◆リーダーとは
みなさんはプロジェクトリーダーというとどのような立場の人をイメージしますか?
改めて説明するまでもないと思いますが、リーダーという言葉はある集団においてその集団を引っ張っていく立場の人です。集団は企業かもしれませんし、事業部かもしれません。あるいはプロジェクトかもしれませんし、2〜3名のチームかもしれません。つまり、ひとが2人集まれば、リーダーが生まれるわけです。
リーダーが生まれると書いたのは、リーダーは誰かに指名されるものでもないですし、本人がやるといえばなれるものでもありません。リーダーになる方法はただ、一つ、メンバーからリーダーとして認められることです。
◆プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャー
さて、このような前提でプロジェクトリーダーについて考えてみます。プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーはどう違うのでしょうか?この問題は仕事という視点と、ガバナンスの視点から考えてみる必要があります。
まず、仕事という視点からいえば、リーダーとマネジャーは仕事の仕方が違います。
マネジャーは人を動かすことによって仕事を進めていきます。つまり、計画を作って、メンバーにその計画を実行させることが基本になります。リーダーも人を動かすという点では同じですが、その方法は計画ではなく、メンバーの自発的な活動を引き出すことです。そのためには、リーダーは自らメンバーと一緒に仕事をするということもあり得ます。
次にガバナンスの視点からいえば、マネジャーは、組織から与えられた権限によって、人を動かします。リーダーはガバナンスとは無関係です。組織から与えられる職位、あるいは、指名されるロールではないので、リーダー自身は組織上の権限を持ちませ
ん。
◆プロジェクトリーダーは何をするのか
このようにプロジェクトマネジャーは組織上の権限を持ち、予算と計画でプロジェクトをマネジメントします。それではプロジェクトリーダーは何をするのでしょうか?
たとえばIT業界で考えてみましょう。ITの業界では、プロジェクトマネジャーの下にプロジェクトリーダーを位置づけたプロジェクト組織図を良く見かけます。この場合、プロジェクトリーダーは技術を牽引したり(技術リーダー)、開発プロセスを牽引したり(開発リーダー)します。
このように、業務面を牽引するのがプロジェクトリーダーで、プロジェクトマネジャーは業務はプロジェクトリーダーを使って行い、ビジネス的な面をマネジメントするという形を取っています。
この場合、プロジェクトリーダーに期待している役割は、業務(開発)の牽引であることが多いようです。これはキャリア上の理由によります。これまでITは技術の進歩が激しく、勉強を続けないと一線で10年やるのは厳しいと言われてきました。したがって、ビジネスが一通りわかってきた時期には、もう技術リーダーとしては衰退期に入っていることが珍しくありません。そこで、技術リーダーは若いうちにやらせ、ビジネス的な側面は上位者がカバーするという方法をとってきました。ITに限らず、技術の進歩が激しい分野では比較的一般的なやり方になっています。
◆真のプロジェクトリーダー
このような体制でプロジェクトを進めると、技術リーダー以外にプロジェクトを引っ張っていくリーダーが必要になります。つまり、経営の期待を読み取り、期待に応えるための方向性を決め、その方向にプロジェクトを統率していく役割です。こちらの方が、本来のプロジェクトリーダーという言葉の意味に近いものです。
プロジェクトリーダーに誰がなるべきかは微妙な問題です。プロジェクトの規模が小さければ、開発リーダーや技術リーダーがなるのが現実的です。ただし、その場合、経営の期待に応えていくためには、QCDSをすべて見て、ビジネスリーダーとしての意思決定をしていかなくてはなりません。
プロジェクトの規模が大きくなると、ステークホルダの調整が増え、開発作業の相対的な重要性が小さくなります。したがって、開発リーダーがプロジェクトを牽引していくのは無理があり、プロジェクトマネジャーがプロジェクトリーダーの役割を果たす必要があります。
さらに大規模になると、複数のプロジェクトマネジャーを置き、その中の一人がリーダーの役割を果たす形を目指すこともあります。
◆プロジェクトリーダーのすべきことはプロジェクト推進
このようにプロジェクトリーダーがすべきことは、プロジェクトの推進です。つまり、制約を気にせずにプロジェクトをどんどん進めていくことです。ただし、プロジェクトには制約がありますので、誰かが気にする必要があります。それがプロジェクトマネジャーで、プロジェクトリーダーの上位者かもしれないし、本人かもしれない。あるいは同僚かもしれないというわけです。
重要なことは、マネジメントとシナジーがあるということです。つまり、プロジェクトリーダーが卓越したリーダーシップを発揮し、チームがうまく機能すれば、それはマネジメントの選択肢を増やすことになります。たとえば、チームの生産性が上がれば、計画の自由度が増えます。
プロジェクトマネジャーとプロジェクトリーダーの間でこのシナジーを生み出すのはプロジェクト成功のポイントになることは間違いありません。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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