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第6回 新製品開発とビジネスケース(2013.02.08) 3/3

新井 宏征


◆新製品の種類
ここまで「新製品」という言葉を何気なく使ってきたが、新製品開発が成功する可能性を高めるためには、新製品の種類を意識する必要がある。
そのために”The Product Manager's Handbook”で紹介されているのが次の図である。

     

考え方としては、市場と製品の二軸で考えるアンゾフの事業拡大マトリクスと同じである。アンゾフの事業拡大マトリクスでは、市場と製品について、それぞれ既存のものか新規のものかという2種類で分けた4つの分類を紹介しているが、この図はそこまで明確な分類にはしていない。

横軸の「市場の関係性」という軸は、既存の市場や既存の市場と似たような市場のことを「関係性が強い市場」だと定義し、自社にとって新しい市場のことを「関係性が弱い」市場と定義している。縦軸の「製品タイプ」では、「既存」の製品に近い新製品(例えば、最近発表されたiPadの128GBモデルのように製品のスペックの一部を変えたものなど)から、この世には存在していない「新規」のカテゴリーの製品までを表す軸である。

図で色が薄い部分、つまり関係性が強い市場に既存の製品に近い新製品を投入するような場合に比べ、色が濃い部分、つまり関係性が弱い市場にこれまでにはなかったような製品を投入する方が、一般的にリスクは高くなる。

同じようにスティーブン・G・ブランクによる『アントレプレナーの教科書』では、スタートアップの種類として次の4種類を紹介している。スタートアップについての分類となっているが、スタートアップを製品と読み替えることもできる。

 ・ 既存市場に参入するスタートアップ
 ・ まったく新しい市場を創造するスタートアップ
 ・ 低コスト参入者として既存市場を再セグメント化しようとするスタートアップ
 ・ ニッチプレイヤーとして既存市場を再セグメント化しようとするスタートアップ

どのような分類を使うかは別として、大切なのは、新製品の種類によって留意しなければいけない点が異なるということである。

これまで紹介してきたような市場調査のデータなどを盛り込んだビジネスケースを元にした新製品開発というのは、先ほどの図で言えば色が薄い部分のケースに特に適している。

ただし、先ほどの図の色が濃い部分、つまり右上に近い部分というのは、『アントレプレナーの教科書』の分類で言えばまったく新しい市場を創造していくような部分になる。

最近ではこのような新しい市場を創造することについて、さまざまな考え方が紹介されている。例えば『新しい市場のつくりかた』では、まったく新しい市場を創造していくことを「文化開発」と呼び、世の中にまだない新しいコンセプトから価値を創造するものだと紹介している。この本では、この「文化開発」のプロセスを問題の開発から始まる次の4つのプロセスに分け、整理をしている(各段階の詳細は『新しい市場のつくりかた』本文を参照のこと)。

 


同じように『アントレプレナーの教科書』では、まったく新しい市場を創造するスタートアップは、従来の製品開発モデルと平行して「顧客開発モデル」と呼ぶモデルに取り組むことを紹介している。顧客開発モデルとは、「顧客発見」、「顧客実証」、「顧客開拓」、そして「組織構築」の4つのステップから成るモデルで、各プロセスは失敗を経て何度か繰り返すことを前提としている。

このようにこれから開発する新製品の種類を念頭に置き、その種類にあった開発プロセスを進めていくことが重要である。

   

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著者紹介

新井 宏征

SAPジャパンにて、BI関連のソフトウェア導入業務に従事した後、2007年よりシンクタンク勤務後、2013年に独立。主に法人関連分野のコンサルティング業務に従事。主な著書に『スマートグリッドの国際標準と最新動向2012』、『グーグルのグリーン戦略』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『90日変革モデル』などがある。
Facebook上でプロダクトマネジメントのグループも管理している。

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