◆なじみが薄い「プロダクトマネジメント」
「プロダクトマネジメント」という職務、あるいは、その役割を担う「プロダクトマネジャー」という肩書きは、一部の外資系企業では目にすることはあるものの、日本ではまだまだなじみが薄い。ただし、その役割が十分に浸透していないのは必ずしも日本の事情だけではないようだ。プロダクトマネジメントに関するコンサルティングやトレーニングなどを提供する米国のThe
280 Groupという企業は、プロダクトマネジメントという職務がよく理解されていない状況を改善するため、2008年に “Product Management Manifesto” という文書を公開している。
「プロダクトマネジメント」を直訳すると「製品管理」となるが、「製品管理」という直訳された用語から想定されるイメージは、実際の「プロダクトマネジメント」の職務とは大きく異なるものである。
◆「プロダクトマネジメント」と「プロダクトマネジャー」の定義
それでは職務としての「プロダクトマネジメント」、そして肩書きとしての「プロダクトマネジャー」はどのように定義されるのだろうか。
“The Product Manager's Desk Reference”では、プロダクトマネジメントを次のように定義している。
「製品、製品ライン、あるいは製品ポートフォリオのレベルでのビジネスマネジメント」
また『プロダクトマネジャーの教科書』では、プロダクトマネジャーの定義として次のような記述がある。
「特定の製品ラインやブランド、サービスについて、既存の製品の管理やマーケティングを行ったり、新製品開発の役割を負っているミドルマネジャーである」
「事業戦略家であると同時に優秀な実践者でもある。担当する製品を通して顧客の満足を積み重ね、最終的に利益を上げなければならない。また、そのようなプロセスを直接的な権限を持っていない人たちをまとめながら進めなくてはならない」
さらに、『プロダクトマネジャーの教科書』の原書である” The Product Manager's Handbook”の最新版(第4版)では、プロダクトマネジャーの職務を次のように定義している。
「プロダクトマネジャーの仕事とは、製品ライン、あるいはサービスラインのあらゆる側面に責任を持ち、高い顧客満足を作りだしながら、同時に自らが属する企業に長期間にわたって価値をもたらすこと」
◆「製品」と「プロダクト」
このようにいくつかの定義を見てみると、「プロダクトマネジメント」は、先ほど紹介した「製品管理」よりもカバーする範囲が広いことに気付く。特に”
The Product Manager's Handbook”の最新版の定義を見ると、プロダクトマネジメントにおいては、プロダクトだけではなくて、顧客も念頭に置かれていることがわかる。つまり、プロダクトマネジメントとは、プロダクトと顧客の間に位置し、プロダクトの管理だけを行うのではなく、プロダクトを通して顧客満足を生み出すために行うものなのである。
新井 宏征
SAPジャパンにて、BI関連のソフトウェア導入業務に従事した後、2007年よりシンクタンク勤務後、2013年に独立。主に法人関連分野のコンサルティング業務に従事。主な著書に『スマートグリッドの国際標準と最新動向2012』、『グーグルのグリーン戦略』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『90日変革モデル』などがある。
Facebook上でプロダクトマネジメントのグループも管理している。
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