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第166話:VUCAはPDRでマネジメントする(2020/03/10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆リーダーの苦悩

6年前のPMスタイル考で、P-D-Rの記事を書いた。

【PMスタイル考】第84話:PDCAからPDRへ(2014年5月13日)

これは、2014年に実施した公開セミナー

マネジャーのためのプロジェクト管理講座(実践編)

で話をしようと思って、事前に紹介しておきたいと思って書いた記事だ。この当時は、プロジェクト管理の分野かどうかはともかく、P-D-Rは2~3年のうちにPDCAに代わる考え方として日本でも普及してくると思っていた。

P-D-Rは Prep-Do-Review の略であり、バーバードビジネススクールのリンダ・ヒル教授が2011年に発表したものである(以下、PDRと表記する)。ちなみにリンダ・ヒル教授は日本では

ハーバード流ボス養成講座―優れたリーダーの3要素」(日本経済新聞社、2012)

ハーバード流 逆転のリーダーシップ」(日本経済新聞出版社、2015)

などのリーダーシップ論で知られているが、その研究の中で多くのリーダーは時間不足に悩まされていることに気がついた。上司としての仕事、例えば、目標達成への働きかけ、人材育成、チーム・ビルディング、ネットワークの構築と維持などをいつ行うのか、そしてその時間をどのように捻出するかは多くのリーダーの共通の悩みだった。

この問題に対して、リーダーたちは日常業務と管理業務を区別し、優先順位付け、権限移譲などといった手法で解決をしようとするのだが、なかなかうまく行かないのが実情である。


◆PDRとは

これに対して、PDRでは

「マネジメントとは本来、断片的で反応的な(起こった出来事に対応する)ものである。」
という前提に立ち、予想外に生じる出来事、危機、責務などが生む混乱を、管理業務の遂行に利用しようとする考える。この手順(サイクル)がPDRである。すなわち

Prep(準備):何かを実行する前に、必ずそのための準備をする。
Do(実行):準備したことを実行に移す。
Review(見直し):完了後、何を実際に行ったのか、何が起こったのかを考える。

という手順でマネジメントを行う。もう少し詳しくいえば、まず、Prepでは準備として、

・これから何をしようとしているのか
・その理由、目的、目標は何か
・それをどのように行うのか
・誰が関与し、誰が影響を受けるのか

といったことを検討する。その上で、Doで実行し、Reviewで見直しする。見直しでは、実行したことに対して、

・何を実際に行ったのか
・何が起こったのか
・学んだことは何か
・次はどのような点を変えるべきか

などを考える。これがPDRサイクルである。


◆VUCA時代にはPDCAでは不十分

さて、PDRについて再び書こうと思った理由であるが、VUCA(Volatility:変動、Uncertainty:不確実、Complexity:複雑、Ambiguity:曖昧)時代に求められるコンセプチュアルなマネジメント、あるいはパーパス・ドリブンなマネジメントにおいてはPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)では不十分だと考えていることである。

ただし、本質的にPDCAは役立たないと考えているわけではない。これはPDCAの運用方法の問題とも関係がある。

PDCAは元々米国が実施した戦後の日本復興の支援の一環で、イエール大学のエドワーズ・デミング教授が日本の製造業の経営者に品質を一定に保つ品質管理の手法として伝えた考え方である。その後、デミング教授の教えを広めた日本人が「Act」を「Action」と間違えて広めたのが功を奏し、デミング教授が提唱した方法とは少し異なる方法で品質向上に寄与したという説もあるが、いずれにしてもPDCAで世界を驚かす品質を実現していった。

ちなみに、「Act」と「Action」の違いは、actは1回の行為であり、 actionはある期間での行為全体である。この違いにより、日本では普及目的が製造業における品質改善だったこともあり、PDCAサイクルはマネジメントのサイクルだと認識されている。これは製造業以外の分野で活用されるようになった今でもそうである。ただし、製造業以外の分野ではあまりうまく機能していないことが多い。

