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第36話:与件の整理(2011/11/28)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆与件

与件という言葉があります。他から与えられることを意味する言葉ですが、特に、解決されるべき問題の前提として与えられたものを意味します。

与件に対して、「与件の整理」という概念があります。初めてであったのは、「ISIS編集学校」の破のコースの中の「プラニング編集術」というカリキュラムでした。イシス編集学校で学んだことはいろいろとありますが、仕事への役立ち度では、プラニング編集術が一番でした。特に、この与件の整理という概念は新鮮でした。

与件の整理で使ったフォーマットは、6H3Wというもので、これ自体はプロジェクトマネジメントでプロジェクトを整理するための使われるフォーマットと同じです。面白かったのは、二軸四方を使って情報の特徴検出をしながら6W3Hに落とし込んでいくというものです。二軸四方について詳しく知りたい人は

松岡 正剛編集、ISIS編集学校「直伝!プラニング編集術」、東洋経済新報社(2003)

を参照してください。


◆「プロジェクト作って魂入れず」

多くのプロジェクトで、プロジェクト憲章が作られるようになってきています。プロジェクト憲章は与件を整理したものです。ところが、どこの企業にいっても何のためにプロジェクト憲章を書いているのか分からないというプロジェクトマネジャーが少なくありません。実際にプロジェクト憲章を見ていると、言われたことはきっとまとめられているのでしょう。しかし、それ以上でも、それ以下でもない。

与件とは言われたことではなく、そこから相手(クライアント)の意を汲んでいくことです。プロジェクトの場合、クライアントは顧客かもしれませんし、社内かもしれません。意図が十分にくみ取られているとは言えないプロジェクト憲章になっています。

また、与件には当然のことながら、相手の意図に対して、自分はどうしたいかという考えも入ってきます。それについても、明確にされていない。

つまり、与件として整理されていないのです。仏作って魂入れずということわざがありますが、さしむき「プロジェクト作って魂入れず」といったところではないでしょうか。


プロジェクトに魂を入れるにはどうすればよいのでしょうか?


◆3つのステークホルダの意図を汲む

一般にプロジェクトには3つの重要なステークホルダがいます。一つは上位組織です。
二つ目は、顧客(エンドユーザ)または、市場です。三つ目はプロジェクト自身です。
まずはそれぞれについて、意図の分析が必要です。

たとえば、上位組織の狙いは、「顧客ロイヤリティの獲得」だったとします。一見、これだけで十分な目的のように思えますが、これだけでは計画のしようがありません。プロジェクト憲章に顧客ロイヤリティの獲得とか書いてあるにも関わらず、プロジェクトの計画になると、まったくそのような要素はまったく見当たらず、精神論だけになっているプロジェクトはたくさんあります。

計画として具体化するためには、顧客ロイヤリティという狙いを解きほぐしてやる必要があります。そのときに、使うのが、上に紹介しました二軸四方のように、情報を膨らませていくフォーマットです。詳しい話は省略しますが、たとえば、顧客ロイヤリティを中心にして

・サービスに対する満足感 −顧客ロイヤリティ − 成果物に対する満足感
・顧客のCS − 顧客ロイヤリティ − 顧客のES

といった軸を考えてみる訳です。この例でいえば、通常の目的では、上の軸しか考えていないことが多く、したがって、下の軸が入ってくると、全く別のプロジェクト目的が出てくる可能性があるわけです。

同様に、顧客、プロジェクトチームについても考えてみます。すると、与件から見えない与件が出てきて、結果的に相手の意図にたどり着くことができます。


◆みんなが納得する目的が魂になる

このような与件の整理をして、初めて、みんなが納得するプロジェクトの目的が決まります。プロジェクトの目的に納得しない限り、そのプロジェクトを一生懸命やろうとはだれも思いません。その意味で、重要なことは、主要ステークホルダがすべて目的に納得しない限り、プロジェクトはうまく行かないだろうということです。

・現場に丸投げする上位組織
・自分の分担を無視する顧客
・手抜きするプロジェクトチーム

といったことが起こらないようにするためには、プロジェクトにみんなの納得する目的、つまり、魂が入ることが不可欠だと言えます。

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 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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