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第4回 プロダクトマネジメントとプライシング(2012.11.30) 3/3

新井 宏征


◆ビジネスモデル
顧客に与える価値を念頭に置き、価格を決定することの大切さを踏まえ、価格を決めていくためにはさまざまな考え方がある。『プロダクトマネジャーの教科書』では、ポケット・プライスという手法について紹介している他、プライシングに関する手法としてはゲーム理論を応用したものなどがある。また、『プロダクトマネジャーの教科書』の109ページ以降に載っているような、価格戦術(段階的価格やピークタイム価格、BOGO(Buy One Get One)価格)も、時代に合わせて次々と新しい考え方が登場している。

重要なのは、そのような手法や価格戦術に振り回され、価格だけを切り離して考えるのではなく、価格を生み出す全体的な仕組みを考えることである。この場合の仕組みとは、いわゆる「ビジネスモデル」と呼ばれているものである。

先ほど、プロダクトマネジメントとは「プロダクトを通して顧客満足を生み出すために行うもの」と紹介したが、そのためにはプライシングだけではなく、そもそもどのような価値を提供するのかを決めることに加え、そのような価値を提供するために必要なリソース、製品やサービスを届ける流れや、利益を得る流れなどを総合的に考えなければならない。このような視点が「ビジネスモデル」である。

例えば『なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編』の中では、ビジネスモデルを「儲ける仕組み」とシンプルに定義し、ビジネスモデルを考える視点として「顧客の再定義」や「バリューチェーンのバンドリング/アンバンドリング」などの7つを紹介している。また、エイドリアン・J・スライウォツキーによる『プロフィット・ゾーン経営戦略』や、その内容を小説仕立てで解説した『ザ・プロフィット』では、20を超える利益モデルを紹介している。

さらに最近では『ビジネスモデル・ジェネレーション』の中で紹介されている9つの構成要素から成る「キャンバス」を使ったビジネスモデルの検討も注目されている。この『ビジネスモデル・ジェネレーション』では、ビジネスモデルのことを「どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したもの」と定義している。

これ以外にもビジネスモデルを考える上で参考になるさまざまな考え方やツールが存在するが、それぞれ特徴があるので、実際に実例を当てはめたり、自らのビジネスモデルを検討することによって、自分にとって相性の良い考え方やツールを見つけることが望ましい。

大切なのは、価格を設定する際に価格のことだけを考えるのではなく、顧客が意思決定をする際の重要な要素となる価格を設定する背景にあるビジネスモデルを検討した上で、顧客にとってはもちろん、自社においても満足のいく価格を設定することである。

   

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著者紹介

新井 宏征

SAPジャパンにて、BI関連のソフトウェア導入業務に従事した後、2007年よりシンクタンク勤務後、2013年に独立。主に法人関連分野のコンサルティング業務に従事。主な著書に『スマートグリッドの国際標準と最新動向2012』、『グーグルのグリーン戦略』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『90日変革モデル』などがある。
Facebook上でプロダクトマネジメントのグループも管理している。

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