もう一つの問題は、本来のPDCAはプロセスは仮説検証のプロセスであり、設定された仮説を実際に実行して結果をチェックする仮説検証のプロセスである。にも関わらず、仮説の設定方法が決められていないことだ。

これらの理由により、PDCAはあくまでも機械で造った製品の品質を向上させるための考え方であり、人間の仕事には適していないことが多い。実際に製造業以外でPDCAが機能しているのはルーチンワークであり、人間がやり方を考えながら進めていく業務ではうまく機能していないことが多い。

PDCAがうまく機能しない理由は、同じ仮説検証のプロセスであるOODA(Observe:観察、Orient:状況判断、方向づけ、 Decide:意思決定、Act:行動)プロセスと比較してみるとよく分かる。OODAではビジョンを設定し、ビジョン実現をするために行動するようになっている。


◆PDCAの計画にはビジョンがない

これに対して、PDCAの計画にもビジョンがあるはずだ。そして、ビジョンのために計画を変更していく。例えばプロジェクトマネジメントでいえば、プロジェクトの目的があって、目的の実現のためには目標や計画を変更するPMBOK(R)の考え方がそうなっている。これがPDCAの本来の姿である。

しかし、現実にはPDCAの計画にはビジョンを持たせないことが圧倒的に多い。これはおそらく製造業でマネジメント手法として発展してきたためで、その背景には、一旦、計画を立てれば、現実との乖離があっても、作業を調整しながらなんとかしようとする日本独特のやり方があると思われる。

ついでにいえば、(上位)マネジャーの評価は計画で行われるので、一旦計画したら現場のマネジャーや担当者に計画の微調整でなんとかするように権限移譲するという現実もある。これは日本ではプロジェクトマネジメントにおいても同様である。

こういったことがVUCA時代にPDCAが機能しない大きな原因になっている。計画の前提がどんどん変わる中で、PDCAでは変化への対応ができないという問題が起こっている。

実際に最近ではプロジェクトでも初期計画を立てたときの前提がプロジェクト実施中に変わっていくことが多い。前提が変われば、立てている計画は妥当なものではなくなるし、計画の微調整や作業の調整ではもはや対応できない。このような問題を回避するには、臨機応変に計画を変えていくしかない。

さらにいえば、これが容認されているのは、チェックと改善が十分に行われていないことに理由がある。計画通りにいかない原因の特定が不十分であるので、計画に問題があるので見直そうという話にはなりにくいのだ。


◆PDCAの問題を解消するPDR

少なくとも多くのPDCAの運用はこのような状況になっている。この問題を解消して仮説検証のサイクルを回していくのに適しているのがPRDである。上に述べたよにPDRでは、準備(Prep)で

・実現したいビジョンやパーパス(=これから何をしようとしているのか)
・その理由、目的、目標は何か

を明確にした上で、計画(=それをどのように行うのか)を考えて、実行(Do)する。

PDRの見直し(Review)は、実行に対する見直しではない。準備に対する見直しである。

つまり、計画通りにできたかどうかをチェックし、できていなかったら準備で決めた目的を実現し、や目標を達成するために計画を変更する。これによって準備の精度を上げ、精度が上がるにつれて行動の効率や生産性が上がるという考え方になっている。言い換えると、PDCAより、行動をコントロールできるのだ。


◆コンセプチュアルなマネジメント実現にはPDRが適している

このように考えると、

ビジョンやパーパスを実現するために、業務の目的を設定し、目標や計画を作る。そして、業務の目標を達成するために、臨機応変に計画を変えていく。場合によっては、目標設定を変更することもある。極端な変動がある場合には、目的も再考する

というVUCA時代に必要なコンセプチュアルなマネジメントを実現するためにPDRは非常に適した方法である。この手法だけでもいいし、業務の性格によっては、PDCAと組み合わせ、ルーティン業務の改善をPDCAで行い、PDRでマネジメントを行うといったことも考えられる。あるいは、今回はほとんど触れなかったが、OODAとの組み合わせで長期的なマネジメントと短期的なマネジメントを両立させるといったやり方もあるだろう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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