジェクトを認識し、積極的に関与する
PMstyleでは、ステークホルダーの分析として、ステークホルダーキューブを取り上げています。支援の可能性と妨害の可能性でステークホルダーを2次元で分析し、さらに、プロジェクトに対して、肯定的か否定的かの軸を加えた3次元でステークホルダーを分類するツールです。
詳細は、こちらをご覧ください。。
第55回 ステークホルダーキューブ
そのステークホルダーキューブで分類したステークホルダーに対して、以下の4つの戦略を考えています。
・そのポジションを維持する
・ステークホルダーの否定的な姿勢を肯定的な姿勢に変える
・ステークホルダーの支援への可能性を活性化する
・ステークホルダーの妨害の可能性を引き下げる
その戦略に応じて、ステークホルダー・マネジメント計画を立案していきますが、詳細は次回にします。
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講師:鈴木道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
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【カリキュラム】
1.ステークホルダーマネジメントとは何か
2.ステークホルダーの特定・プロジェクトのパラメータ
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3.影響力の法則(R)
・(演習3)カレンシーを考える
4.概念的に考えて具体的に行動する
・コンセプチュアルスキルとは
・本質を見極める
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5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
・(演習6)カレンシーを再考する
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鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
本連載は、PM養成マガジン購読にて、最新記事を読むことができます。