前回はプロジェクトマネジャーの5段階の成熟度モデルのうち、レベル1〜3へのレベルアップについて述べた。
今回はレベル3からレベル5までのレベルアップについて考えてみたい。
◆レベル3からレベル4へ
レベル3はパフォーマンスはあまり問題にしない。もちろん、確実にできるという意味の中には、時間がなくてはできないという側面もあるので、まったく問わないということにならないが、とにかく、思ったことができるということに力点が置かれる。極論すれば、時間があればできるということでもかまわない。
レベル3とレベル4の違いはここにある。レベル4は、さまざまな制約の中で、自分の思っていることが確実にできることである。いうなれば、チームを自由に動かせるということでもある。
ちょっと話がややこしいが、プロジェクトマネジャーはチームを思い通りに動かせるようになって初めてパフォーマンスが発揮できる。プロジェクトマネジメント自体が目的にはならないからだ。例えば、プロジェクトスケジュールをきちんとコントールするというパフォーマンスを考えてみよう。そのためには、的確な進捗管理、的確な是正などの行動が必要になるが、これができたかどうかの判断はチームがきちんと結果を出せたかどうかで決まってくる。
つまり、自分はいくらちゃんとやっていても、チームとして結果が出ていない限り、そのようなマネジメント(パフォーマンス)ができていることにならない。
つまり、「レベル4:自分のパフォーマンスを知り、スキルアップできる」という場合、プロジェクトマネジメントスキルで、足らないエリアのスキルを強化していくことはもちろんだが、どのように成果を出していくかについて自分なりの方法を探させることが重要である。このためには、内省的な指導を重視する必要がある。
仕事がら多くのプロジェクトマネジャーを見ているが、レベル3で足踏みをしている人が多いのは、このチームとして成果を出す方法を発見するところで苦しんでいることが多い。そのような人の多くが引っかかっている問題が、成果の管理である。プロジェクトマネジャーがパフォーマンスを向上させていくには、成果のマネジメントを向上させていくしかない。
このためには、単に進捗だけではなく、適切な目標の設定、目標達成の管理、目標達成のためのプロセスの改善などを統合的に行うマネジメント能力を身につけさせる必要がある。同時に、人を管理するという発想から脱却させる必要がある。
◆レベル4からレベル5に
レベル5はプロフェッショナルレベルである。自分が何のためにマネジメントをしているのかを考え、それに照らし合わせてどの程度できたかという評価指標を持ち、常に自己を革新していける人である。その意味で、人材開発が介入するところではないともいえる。
このレベルを目指すというのは極めて難しい。ある組織で、今のプロジェクトは前のプロジェクトよりうまくできるように何を努力しているかということを調査したことがある。失敗プロジェクトの後では100%近くが失敗の再発防止のための努力をあげた。ところが、いわゆる成功プロジェクトの後では、なんと95%の人がそのようなことは考えないという回答をした。
プロジェクトが成功したか、失敗したかは、外部的な判断である。プロフェッショナルであるためには、そのような外部的な判断以外に、自分自身の評価基準を持ち、内省し、その中で、ちょっとでもよくしていくことが必要だ。このレベルのプロジェクトマネジャーの能力開発を支援する方法というのはない。個人の問題だからだ。
あえてあるとすれば、レベル4と同様に、徹底的に内省的な自己開発の動機付けをすることである。
◆内省するということ
最後に、内省することの意味についてまとめておく。
マネジャーが下した決定に対して評価できるのは、マネジャーだけである。
つまり、マネジャーは、自分の下した決定によって生じた結果を踏まえて内省をしなくてはならない。
そして、内省の結果、マネジメントの方法を変えることによってのみ、そのマネジャーのマネジメントは進化する。
つまり、マネジャーの進化には内省というのは不可欠であり、レベル4以上のマネジャーの育成においてはまずこの点をしっかりと理解させて必要がある。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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