◆「製品」と「プロダクト」(続き)
ここであえて「製品」ではなく「プロダクト」という表記を使ったのは、「プロダクト」という用語が包括するものが、日本語の「製品」から想起されるものよりも広いからである。日本語で「製品」というと、一般的にB2B製品を指す場合が多いが、プロダクトマネジメントで扱う「プロダクト」は、B2Cのものも含まれる。さらに、形がある製品や商品だけではなく、形がないサービスもプロダクトマネジメントの対象に含まれる。
海外のビジネスパーソンの利用が多いSNSであるLinkedInでプロダクトマネジメントに関するグループを検索すると、1300以上ものグループがヒットする。例えば、その中で3551人が参加している(本稿執筆時点)保険に関するプロダクトマネジメントのグループをはじめとして、インターネット上のサービスや金融サービス、ソフトウェア、小売、医薬品、ヘルスケア、食品などのプロダクトマネジメントグループが存在している。このような事例からも、プロダクトマネジメントが扱う対象が幅広いことがわかるだろう。
なお、ここでは「製品」と「プロダクト」の違いを明確にするために両者を厳密に使い分けて解説したが、これ以降、本稿では「商品」や「サービス」も含んだ概念を「製品」という用語で統一して表現する。
◆「起業家」と「プロダクトマネジャー」
プロダクトマネジメントが顧客と製品の両方を扱う職務と聞くと、この職務を担うプロダクトマネジャーが起業家のような存在であると思う人もいるだろう。実際、“The Product Manager's Desk Reference”では、プロダクトマネジャーのことを「ミニCEO」と表記している。また、Linda Gorchels氏は、プロダクトマネジャーを” intrapreneurs”(イントラプレナー、社内起業家)と呼ぶにふさわしい存在だとして、起業家とプロダクトマネジャーの類似性を次のように対比している。
この対比からわかるように、プロダクトマネジャーは、資金調達から営業までのプロセスにおいて、起業家と似たプロセスを進めていくことになる。さらに、両者とも製品の機能や付加価値ありきではなく、顧客のニーズを踏まえた上で、自らの製品の機能や付加価値が、彼らのニーズを満たすものであるかどうかということを考慮するという点で共通している。
新井 宏征
SAPジャパンにて、BI関連のソフトウェア導入業務に従事した後、2007年よりシンクタンク勤務後、2013年に独立。主に法人関連分野のコンサルティング業務に従事。主な著書に『スマートグリッドの国際標準と最新動向2012』、『グーグルのグリーン戦略』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『90日変革モデル』などがある。
Facebook上でプロダクトマネジメントのグループも管理している。
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