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第44回 内省の手段としてのメンタリング(2007.09.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


前回はプロジェクトマネジャーの育成には「内省」が不可欠だという話をした。

第43回 レベル4以上の育成は「内省」によってのみ達成される

では、どうやって内省をさせるかという話になる。開発プログラムとして内省を実現するには、メンタリングが適している。


◆プロジェクトマネジャーとメンタリング

プロジェクトマネジャーとメンタリングのかかわりには2つの形が考えられる。メンタリングはメンターとメンティの間で行われるが、プロジェクトマネジャーがメンティーになる場合もあれば、メンターになる場合もある。

前者はプロジェクトマネジメントメンタリングと呼ばれるもので、プロジェクトマネジャーに対して、プロジェクトマネジメントの支援のために行われることが多い。もちろん、メンタリングであるので、そのような経験を通じて、プロジェクトマネジャーを育成するのが最終的な目的である。

後者はプロジェクトメンバーに対するメンタリングである。プロジェクトマネジャーは激務であるので、メンバーに対するメンタリングで、メンターをプロジェクトマネジャーにすることは珍しく、多くは技術支援スタッフなどがメンターを担当することが多い。しかし、プロジェクトマネジャーの育成手段として考えれば、別の意味がある活動である。

プロジェクトメンバーのメンタリングをすることは、単に技術的な指導をするということに留まらず、プロジェクトに対してどのようにコミットしてほしいか、他のメンバーや、顧客とのコミュニケーションをどのように進めていけばよいかなどについても指導しなくてはならない。


◆メンターとしての活動が内省の機会になる

このような指導の方法や相手の反応を注意深く振り返ることは、自らのプロジェクトマネジメントの振り返り(内省)になる。この機会は重要な機会であり、活用しない手はない。
メンタリングのポイントは、「相互学習」にある。メンタリングは指導手段だと捉えている企業が多いが、メンティに対する指導手段であると同時に、メンター自身の学習手段でもある。つまり、メンタリングを適切に進めていくには、自身がメンターに対する働き方を謙虚に振り返る必要がある。

これはメンバーに対するメンタリングだけではなく、プロジェクトマネジャーに対するメンタリングについても同様にいえることだ。


◆あるSI企業のメンタリング制度

あるSI企業で、プロジェクトマネジメントメンタリングの制度の目的のひとつに、メンターの育成を掲げ、現役のプロジェクトマネジャーを積極的に当てる精度を構築したことがある。

この企業の制度は興味深い。まず、キャリア制度として、A、B、Cという3ランクがある。

Bランクになると、適当なタイミングで1年間、メンターに専業する。その間、だいたい、4〜5人Cクラスのプロジェクトマネジャーのメンタリングを行う。このメンタリング経験をしないと、Aクラスのプロジェクトマネジャーにはなれないような仕組みになっている。

この制度を導入後、トップ20のプロジェクトマネジャーのプロジェクト成功率(納期、予算遵守)は20%程度向上した。また、Aクラスのプロジェクトマネジャーの実施するプロジェクトの成功率はなんと50%以上向上した(ほとんど失敗がなくなった)。大変な効果だ。

この企業は、受注平均プロジェクト規模は3千万円程度という事業上の特徴があるので実現できた制度であり、プライムコントラクターとして数億規模のプロジェクトを中心にやっている企業で導入するのは難しいかもしれないが、メンタリングというのを相互学習の機会として捉え、メンターのプロジェクトマネジャーの育成手段として考えてみる価値はあるだろう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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